【ピアノ】片手のためのワルツ作品ガイド:年代順にたどる

記事内に広告が含まれています。

【ピアノ】片手のためのワルツ作品ガイド:年代順にたどる

► はじめに

 

片手のための作品の中には、ワルツという舞曲の性格を取り入れたものが数多く存在します。3拍子特有の揺れる感覚を、片手だけでどう表現するか。この課題に、作曲家たちはそれぞれの時代の書法で応えてきました。

本記事では、左手または右手のいずれか一方だけで演奏する独奏作品に加え、片手パートが含まれる連弾作品や、左手のための室内楽作品など、「片手によるワルツ」を含む作品を幅広く取り上げます。ワルツ的な性格を持つ片手作品もあわせて紹介します。選曲や学習の手がかりとしてお役立てください。

なお、記事内で示す年代は、原則として作曲年です。作曲年が確認できない場合や、出版年を基準とする場合には、その旨を明記しています。年代を範囲で示す場合は、原則として着手年を基準に並べています。

 

► 演奏形態について

 

本ガイドでは、作品名の末尾に以下の記号を付しています:

[LH]:左手のみで演奏
[RH]:右手のみで演奏
[LH/RH]:左手または右手で演奏
[LH][RH]:左手作品と右手作品が両方入っている項目など

作品を実際にどちらの手で演奏できるかではなく、作曲者・編曲者が指定した演奏形態を基準として、[LH][RH][LH/RH]を付しています。

 

► 年代順にたどる作品紹介

‣ ベルリオーズ「私のスペインの城のひとつの煙突の中で、風が歌うワルツ H 131」(1855年作曲) [RH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

エクトル・ベルリオーズ「私のスペインの城のひとつの煙突の中で、風が歌うワルツ」1-4小節

フランスの作曲家エクトル・ベルリオーズ(1803-1869)が、マリー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン公女のアルバムのために書いた右手独奏用の小品。マリーは、フランツ・リストの長年の伴侶として知られるカロリーネ・ザイン=ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人の娘で、ベルリオーズ自身もカロリーネと交流を続けていました。

フランス語の「châteaux en Espagne(スペインの城)」は「空想の産物」「絵空事」を意味する慣用句で、ユーモアを含んだタイトルとなっています。その名のとおり、半音階的な動きが全曲を支配する、目眩を覚えるような曲想が特徴です。大譜表で記譜されていますが下段は一度も用いられず、終始上段のみで書かれており、大きく2つの部分から構成されています。

演奏時間は約1分10秒、難易度はツェルニー30番中盤程度。

 

‣ ホレンダー「6つの小品 Op.31 より 第4曲 ワルツ」(1884年出版) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-6小節)

ホレンダー「6つの小品 Op.31 より 第4曲 ワルツ」1-6小節

ベルリンの音楽界で重きをなしたピアニスト・指揮者、アレクシス・ホレンダー(1840-1924)による左手独奏曲集の一曲。この曲集は、右腕を失ったパウル・ヴィトゲンシュタインが演奏可能なレパートリーを探していた際、図書館で見つけた数少ない収穫の一つとしても知られています。

第4曲は典型的なサロン風の性格を持ったワルツで、ダイナミクスの対比が随所に現れます。「テンポは1つ振り」という指示のとおり、優雅さを保ちながらも生き生きとした活力が感じられる音楽にまとめられました。

演奏時間は約2分50秒。難易度の目安はツェルニー30番修了〜40番入門程度。

 

‣ フット「左手のための小さなワルツ Op.6 より 第4番」(1885年出版) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

フット「左手のための小さなワルツ Op.6 より 第4番」1-4小節

アメリカの作曲家アーサー・フット(1853-1937)が、Op.6の4曲のうち唯一左手独奏用に書いた一曲。全曲が1段譜というシンプルな書法が用いられており、メロディがワルツの伴奏音型より低い音域に来たり、逆に高音域へ移ったりと、声部の位置が入れ替わることで表情の変化が生み出されています。

メランコリックな曲調ながら子どもにも取り組みやすく、演奏時間は約2分40秒、難易度はツェルニー30番中盤程度。

 

‣ ジチー「6つの練習曲 より 第3曲 アデルのワルツ」(1885年頃出版) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-8小節)

ジチー「6つの練習曲 より 第3曲 アデルのワルツ」1–8小節の楽譜

若年期の事故で右腕を失い、左手一つで演奏活動を切り開いたゲザ・ジチー(1849-1924)が、リストに献呈した「6つの練習曲」の第3曲にあたります。リストとの交流が深まった時期に生まれた作品で、この曲自体もリストが後年両手版に編曲したことで知られています。

演奏時間は約4分、難易度はツェルニー50番入門以降程度。

 

ジチーについてさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くジチー:片腕だけで演奏会を切り開いた伯爵

 

‣ スクリャービン「幻のワルツ」(成立年不明、1890年代頃) [LH]

 

※楽譜が発見されておらず、譜例の掲載はできません。

 

右手を痛めていた時期のアレクサンドル・スクリャービン(1872-1915)が、ヨハン・シュトラウスのワルツ主題をもとに左手のためのパラフレーズを書き上げ、友人たちの前で披露したと伝えられている一曲。1907年にはニューヨークでも演奏された記録が残っています。

エーデルが紹介するスクリャービン自身の回想によれば、この曲はもともと病気療養中に左手を鍛える目的で作られたもので、本人は「ヴィルトゥオーゾ的な仕掛けとオクターブに満ちた」作品と振り返っています。演奏会では大きな喝采を浴びたものの、その最中に客席のロシア人の知人から鋭い批判の声が飛び、それを恥じたスクリャービンはその後この曲を弾かなくなったといいます。楽譜が書き留められたかどうかさえ定かでなく、現在まで発見されていません。

Op.9の内省的な美しさとは対照的な、ヴィルトゥオーゾ的な一面を伝える逸話として興味深い存在です。

 

スクリャービンについてさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くスクリャービン:右手への執着と、左手のための名品

 

‣ ツィッターバルト「ピアノのための組曲 第9番 より 第4曲 ワルツ」(1890年代〜1900年代初め頃作曲と推定) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-6小節)

ツィッターバルト「ワルツ(ピアノのための組曲 第9番)」1-6小節

ピッツバーグ生まれのヴァイオリニスト・ヴィオラ奏者・作曲家・教育者、フィデリス・ツィッターバルト・ジュニア(1845-1915)が、全5曲からなる「ピアノのための組曲 第9番」の第4曲として、左手独奏用に書いたワルツ。

ツィッターバルトは1000曲を超える作品を残しましたが、その大半は生前に出版されませんでした。本曲も未出版のまま、手稿がピッツバーグ大学図書館に所蔵されています。

序奏に続いて3つのワルツが連なり、フィナーレで締めくくられる、ウィンナ・ワルツの組み合わせ形式を思わせる構成をとっています。3つのワルツの性格の違いはそれほど大きくありませんが、最後はanimatoとなり、活発かつ力強く曲を閉じます。

演奏時間は約3分、難易度はツェルニー30番中盤程度。

 

‣ ニーマン「コンサート・ワルツ Op.36」(1893年出版) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-5小節)

ニーマン「コンサート・ワルツ Op.36(左手のための)」1-5小節

ドイツ北部ヴェッセルブーレン生まれのピアニスト・作曲家、ルドルフ・ニーマン(1838-1898)が、モーリッツ・ローゼンタールに献呈して書いた左手独奏用のワルツ。

曲の規模こそそれなりにありますが、技巧的な負担がかかる箇所(3度の連続進行 など)は限定的で、長さの割に手が出しやすい一曲となっています。基本となるワルツ特有の「ズン・チャッ・チャ」の伴奏形を土台としつつ、随所でアルペジオが自由に広がる書法が取り入れられており、単調になりがちな3拍子の枠内に表情の変化を持たせています。

演奏時間は約4分30秒、難易度はツェルニー40番修了程度。

 

‣ ビルケダル=バルフォド「左手のための練習曲集 より 第5曲 ドイツ風ワルツ」(1895年頃出版) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ビルケダル=バルフォド「左手のための練習曲集 より 第5曲 ドイツ風ワルツ」1-4小節

デンマークの作曲家・オルガニスト、ルードヴィヒ・ビルケダル=バルフォド(1850-1937)が残した左手教育用の曲集の中の一曲。この曲集はロマン派の語法を受け継いだ落ち着いた性格の小品が並び、第5曲にワルツが置かれています。

旋律全体に運動性が感じられる優雅な雰囲気の音楽で、ABAという簡潔な形式にまとめられました。

演奏時間は約1分30秒とコンパクトで、難易度はツェルニー40番修了程度。

 

‣ クロークマン「コケット(舞踏会の一場面)〜左手のための2つのワルツ・エピソード より Op.81-2」(1910年出版) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

クロークマン「コケット(舞踏会の一場面) 〜左手のための2つのワルツ・エピソード より Op.81-2」1-4小節

「ポール・デュセル」を筆名とする作曲家、キャリー・ウィリアムズ・クロークマンによる左手独奏用の作品。組となる第1曲「L’Ingénue」とともにMrs. Minnie Little Longleyへ献呈されました。

8小節の自由な序奏を経てワルツ本編へ入る構成で、書法自体は平明ながら演奏効果の高さが持ち味です。

演奏時間は約4分、難易度はツェルニー40番中盤程度。

 

‣ グリーグ/タイヒマン編「右手または左手のための抒情小曲集 より 第1曲 ワルツ Op.12-2」(1911年頃出版) [LH/RH]

 

※編曲者(Fritz Teichmann)の生没年が判明していないため、著作権保護期間の確定が難しく、譜例の掲載を控えております。

 

生没年の詳細が伝わっていない編曲者フリッツ・タイヒマンが、グリーグの「抒情小曲集」から選んだ12曲を右手または左手いずれでも演奏できる形にまとめた曲集の巻頭を飾る一曲。原曲はOp.12の第2曲にあたります。

原曲の親しみやすい旋律線がほぼそのまま片手用に移し替えられており、グリーグ独特の民謡的な語感が損なわれずに残されています。

演奏時間は約2分、難易度はツェルニー40番中盤程度。

 

‣ ストラヴィンスキー(イーゴリ)「3つのやさしい小品 より ワルツ」(1914年作曲) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

20世紀を代表する作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)が、連弾のために書いた「3つのやさしい小品」の第2曲。

この組曲はプリモを両手、セコンドを左手だけで演奏するというユニークな編成をとっており、第2曲「Waltz」はエリック・サティに献呈されています。セコンド・パートはごく限られた音による反復音型が中心で、主要な音楽はプリモが担う構成で書かれています。

演奏時間は約1分30秒、セコンドパートの難易度はブルグミュラー25の練習曲修了程度。

 

‣ アデア(ミルドレッド)「5本の小さな指のための5つの小さな曲(左手のための) より 魅惑の庭で」(1926年出版) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ミルドレッド・アデア「5本の小さな指のための5つの小さな曲(左手のための) より 魅惑の庭で」1-4小節

アラバマ州ドーサンで四半世紀にわたって音楽を教え、教会オルガニストも務めたアメリカの作曲家・ピアニスト、ミルドレッド・アデア(1895-1943)による、子どもの学習者向けの左手小品集の一曲。1926年にフィラデルフィアのTheodore Presser社から出版されました。アデアの作品の多くは、こうしたピアノ独奏のための教育用小品です。

「With swaying motion(揺れるように)」と記された、低音部に旋律を置いたワルツ風の一曲。1拍目の低音を主に5の指が受け持って旋律を歌い、2・3拍目には和音が軽く添えられます。旋律の上には数小節にわたる非常に長いスラーがかけられており、1拍ごとに縦に刻むのではなく、長い息で旋律をつないでいくことが求められます。

演奏時間は約50秒、難易度はブルグミュラー25の練習曲修了程度。

※プレリュード記事などで紹介しているイギリスの作曲家イヴォンヌ・マドレーヌ・アデア(1897-1989)とは別人です。

 

‣ ゴドフスキー「宝石のワルツの主題による交響的変容」(1928年作曲) [LH]

 

※本楽曲自体の著作権は消滅していますが、校訂版(サパートン校訂)における編集部分の著作権が存続しているため、譜例の掲載は見送っております。

 

「左手の使徒」ことレオポルド・ゴドフスキー(1870-1938)が、J. シュトラウス2世の歌劇《ジプシー男爵》より「宝石のワルツ」を主題に据えて書いた大作です。もとはパウル・ヴィトゲンシュタインのために書かれながら結局彼が演奏することはなく、のちにサイモン・バレアへ献呈先が改められました。出版はゴドフスキーの死後、娘婿デイヴィッド・サパートンの校訂によって1941年に実現しています。

7回にわたるテンポ変化を経てワルツが次々と表情を変えていく構成で、演奏時間は約10分。難易度はツェルニー50番入門以降が目安となり、左手独奏作品の中でも規模・難易度ともに屈指の一曲と言えるでしょう。

 

ゴドフスキーについてさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くゴドフスキー:「左手の使徒」が遺した作品群

 

‣ ゴドフスキー「左手のための6つのワルツポエム」(1930年出版) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ゴドフスキー「左手のための6つのワルツポエム より 第1曲」1-4小節

同じくゴドフスキーによる全6曲からなるサロン風の小品集で、シュトラウスの主題を借りた作品とは違い、こちらは自身の楽想で書き上げられました。カール・エンゲルに献呈されています。

特に第1番と第4番は、正しい奏法で弾けばピアノがよく鳴るよう設計されており、コンパクトながら完成度の高さが光ります。

全6曲合計の演奏時間は約20分、難易度はツェルニー40番修了程度で、ゴドフスキーの左手作品としては比較的取り組みやすく、左手による旋律と伴奏の組み立てを学ぶ教材としても興味深い曲集です。

 

ゴドフスキーについてさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くゴドフスキー:「左手の使徒」が遺した作品群

 

‣ コルンゴルト「2つのヴァイオリン、チェロと左手ピアノのための組曲 Op.23 より 第2曲 ワルツ」(1930年作曲) [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-5小節)

コルンゴルト「2つのヴァイオリン、チェロと左手ピアノのための組曲 Op.23 より 第2曲 ワルツ」1-5小節

ウィーンで神童として名を馳せたエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897-1957)が、パウル・ヴィトゲンシュタインの委嘱に応えて書いた室内楽の大作、全5楽章のうちの第2楽章。

速すぎず遅すぎない柔軟なテンポが取られ、ウィーンの空気を纏いながらどこか詩的なたたずまいを持つ三部形式でまとめられています。前後を挟む「前奏曲とフーガ」「グロテスク」の激しい性格とは対照的に、落ち着いた抒情性が際立つ楽章です。

演奏時間は約5分30秒、難易度はツェルニー50番入門以降程度。

 

‣ マイヤーウィッツ「右手のための3つのピアノ曲 より 第2曲 ワルツを踊る雪片」(1941〜1944年頃出版) [RH]

 

※作曲者の生没年が不詳であり、著作権保護期間の確定が困難なため、譜例の掲載は控えております。

 

経歴の詳細がほとんど伝わっていない作曲家ハリー・マイヤーウィッツによる、右手独奏用の小品集「Three Piano Compositions for the Right Hand Alone」の第2曲。「ガヴォット」「古い中国のオルゴール」とともに全3曲を構成し、教育用のやさしい教材として紹介されている曲集です。

大譜表の扱いが独特で、声部が何度も上段と下段をまたぎ、その移り変わりがライン(線)で示されます。2・3拍目に和音を置くワルツのリズムは、断片的に現れては途切れ、曲全体としては細い線で描かれたような繊細な音楽にまとめられています。雪片が舞う情景を、片手ならではの薄いテクスチュアで描いた一曲と言えるでしょう。

難易度はツェルニー30番中盤程度。

楽譜:Three Piano Compositions for the Right Hand Alone / Harry Meyerowitz(classicalondemand.com)

 

‣ ポール「即興ワルツ Op.19-1」(1947年出版) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

パリを拠点に演奏・教育活動を行ったロシア出身の作曲家、ウラジーミル・ポール(1880-1962)が「2つの小品 Op.19」の第1曲として書いた左手独奏用のワルツ。レオン・ムラヴィエフに献呈されました。

性格の異なる複数の部分から成る演奏会用の構成で、跳躍の大きい箇所が随所に見られます。小節線をまたぐ連桁が繰り返し用いられ、3拍子の感覚があえて曖昧にされる書法が印象的ですが、終結部では明快な3拍子へ戻り、軽やかに幕を閉じます。

演奏時間は約3分30秒、難易度はツェルニー40番修了程度。

 

‣ サンカン「左手のためのロマンティックなカプリス」(1949年作曲) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

パリ音楽院でミシェル・ベロフらを育てたピエール・サンカン(1916-2008)による作品。タイトルこそ「カプリス」ですが、3拍子の気だるい雰囲気で開始する曲調は大きなワルツを思わせる性格を帯びています。マダム・ヴォスコチャキに献呈されました。

機能和声から離れた現代的な語法を持ちながらも耳なじみのよい書法でまとめられており、黒鍵グリッサンドの使用も特徴の一つと言えるでしょう。各部分でテンポと性格の対比が意識されています。

演奏時間は約5分、難易度はツェルニー40番修了程度。

 

‣ ペチュレク「2つの舞曲」(1955年出版) [LH][RH]

 

第1番(右手独奏のための) 譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-6小節)

ペチュレク「2つの舞曲 より 第1番(右手独奏のための)」1-6小節

第2番(左手独奏のための) 譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-5小節)

ペチュレク「2つの舞曲 より 第2番(左手独奏のための)」1-5小節

オーストリア(チェコスロバキア)出身のフェリックス・ペチュレク(1892-1951)が、右手独奏用と左手独奏用にそれぞれ1曲ずつ書いた舞曲集。両曲ともワルツの性格を色濃く持ち、跳躍を多く含む運動性の高い音型と半音階的な和声が共通の特徴として現れます。

第1番は半音階的なマイナー・クリシェの響きで開始し、演奏時間・難易度ともに第2番よりやや軽めです。第2番はどこか諧謔的な表情を帯びながらH-durの中に独特のひねりが加えられています。

演奏時間はそれぞれ約1分、難易度はツェルニー30番中盤〜40番入門程度。

収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか

 

‣ ロヴェル「サーカス〜左手のための6つの小品 より 第4曲 象のワルツ」(1957年出版) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

経歴の詳細があまり伝わっていないイギリスの作曲家ジョーン・イザベル・ロヴェルが作曲した左手独奏用の教育的小品集「The Circus: Six Pieces for the Left Hand Alone」の中に書いた一曲。サーカスにまつわる情景を描いた性格の異なる6曲から成る曲集です。

他の5曲には練習曲的な性格が感じられるのに対し、第4曲「The Elephant’s Waltz」は趣が異なり、性格小品を思わせる穏やかなバラード風のワルツとしてまとめられています。曲集全体が中〜低音域を中心に書かれているため、左手演奏を始めたばかりの学習者にも身体的な負担が少なく、初級〜初中級の教材として扱いやすい一曲と言えるでしょう。

演奏時間は約1分、難易度はブルグミュラー25の練習曲修了程度。

 

‣ コル・デ・フロート「左手と管弦楽のための幻想変奏曲 より 第4楽章 クワジ・ワルツァー」(1960〜1962年作曲) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

1959年に右手の自由を失ったオランダのピアニスト・作曲家、コル・デ・フロート(1914-1993)が、自ら作曲した全7楽章の協奏的作品の第4楽章。「Quasi Walzer(ワルツ風に)」という楽章名のとおり、ワルツの性格を取り入れた楽章です。

作品全体は、序奏・夜想曲・スケルツォ/クワジ・ワルツァー・バーレスク/喚起・フィナーレという3つのグループに分かれ、各グループの内部はアタッカで続けて演奏されます。この楽章は、続くバーレスクと組になった中央のグループの前半にあたります。活気にあふれた大規模な作品ながら、独奏ピアノの書法自体は比較的簡潔にまとめられており、この点はブリテン「ディヴァージョンズ」とも通じるところがあります。ヨハン・ワーヘナール財団に献呈されました。

演奏時間は作品全体で約22分、難易度はツェルニー50番入門以降程度。

 

コル・デ・フロートについて詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くコル・デ・フロート:オランダ左手ピアノ音楽の一章

 

‣ トンプソン「For Left Hand Alone Book Two より 第5曲 半音階的ワルツ」(1962年出版) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

ピアノ教育者として知られるジョン・トンプソンが、左手独奏教材集の中に置いた一曲。序文や関連する専門文献からは、トンプソンが片手演奏を単なる余興ではなく、ピアノ学習の正式な一環として位置づけていたことがうかがえます。1曲あたり1〜2ページとどれも短く、冒頭には簡潔な楽曲解説が添えられているほか、運指とペダリングも丁寧に書き込まれており、独習にも指導にも扱いやすい構成です。

第5曲は下行半音階を中心としたシンプルなワルツで、メロディが親指側に来る箇所と小指側に来る箇所とが入れ替わりながら進みます。

演奏時間は約2分30秒、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度と、教育的な配慮が行き届いた一曲と言えるでしょう。

 

この教材についてさらに詳しく知る

【ピアノ】ジョン・トンプソン「FOR LEFT HAND ALONE」シリーズ 完全ガイド

 

‣ ガロウ「左手のためのワルツタイム」(1973年作曲) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

アメリカの作曲家・ピアノ教師ルイーズ・ガロウによる、教則シリーズ「David Carr Glover Program Solo Series」に収められた左手独奏用の小品。

デイヴィッド・カー・グローヴァーとともに長年初級ピアノ教材の制作にあたってきたガロウらしく、運指とペダリングのほか、どの声部を浮き立たせるかという指示まで細かく書き込まれており、初めて片手作品に触れる人にとっても手に取りやすい楽譜にまとめられています。手の大きさを問わず挑戦しやすい音遣いになっている点も特徴です。

演奏時間は約1分、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度。

現在は、単曲でデジタル購入できます(Waltz Time Sheet Music (English Edition))。

 

‣ ストラヴィンスキー(スーリマ)「右手のためのピアノ組曲 より 第3曲 ワルツ」(1975年作曲) [RH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

イーゴリ・ストラヴィンスキーの息子であるスーリマ・ストラヴィンスキー(1910-1994)が、C.F.Peters社の創業者ウォルター・ヒンリクセンの追悼に捧げた右手独奏用組曲の第3曲。曲頭には演奏されない「シンボル」として12音音列が記されており、この音列による技法を用いながら舞曲様式で各曲の性格づけがされています。

全曲を通じてほぼ一段譜、同時に鳴る音も2音までに抑えられた薄い書法が特徴で、「espressivo」「dolce」といった歌謡的な標語が随所に見られます。

演奏時間は約1分、難易度はツェルニー40番中盤程度。

 

‣ ハイド「左手のための演奏会用ワルツ」(1977年作曲) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

オーストラリアを代表するピアニスト・作曲家ミリアム・ハイド(1913-2005)が、自動車事故で右手を負傷した教え子のために書いた左手作品。1977年8月、テレビでクリケットの試合中継を見ながら昼休みの間に書き上げられたという逸話が残されています。

Allegro con brioの快活なテンポでありながら、どこか諧謔的なユーモアが漂う曲調が魅力です。「or, for small hands:」という代替パターンが用意されている箇所もあり、手の大きさへの配慮も見られます。

演奏時間は約1分40秒、難易度はツェルニー30番修了〜40番入門程度。

 

‣ コル・デ・フロート「アイリッシュ・ワルツ」(1980年作曲) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

オランダのピアニスト・作曲家コル・デ・フロート(1914-1993)が、同じ頃に右手の障がいを経験したピアニスト、ヤン・ウェインに献呈した左手独奏用のワルツ。1980年9月に書かれ、自筆譜からそのまま複製する形で1983年に出版されました。

長調で書かれていながら、どこか哀愁を帯びた美しさを持つ一曲です。薄めのテクスチュアで、主に鍵盤の中高音域が用いられています。両手版や、2台のアイリッシュ・ハープのための版も存在します。

演奏時間は約2分、難易度はツェルニー30番修了〜40番入門程度。

楽譜は、Irish waltz : piano (alleen linkerhand), 1980 / Cor de Groot で購入可能です。

 

‣ タナー「シャドウ・ワルツ(左手のための)」(1982年出版) [LH]

 

※作曲者の生没年が不詳であり、著作権保護期間の確定が困難なため、譜例の掲載は控えております。

 

生没年を含め経歴がほとんど伝わっていない作曲家、ヒルダ・ハルバート・タナーによる左手独奏用の小品。Myklas社の教育用ピース・シリーズ「The Myklas Solo Series」の一曲として出版され、現在はAlfred Musicから入手できます。Kathryn Hulbert Hallに献呈されました。

C-durで始まり、跳躍や臨時記号を織り込みながらさまざまな和声を経て、最後にC-durの主和音へ帰ってくる構成をとっています。8分音符と4分音符を中心とした流れるようなパッセージが広がり、左手一つでありながら両手で弾いているかのような豊かさを感じさせます。

演奏時間は約1分、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度。

楽譜は、Shadow Waltz (for left hand alone)(Alfred Music)で購入可能です。

 

‣ ロシェロール「別々の手で より 右手のためのワルツ」(1989年頃出版) [RH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

ニューオーリンズ・ジャズの空気を吸って育ったアメリカの作曲家、ウジェニー・ロシェロール(1936-2025)が、右手2曲・左手2曲から成る小品集の冒頭に置いた作品。

タイトルこそワルツですが、中間部では4/4拍子に転じ、アルペジオ伴奏に乗ったシンプルな旋律が歌われます。後半で再びワルツのリズムへ戻って曲を締めくくる構成です。

演奏時間は約2分30秒、難易度はツェルニー30番中盤程度。

 

楽譜は、ミュッセで購入可能です。

 

‣ ノーナ夫妻「左手のためのワルツ」(1989年出版) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

子供向けピアノ教則本「Musik wird lebendig(音楽が生き生きと)」シリーズの著者、ウォルター・ノーナとキャロル・ノーナ夫妻による左手独奏用の小品。本曲が収められた「Ricos Konzert 2」も同シリーズの一冊にあたり、曲集内で既存作曲家の作品には作曲者名が明記されているのに対し、本曲にはその記載がなく、教材の著者であるノーナ夫妻自身によるオリジナル作品と考えられます。

曲名の下には「Fröhlich(陽気に、楽しく)」という発想標語が添えられ、低音部に常に旋律が置かれ、その上でワルツのリズムが刻まれる構成になっています。

演奏時間は約40秒、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度。

 

‣ ウェルマン「左手のための8つのワルツ(あるいは、どうしてもとおっしゃるなら右手のための) Op.75」(1992年作曲) [LH/RH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

インディアナ州アンダーソン生まれのアメリカの作曲家・ピアニスト、サミュエル・ウェルマン(1951- )による全8曲のワルツ集。

「あるいは、どうしてもとおっしゃるなら右手のための」というユーモラスな副題が示すとおり、本来は左手のために書かれながら、右手でも演奏できるよう配慮された曲集です。

全曲を通じて比較的シンプルな書法でまとめられており、聴かせたい声部がはっきりと浮かび上がってくるのが特徴です。音数が絞られているぶん、スタッカートやスラーといったアーティキュレーションの一つひとつが音楽の表情を左右し、演奏者の解釈が問われる作品集と言えるでしょう。

全8曲合計の演奏時間は約8分、難易度はツェルニー40番中盤程度。

楽譜は、EIGHT WALTZES FOR LEFT HAND (or for right hand, if you insist) OPUS 75(American Composers Alliance)で購入可能です。

 

‣ ラヴェル/ソーザ編「ラ・ヴァルス」(1993年編曲) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

右手の負傷を機に左手独奏の道へ進んだラウル・ソーザ(1939-)が、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」を左手一つのために編曲した野心的な作品。ラヴェル自身による両手版でさえ演奏至難とされる曲を、さらに片手へ移し替えています。

低音のうねり、高音のきらめき、そして曲の後半でワルツが加速していく運動感を左手だけで再現することが目指されており、技術的要求はきわめて高い水準にあります。

全32ページに及ぶ大曲で、演奏時間は約16分。難易度はツェルニー50番入門以降程度。ソーザ自身の録音も残されています。

 

ソーザについてさらに詳しく知る

・【ピアノ】左手作品から読み解くラウル・ソーザ:右手の負傷が開いた、もう一つのキャリア
・【ピアノ】ラウル・ソーザ「An Anthology for the Left Hand」レビュー

 

‣ グリル「Left Alone—Right On! より 第1曲 ワンウェイ・ワルツ」(1995年頃出版) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

アメリカの作曲家・ピアノ教育者、ジョイス・グリルによる片手奏の入門曲集「Left Alone—Right On!」の巻頭を飾る左手独奏用のワルツ。この曲集は左手用・右手用の小品が1冊に混在する構成で、ケガなどで一時的に片手での演奏が必要になった学習者にも使えるよう編まれています。

Moderatelyの指示による、C-durの明るいワルツ。旋律が最上声に置かれる場面と最下声に置かれる場面とが交互に現れるのが特徴です。

全体としてはシンプルな書法ながら、後半では臨時記号を伴う和声がやや冒険的な色合いを加えます。替え指の指定が見られるなど、初級の段階から運指上の工夫に触れられる点も、教材としての魅力と言えるでしょう。

演奏時間は約1分、難易度はブルグミュラー25の練習曲入門程度。

 

この曲集についてさらに詳しく知る

【ピアノ】Joyce Grill「Left Alone—Right On!」「More Left Alone—Right On!」シリーズ 完全ガイド

 

‣ ルバー「左手のためのワルツ」(1997年出版) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

ニューヨーク・マンハッタン生まれのアメリカのピアニスト・作曲家・音楽教師、エレイン・ルバーによる左手独奏用の小品。本曲はThe Willis Music Companyの「Willis Series」の一曲として出版されています。

静かな曲調を中心としたメランコリックなワルツで、半音階的な和声が随所に用いられています。ワルツのリズムに乗って進む部分と、単音の線で動く部分とが交互に現れることで、短い曲の中に表情の変化が生まれています。

演奏時間は約2分30秒、難易度はブルグミュラー25の練習曲修了程度。

楽譜:Willis Music Waltz for Left Hand, Willis Series, by Elaine Lebar(musicarts.com)

 

‣ ウェルズ「さすらう雲(左手のための)」(1999年出版) [LH]

 

※作曲者の生没年が不詳であり、著作権保護期間の確定が困難なため、譜例の掲載は控えております。

 

ミシシッピ州出身のピアニスト・作曲家・教育者、ジュディ・イースト・ウェルズによる左手独奏用の小品。

タイトルに「ワルツ」の語はありませんが、全曲が3/4拍子のワルツのリズムに乗って進むことから、ワルツ的な性格を持つ一曲として取り上げます。

のんびりと漂う雲を思わせる曲名に反して、テンポはAllegro moderato(♩=126)と軽快に設定されています。曲名とテンポの間にあるこの距離をどう音楽にするかは演奏者に委ねられる部分が大きく、短いながら解釈の工夫しがいのある一曲と言えるでしょう。

演奏時間は約1分、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度。

 

楽譜は、Vagabond Clouds (for left hand alone)(Alfred Music)で購入可能です。

 

‣ ゲイブル「平和のための5つの言葉 より 第3曲 フリーデン」(成立年不明) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

ノースダコタ大学で音楽理論やロック史を教えるアメリカの作曲家・著述家・音楽教育者、クリストファー・ゲイブルによる左手独奏用の曲集「Five Words for Peace」の第3曲。全5曲には、それぞれ異なる言語で「平和」を意味する言葉が題名として付けられており、第3曲の「Frieden」はドイツ語にあたります。

CD解説書に寄せた作曲者自身の説明によれば、この曲はドイツ・オーストリアのワルツを、平和な時代に人々が集い、ともに過ごす営みとしてとらえたものとのこと。曲集の中でワルツを題材としているのは、この1曲だけです。

ミクソリディア旋法の音階が印象的な、浮遊感のある音楽で、ワルツの伴奏型は最後まで変わらずに続きます。そのうえで旋律が、音域、単音・和音・オクターヴといった音の形、ダイナミクスを変えていくことで、変化が生み出されています。

演奏時間は約3分10秒。

 

音源:CD《Unbound: American Piano Music for the Left Hand》(Nariaki Sugiura, piano/Centaur Records)に、曲集全曲が収録されています。

このCDのレビュー

【ピアノ】ナリアキ・スギウラ「Unbound: American Piano Music for the Left Hand」レビュー

 

► 作品一覧表

 

作曲家 作品 演奏形態 成立年 演奏時間 難易度目安
ベルリオーズ 私のスペインの城のひとつの煙突の中で、風が歌うワルツ H 131 RH 1855年作曲 約1分10秒 ツェルニー30番中盤
ホレンダー Op.31 より 第4曲 ワルツ LH 1884年出版 約2分50秒 ツェルニー30番修了〜40番入門
フット Op.6 より 第4番 LH 1885年出版 約2分40秒 ツェルニー30番中盤
ジチー 6つの練習曲 より アデルのワルツ LH 1885年頃出版 約4分 ツェルニー50番入門以降
スクリャービン 幻のワルツ(シュトラウスの主題による) LH 成立年不明(1890年代頃) 不明(楽譜未発見) –
ツィッターバルト ピアノのための組曲 第9番 より 第4曲 ワルツ LH 1890年代〜1900年代初め頃作曲 約3分 ツェルニー30番中盤
ニーマン Op.36 コンサート・ワルツ LH 1893年出版 約4分30秒 ツェルニー40番修了
ビルケダル=バルフォド 練習曲集 より ドイツ風ワルツ LH 1895年頃出版 約1分30秒 ツェルニー40番修了
クロークマン Op.81-2 コケット LH 1910年出版 約4分 ツェルニー40番中盤
グリーグ/タイヒマン編 抒情小曲集 より ワルツ Op.12-2 LH/RH 1911年頃出版 約2分 ツェルニー40番中盤
ストラヴィンスキー(イーゴリ) 3つのやさしい小品 より ワルツ LH 1914年作曲 約1分30秒 連弾(セコンド:左手のみ
ブルグミュラー25の練習曲修了)
アデア(ミルドレッド) 5つの小さな曲(左手のための) より 魅惑の庭で LH 1926年出版 約50秒 ブルグミュラー25の練習曲修了
ゴドフスキー 宝石のワルツの主題による交響的変容 LH 1928年作曲 約10分 ツェルニー50番入門以降
ゴドフスキー 6つのワルツポエム LH 1930年出版 約20分(全曲) ツェルニー40番修了
コルンゴルト Op.23 より 第2曲 ワルツ LH 1930年作曲 約5分30秒 ツェルニー50番入門以降
マイヤーウィッツ 右手のための3つのピアノ曲 より ワルツを踊る雪片 RH 1941〜1944年頃出版 – ツェルニー30番中盤
ポール 即興ワルツ Op.19-1 LH 1947年出版 約3分30秒 ツェルニー40番修了
サンカン ロマンティックなカプリス LH 1949年作曲 約5分 ツェルニー40番修了
ペチュレク 2つの舞曲 LH・RH 1955年出版 各約1分 ツェルニー30番中盤〜40番入門
ロヴェル サーカス より 第4曲 象のワルツ LH 1957年出版 約1分 ブルグミュラー25の練習曲修了
コル・デ・フロート 幻想変奏曲 より 第4楽章 クワジ・ワルツァー LH 1960〜1962年作曲 約22分(全曲) ツェルニー50番入門以降
トンプソン Book Two より 第5曲 半音階的ワルツ LH 1962年出版 約2分30秒 ブルグミュラー25の練習曲中盤
ガロウ 左手のためのワルツタイム LH 1973年作曲 約1分 ブルグミュラー25の練習曲中盤
ストラヴィンスキー(スーリマ) 右手のための組曲 より 第3曲 ワルツ RH 1975年作曲 約1分 ツェルニー40番中盤
ハイド 左手のための演奏会用ワルツ LH 1977年作曲 約1分40秒 ツェルニー30番修了〜40番入門
コル・デ・フロート アイリッシュ・ワルツ LH 1980年作曲 約2分 ツェルニー30番修了〜40番入門
タナー シャドウ・ワルツ(左手のための) LH 1982年出版 約1分 ブルグミュラー25の練習曲中盤
ロシェロール 別々の手で より 右手のためのワルツ RH 1989年頃出版 約2分30秒 ツェルニー30番中盤
ノーナ夫妻 左手のためのワルツ LH 1989年出版 約40秒 ブルグミュラー25の練習曲中盤
ウェルマン 左手のための8つのワルツ Op.75 LH/RH 1992年作曲 約8分(全曲) ツェルニー40番中盤
ラヴェル/ソーザ編 ラ・ヴァルス LH 1993年編曲 約16分 ツェルニー50番入門以降
グリル Left Alone—Right On! より ワンウェイ・ワルツ LH 1995年頃出版 約1分 ブルグミュラー25の練習曲入門
ルバー 左手のためのワルツ LH 1997年出版 約2分30秒 ブルグミュラー25の練習曲修了
ウェルズ さすらう雲(左手のための) LH 1999年出版 約1分 ブルグミュラー25の練習曲中盤
ゲイブル 平和のための5つの言葉 より 第3曲 フリーデン LH 成立年不明 約3分10秒 –

※難易度表記はあくまで目安です。片手演奏への慣れや手の大きさなどによって実際の難しさは変わります。

 

► どの作品に取り組むか

 

これから片手のワルツ作品に触れてみたい方は、まずは比較的コンパクトで取り組みやすい作品から始めるといいでしょう。左手で演奏するなら、グリル、ウェルズ、トンプソン、ガロウ、タナー、ノーナ夫妻、ルバーあたりは、いずれも短く技術的な負担も抑えられています。教育的な配慮が行き届いており、片手作品そのものに初めて触れる方の入り口としても適しています。

もう少し本格的な左手作品に挑戦したい場合は、ハイドやホレンダーが候補になるでしょう。難易度は上がりますが、片手ならではの書法を学ぶことができます。

右手で片手作品を弾いてみたい方には、ペチュレクやロシェロール、マイヤーウィッツ、ベルリオーズがあります。いずれも比較的コンパクトで、難易度からしても取り組みのハードルは高くありません。

さらに高度な演奏会用作品を目指すなら、ゴドフスキー、コルンゴルトなどが挙げられます。特にゴドフスキーは、ワルツの音楽性を左手一つでどこまで引き出せるのかを考えるうえで、非常に興味深い作品です。

「ワルツを弾く」という目的だけでなく、片手作品の書法そのものに興味があるなら、年代順にいくつかの作品を聴き比べてみるのもいいでしょう。同じ3拍子の舞曲でも、サロン風の小品、演奏会用作品、室内楽などと、作曲家によってその発想は大きく異なります。

 

► 終わりに

 

片手だけでワルツの揺らぎを描き出すという試みは、19世紀半ばのベルリオーズによるアルバム小品から、19世紀末のサロン風の小品、20世紀以降の教育作品、室内楽作品、そして大規模な編曲作品まで、実にさまざまな形で受け継がれてきました。親しみやすい小品と、ゴドフスキーやコルンゴルト、ソーザのような技巧を凝らした大作を聴き比べてみると、同じ「ワルツ」という舞曲でも、片手一つでの表現の幅がいかに広いかが実感できるはずです。

中にはスクリャービンの「幻のワルツ」のように、楽譜が発見されないまま逸話としてのみ語り継がれている作品もあり、片手ワルツの歴史の奥行きを感じさせてくれます。気になった作品から実際の音を確かめてみてください。

当サイトでは、作曲家・作品ごとに片手作品を整理した「左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別」を公開しています。ワルツ以外の作品についても知りたい場合は、あわせてご覧いただければと思います。

 

併読推奨記事

本Webメディアの全記事への入り口となる総合ガイドです。入門・基礎知識、作品ライブラリー、楽曲別ガイド、技術・知識、作曲家シリーズ、参考文献・資料・レビューまで、目的別に記事をまとめています。

左手ピアノ総合ガイド:すべての記事への入り口

 


 

► 関連コンテンツ

YouTubeチャンネル
・Piano Poetry
チャンネルはこちら

SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら

 

この記事を書いた人
タカノユウヤ

左手・片手のためのピアノ音楽を専門とし、作曲・編曲、講演などを行っています。また、当サイト「One-Hand Piano Institute」を運営し、作品・作曲家・音楽史・技術(作曲・編曲・演奏)・楽譜・文献まで、片手で演奏するピアノ音楽を多角的に紹介しています。

日本音楽コンクールをはじめ、国内外の作曲コンクールで受賞歴を持ち、これらの受賞作品はいずれも、左手ピアノを編成に含むアンサンブル作品、および、左手のためのピアノ独奏作品です。
また、大学院では左手のためのピアノ音楽における作曲・編曲をテーマに研究し、首席で修了しています。

右手の負傷をきっかけに出会った左手のためのピアノ音楽に心惹かれ、以来15年以上、この分野に取り組んできました。左手音楽の魅力と可能性を、より多くの方に知っていただけたら嬉しく思います。

タカノユウヤをフォローする
‣ レパートリーガイド
シェアする

コメント

タイトルとURLをコピーしました