【ピアノ】アメイジング・グレイス〜左手独奏のための〜:無料楽譜と演奏解説
► はじめに
本記事では、世界の名曲「アメイジング・グレイス(Amazing Grace)」を、左手のみで演奏できるようにアレンジした楽譜(難易度:ツェルニー40番中盤程度)を無料提供します。
筆者自身による編曲で、演奏解説も用意しました。ピアノ編曲に挑戦したい方の参考資料としても、左手だけでこの楽曲を弾いてみたい方のレパートリーとしてもご活用いただけます。
左手だけで十分な響きが得られるよう、声部や音域を考えて編曲しています。
楽曲情報
・旋律:Traditional(作者不詳)
・編曲:タカノユウヤ
・難易度:ツェルニー40番中盤程度
・演奏時間:約3分
・調性:F-dur(途中As-durに転調)
・原旋律:パブリックドメイン
►「アメイジング・グレイス」について
讃美歌の枠を越え、ジャンルを問わず歌い継がれ、演奏され続けてきた一曲です。
成り立ち
歌詞を書いたのは、イギリスの牧師ジョン・ニュートン。若い頃には奴隷貿易に関わる航海にも従事していました。1748年の航海中に激しい嵐を経験したことは、後の彼の信仰を考えるうえで重要な出来事として知られています。その後、牧師となったニュートンは、1772年にこの歌詞を書いたとされています。
一方、旋律の作者は分かっていません。アメリカで歌われていた「ニュー・ブリテン」という旋律が、1835年刊行の歌集でニュートンの詞と組み合わされ、今日知られる形になりました。つまり、詞と旋律は別々に生まれ、半世紀以上を経て出会ったことになります。
左手独奏との相性
旋律は3拍子で、ヨナ抜き音階(ペンタトニック・スケール)の5音だけでできています。音域もちょうど1オクターヴに収まるため、片手で旋律と伴奏を同時に受け持つ編曲に向いた素材です。
また、長く伸ばす音が多いことも特徴です。その「間」に伴奏や対旋律を差し込めるので、左手のみでも響きが薄くなりにくく、本編曲でもこの性質を活かしています。
► 楽譜と参考音源
‣ 楽譜
以下、編曲楽譜を提供します。
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、楽曲全体)

PDF版ダウンロード
より鮮明な楽譜が必要な方は、こちらからPDFファイルをダウンロードできます。
‣ 音源
► この編曲の活用例
発表会・演奏会:左手独奏によるレパートリーとして
編曲学習の教材:左手編曲の参考資料として
季節などの演奏曲:礼拝・追悼の場やクリスマスシーズンなどの演奏曲として
BGM:落ち着いた雰囲気の鑑賞用音楽として
この編曲の利用について
原旋律はパブリックドメインであり、本編曲についても編曲者が自由な演奏利用を認めています。そのため、発表会や演奏会、動画投稿などで演奏する際に、著作権使用料の支払いや事前の許諾申請は必要ありません。
演奏の際は、編曲者名(タカノユウヤ)をクレジットとして記載していただきますようお願いします。
なお、楽譜データそのものの再配布・販売はご遠慮ください。
► 演奏ポイント
‣ 練習番号 A-B
テンポ設定
テンポは♩=70と記しましたが、あくまで目安として考えてみてください。曲想的に、もっとゆっくり演奏するのも一案です。
「無伴奏(ソロ)」の表現
1-8小節目は、「無伴奏(ソロ)」のイメージで演奏しましょう。ピアノ「ソロ」の中で、ソロの雰囲気やアンサンブルの雰囲気などを出せるのが、ピアノという楽器の特徴です。
「ソロの雰囲気」を演出する場合、ペダリングに注意する必要があります。ダンパーペダルによりフレーズが「和音化」してしまうと、ソロの雰囲気が薄れてしまいかねません。ダンパーペダルは、「響きをつける意図」で各音符ごとに踏みかえていくといいでしょう。
薄い伴奏を伴う箇所の表現
9小節目からは「薄い伴奏」が加わります。まだ動きの少ない伴奏なので、長く伸びる音を打鍵後も聴き続けながら丁寧に音をつなげてみてください。こういったシンプルな箇所では、各声部同士のバランスが目立ちます。トップノートに置かれたメロディが浮かび上がるようにバランスを作ってみましょう。
転調の活かし方
「B」のアウフタクトからは「F-dur→As-dur」に転調しますが、このような転調を活かすためには、「時間」を上手く扱うことが重要です。休符のとり方は、直後の表現に大きな影響を与えるので、16小節2拍目の4分休符を「やや長め」にとり、3拍目を丁寧に弾き始めると、転調の効果が活きます。
2本の線で進行する箇所の表現
17-23小節は、2本の線で進行します。「主旋律」に対して「非和声音を伴いながら8分音符単位で動いていくもう一本の線」を控えめに、バランスよく聴かせましょう。
また、楽譜に書き込まれたペダリングをよく確認し、ペダルを離している箇所は指でつなげてみてください。
「3声」になる箇所の表現
24小節目からは「3声」になります。
31小節目は、メロディのAs音の響きを聴き続けましょう。その響きよりも3度音程の動きが目立ってしまわないように、3度音程の動きは極めて静かに始めます。このように、伸ばしている音の響きの中で別の声部が剥がれ落ちるように動き出す書法は「ピールオフ」と呼ばれます。
詳細:【ピアノ】ピールオフとは:基礎分析と演奏のポイント(姉妹サイトへリンク)
‣ 練習番号 C-D+Ending
「分散和音中心」の伴奏
33小節目からは伴奏形が分散和音中心になります。ここまでと同じ8分音符主体の動きですが、求められる表現は異なります。バスの響きを深めに出し、他の伴奏はバスの響きの中へ入っていくように柔らかく発音しましょう。
テヌートがついている音符の表現
47小節目からは、何度も出てくるテヌートがついている音符をよく聴いて演奏してみてください。アメイジング・グレイスの旋律に由来する同音連打混じりの特徴を、伴奏にも使用しています。
なお、49小節目以降に出てくる小音符(3箇所)は、演奏が困難に感じる場合は省略しても構いません。楽譜通りに弾く場合は、アルペッジョを極めて素早く入れるようにし、そこだけ時間が広がりすぎないように注意しましょう。
クライマックスの表現
49小節目からは、この編曲のクライマックスです。ここの表現を活かすためにも、それ以外が強くなりすぎないように注意しましょう。音楽の表現は相対的なものであり、ある箇所を強調するためには、それ以外の箇所の表現に気をつける必要があります。
また、49小節目からの深い低音は決して上から叩かず、他の音を包み込むような深い音で弾くことをイメージしてみてください。
曲尾の弾き方
最終小節のアルペッジョの弾き方は自由です。参考までに、音源では「♩ ♬♬♩」のようなリズムで演奏しています。アルペッジョの中でもrit.をかけると、自然に曲を閉じることができます。
► 終わりに
左手だけで「アメイジング・グレイス」を演奏することで、普段とは異なるピアノの響きや、片手編曲ならではの音の配置を楽しんでいただければ幸いです。
【ピアノ】左手編曲のテクニック 完全ガイド では、この編曲も教材として取り上げています。左手編曲に興味のある方はあわせてご覧ください。
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