【ピアノ】左手のみで演奏する2つのウェディングソング:婚礼の合唱&祝婚歌
► はじめに
結婚式や記念のイベントで、左手だけで奏でる特別な一曲を探している方に向けて、今回は2作品を紹介します。どちらも「結婚」をテーマにした左手のための作品で、片方は多くの人が一度は耳にしたことのある名旋律の左手編曲、もう片方は、左手のために書かれたオリジナル作品です。
成り立ちや聴きどころもあわせてまとめたので、選曲の参考にしてみてください。
► 左手のみで演奏する2つのウェディングソング
‣ 1曲目:BRIDAL SONG from LOHENGRIN
· 作品について
ワーグナーの歌劇《ローエングリン》第3幕でおなじみの「婚礼の合唱(Bridal Chorus)」を、サルトーリオ(Arnoldo Sartorio, 1853-1936)が左手のみで演奏できるよう編曲した一曲です。
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

邦題:歌劇《ローエングリン》より 婚礼の合唱(左手編曲版)
編曲年:1921年頃(収録曲集の出版年より)
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)
おすすめの用途:結婚式・披露宴・記念日の演奏・演奏会の導入
曲の性格:親しみやすい/コンパクト
向いている演奏者:左手作品を初めて聴く人にも楽しんでもらいたい方
この編曲は、フィラデルフィアのセオドア・プレッサー社より刊行された左手作品アンソロジー「Left Hand Proficiency」に収められている一曲です。曲集自体は全20曲からなり、有名作曲家の名旋律を左手用にした編曲と、サルトーリオ自身によるオリジナル小品とで構成されています。本作はそのうちの編曲パートに含まれており、運指とペダリングの指示も細かく記された、実際の演奏時にも参考にしやすい楽譜となっています。
過度な装飾を加えず、原曲の旋律を大切にしたシンプルな伴奏付けであるため、原曲を知る方であれば聴いてすぐに気づける親しみやすさがあるでしょう。
楽譜の入手方法
・海外通販で入手可能
ちなみに、サルトーリオによる別のアンソロジー「Klavier-Album für die linke Hand allein」には、異なるバージョンの「婚礼の合唱」が収録されており、音域が下げられているなど多少の違いがあります。「Left Hand Proficiency」に収められている編曲のほうが美しく響くのでおすすめです。
· 編曲家紹介:アルノルド・サルトーリオ
サルトーリオ(Arnoldo Sartorio, 1853-1936)は、ドイツの作曲家・ピアノ教育者です。現在では、一般の音楽史で広く知られた作曲家とは言えませんが、左手のためのピアノ音楽という観点から見ると、複数の作品集を残した重要な人物の一人に数えられます。その代表的な曲集の一つが、1921年に出版された「Left Hand Proficiency」です。
‣ 2曲目:4 Klavierstücke Op.65, No.3「Hochzeitsang」
· 作品について
1947年にウィーンの出版社Doblingerから刊行した、ボルトキエヴィチ作曲「4つのピアノ曲 Op.65」の第3曲です。全4曲のうち、左手だけのために書かれているのはこの第3曲のみで、ピアニストのルドルフ・ホルンに献呈されています。
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:4つのピアノ曲 第3番 祝婚歌 Op.65-3
出版年:1947年
演奏時間:約4分20秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ルドルフ・ホルン
おすすめの用途:結婚式・記念日のメイン演奏・演奏会
曲の性格:抒情的/温かい/ロマンティック
向いている演奏者:結婚をテーマにした本格的な左手作品を演奏したい方
「Hochzeitsang(婚礼の歌)」や「Epithalame(祝婚歌)」というタイトルが示す通り、結婚をテーマにした作品と考えていいでしょう。
曲全体にはペンタトニックを思わせる響きも取り入れられており、どこか懐かしさを感じさせる旋律が印象的です。左手だけで演奏される作品でありながら、歌うような旋律と豊かな和声によって、人生の門出を祝福するような温かみを持っています。
楽譜の入手方法
楽譜は出版社Doblingerから刊行されている「4 Klavierstücke Op.65」の全曲版に収録されており、Crescendo alleといった通販サイトのほか、ヤマハ銀座店でも取り扱いを確認できました。
· 作曲家紹介:セルゲイ・ボルトキエヴィチ
ボルトキエヴィチ(Sergei Bortkiewicz, 1877-1952)は、現在のウクライナにあたるハリコフ出身の作曲家・ピアニストです。ショパンやリストを思わせるピアノ書法と、ロシア音楽に通じる抒情性を特徴とし、20世紀の前衛的な潮流とは距離を置きながら、独自のロマンティックな作風を貫きました。
左手のための作品も複数残しており、「左手のためのピアノ協奏曲 第2番 Op.28」は、ヴィトゲンシュタインに献呈された作品として知られています。
► この2曲の活用例
今回紹介した2曲は、どちらも結婚のお祝いにふさわしい温かな雰囲気を持ちながら、性格の異なる作品です。
もちろん、通常の演奏会でも使えるレパートリーとなります。サルトーリオ編の「婚礼の合唱」は多くの人が一度は耳にしたことのある旋律であるぶん親しみやすく、プログラムのメイン曲の前に置くと会場の雰囲気を和ませてくれるでしょう。
一方のボルトキエヴィチ「祝婚歌」は、4分ほどの演奏時間があり、作品単体でも十分な聴きごたえがあります。結婚式や記念イベントのメイン・プログラムに据えるのはもちろん、演奏会ではアンコール候補としても検討できるでしょう。
どちらも、左手独奏という限られた編成の中で、結婚を祝う音楽としてそれぞれ異なる魅力を持った作品です。結婚式や演奏会の選曲の際にはぜひ候補に加えてみてください。
► 終わりに
左手のみで演奏できる結婚関連のピアノ作品というと、まず思い浮かぶ作品はそれほど多くないかもしれません。しかし、今回紹介したように、多くの人が一度は耳にしたことのある名旋律の編曲から、左手のために書かれた本格的なオリジナル作品まで、性格の異なる選択肢があります。
結婚式や記念日の演奏では、演奏者自身の身体的な事情や、特別な思いを込めて左手作品を選ぶこともあるでしょう。そんな場面で、今回の2曲が選曲の候補になれば幸いです。
併読推奨記事
本Webメディアの全記事への入り口となる総合ガイドです。入門・基礎知識、作品ライブラリー、楽曲別ガイド、技術・知識、作曲家シリーズ、参考文献・資料・レビューまで、目的別に記事をまとめています。
► 関連コンテンツ
YouTubeチャンネル
・Piano Poetry
チャンネルはこちら
SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら


コメント