【ピアノ】ジョン・トンプソン「FOR LEFT HAND ALONE」シリーズ 完全ガイド
► はじめに
今回紹介するジョン・トンプソンの「FOR LEFT HAND ALONE」シリーズは、初学者でも取り組みやすい左手独奏曲をまとめたアンソロジーです。短い作品を中心に、クラシックの編曲から練習曲まで幅広く収録されており、左手独奏の入門用としても活用しやすい内容となっています。
本記事では、その内容や特徴、目次、そして活用の仕方について詳しくまとめました。
※解説などの文章は英語で書かれています。輸入楽譜のため、日本語訳は付属していません。
► 曲集の内容
‣ ジョン・トンプソンとは
ペンシルベニア州ウィリアムズタウンに生まれたジョン・S・トンプソン(1889–1963)は、若い頃に欧米各地でピアニストとして精力的に演奏を行いました。その後は指導者の道へと進み、フィラデルフィアやインディアナポリス、カンザスシティなどの音楽院でピアノ部門の責任者を務めました。
代表作である「小さな手のためのピアノ教本(Teaching Little Fingers to Play)」や「現代ピアノ教本(Modern Course for the Piano)」シリーズは、今なお世界中で親しまれているロングセラーです。
左手向けの作品としては、本記事で取り上げる「FOR LEFT HAND ALONE」シリーズのほか、日本のレッスンでもおなじみの「トンプソン 現代ピアノ教本 第4巻」に収められた「左手のためのノクターン」を手掛けています。
‣ この楽譜集の概要
「For Left Hand Alone Book One(1959年、11曲)」「For Left Hand Alone Book Two(1962年、9曲)」は、アメリカの出版社THE WILLIS MUSIC COMPANYから刊行されている輸入楽譜で、現時点では国内での取り扱いが確認できず、輸入版での入手が中心となります。
1曲あたりの長さは1〜2ページ程度と短く、各曲の冒頭には簡潔な楽曲解説が添えられているのが特徴です。また運指とペダリングもきちんと書き込まれており、独習にも指導にも扱いやすい構成と言えるでしょう。
収録されている作品の傾向は幅広く、クラシックの編曲もあれば、コラール風の落ち着いた曲、リズミカルな曲、ワルツ、そしてエチュード色の強い練習曲まで、バラエティに富んでいます。
一冊あたりが薄く、譜面台に置いたときにも扱いやすいですし、音符も大きめで視認性が高いのも嬉しいポイントです。
‣ 対象レベルと活用方法
難易度の目安:
・Book One:バイエル後半程度
・Book Two:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
バイエル修了前後の初学者が左手作品への入り口として使うのにも向いていますし、ある程度弾けるようになった学習者が左手演奏の感覚に慣れるため、数曲だけ抜粋して取り組むという使い方も可能です。
全体としてはBook Oneのほうが取り組みやすく、Book Twoではテクニック面でやや発展的な内容が増えます。ただし、曲によって難易度には幅があるため、実際には収録曲から自分に合ったものを選ぶといいでしょう。
‣ 収録曲の一例
Book Twoには、C.P.E.バッハの「ソルフェッジョ ハ短調 Wq 117/2 H220」をもとにした作品も収録されています。左手独奏用として知られるA.R.パーソンズ版がさらに簡略化され、ここでは8小節のアルペジオ練習用エチュードとして再構成されたものが収録されました。原曲の雰囲気を残しながら、左手の練習に取り組みやすいサイズにまとめられている点が興味深いところです。
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
‣ 収録曲一覧
※ページ番号は現行版に基づきます。
· Book One 収録曲一覧
| 曲名 | 作曲者 | ページ |
|---|---|---|
| THE BEAUTIFUL BLUE DANUBE | Johann Strauss | 4 |
| ELFIN DANCE | 6 | |
| THE SOUTHPAW | 7 | |
| ON PARADE | 8 | |
| MIDNIGHT BOOGIE | Jack Foy | 9 |
| ECHOES FROM SCHUBERT | 10 | |
| THE BALLET DANCER | 11 | |
| ON THE OLD BANJO | 12 | |
| FAREWELL TO THE PIANO | Ludwig van Beethoven | 14 |
| MEDITATION | 15 | |
| IN THE HALL OF THE MOUNTAIN KING | Edvard Grieg | 16 |
· Book Two 収録曲一覧
| 曲名 | ページ |
|---|---|
| O’er Hill and Dale | 4 |
| Prelude in C Minor | 6 |
| From “Solfeggietto” (Bach) | 7 |
| Arpeggio Study | 7 |
| Valse Chromatique | 8 |
| Home on the Range | 10 |
| Prelude in G Major | 12 |
| In a Gondola | 14 |
| Black Eyes | 16 |
‣ 序文にみる制作意図
本書の序文では、片手だけで弾く曲がただの余興ではなく、しっかりとした教育的価値を持つものであると述べられています。
左手だけに意識を集中させることで、力強さや正確さ、指の器用さの向上につながり、その成果は両手で演奏する段階に戻ったときにはっきりと実感できると書かれています。さらに運指の重要性についても強調されており、片手のみの演奏では使える指が5本しかないぶん、指使いの選択が演奏の質を大きく左右するため、記譜されたとおりの運指を守るよう指導者に呼びかけている点も印象的です。
その他、タッチやペダルの使用についても触れられており、学習の前に通読しておくといいでしょう。
‣ 専門文献における評価
片手音楽事典の「Piano Music for One Hand」(テオドール・エーデル 著)では、本書について、シンプルで親しみやすい子ども向けの作品集として紹介されています。
また「One Handed」(ドナルド・L・パターソン 編)においても、収録曲のいくつかが1998年から2000年にかけてのナショナル・フェデレーション・オブ・ミュージック・クラブのジュニア・フェスティバル・オーディション課題曲リストに選ばれた実績があると記されており、ジュニア向け音楽教育の場で活用されていたことが分かります。
このことからも、本書が教育用レパートリーとして実際に活用されていたことがうかがえます。
‣ 楽譜情報
Book OneとBook Twoは、それぞれ別の楽譜として刊行されています。購入を検討される方は、以下をご参照ください。
Book One
Book Two
► 終わりに
「FOR LEFT HAND ALONE」は、薄くて扱いやすい体裁でありながら、初学者が左手のテクニックを身につけていくための工夫が随所に見られる曲集です。クラシックの編曲から親しみやすいオリジナル曲、練習曲まで幅広いレパートリーが収められており、左手独奏の入り口としても活用しやすいでしょう。
また、序文や専門文献からは、ジョン・トンプソンが片手演奏を単なる余興ではなく、ピアノ学習の一環として捉えていたこともうかがえます。
輸入楽譜という入手上のハードルはありますが、左手独奏をこれから始めたい方にとって、候補に入れておきたい曲集の一つです。
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