- 【ピアノ】片手のためのプレリュード作品ガイド:年代順にたどる
- ► はじめに
- ► 年代順にたどる作品紹介
- ‣ スクリャービン「左手のための2つの小品 Op.9 より 第1曲 プレリュード」(1894年)
- ‣ フット「左手のための3つのピアノ小品 Op.37 より 第1曲 前奏曲風練習曲」(1897年)
- ‣ レーガー「左手のための4つの特別な練習曲 より 第4曲 前奏曲とフーガ」(1901年)
- ‣ サン=サーンス「左手のための6つの練習曲 Op.135 より 第1曲 前奏曲」(1912年)
- ‣ バッハ/ホーホシュテッター編「平均律クラヴィーア曲集 第2巻 第12番 より プレリュード」(1917年)
- ‣ ショパン/ホーホシュテッター編「プレリュード Op.28-4」(1917年)
- ‣ ショパン/ホーホシュテッター編「プレリュード Op.28-6」(1917年)
- ‣ コルチマリョフ「左手のための前奏曲」(1922年)
- ‣ シュールホフ「左手のための組曲 第3番 より 第1曲 前奏曲」(1926年)
- ‣ ゴドフスキー「左手のための前奏曲とフーガ(B.A.C.H.)」(1929年)
- ‣ モンポウ「6つの前奏曲 より 第6番(左手のために)」(1930年)
- ‣ アデア「3つの前奏曲(左手のための)」(1930年頃)
- ‣ ポンセ「前奏曲とフーガ」(1931年)
- ‣ ロフェ「小組曲(左手のための)より 第1曲 プレリュード」(1937年)
- ‣ ショパン/ショーム編「プレリュード Op.28-6」(1951年)
- ‣ ボントフト「前奏曲とフゲッタ」(1958年頃)
- ‣ アンドリーセン「前奏曲」(1960年)
- ‣ ツィルヒャー「前奏曲」(作曲年不明)
- ‣ ヴィルヘルム・マーラー「前奏曲とフーガ」(作曲年不明)
- ‣ 林光「花の図鑑・前奏曲集 ピアノ(左手)のために」(2005年)
- ‣ 末吉保雄「いっぱいのこどもたち 左手のためのピアノ小前奏曲集」(2008年)
- ‣ エスカンデ「ディヴェルティメント ピアノ(左手)のために より I. プレリュード」(2009年頃)
- ► 作品一覧表
- ► どの作品に取り組むか
- ► 終わりに
【ピアノ】片手のためのプレリュード作品ガイド:年代順にたどる
► はじめに
前奏曲(プレリュード)は、片手のための作品の中でも、長い期間にわたって書き継がれてきたジャンルの一つです。フーガの前に置かれる導入的な性格を持つものもあれば、単独の性格小品として完結しているものもあり、その姿はさまざまです。
本記事では、「Prelude」「Prélude」「Préludium」「前奏曲」などをタイトルに含む片手作品を、片手版が成立した年代順に紹介します。単独の独奏曲だけでなく、組曲や曲集の中の一曲としてプレリュードが置かれている例、既存の両手作品を片手用に編曲した例も取り上げました。同じ原曲から生まれた複数の編曲を比較できる作品については、それぞれの違いにも触れています。
なお、邦題については「前奏曲」「プレリュード」の両方が慣用的に用いられており、統一された基準があるわけではありません。本記事では、出版譜や演奏会プログラムなどで一般的に定着している呼び方をそれぞれの作品ごとに採用しています。
選曲や、作品の歴史をたどる際の手がかりとしてお役立てください。
なお、記事内で示す成立年は、原則として作品の作曲年を記載し、それが確認できない場合や編曲作品については、出版年など確認できる年代を示しています。
► 年代順にたどる作品紹介
‣ スクリャービン「左手のための2つの小品 Op.9 より 第1曲 プレリュード」(1894年)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

アレクサンドル・スクリャービン(1872-1915)が、右手の故障による療養期間中に作曲した、左手のための2曲のうちの一つ。
組となる「ノクターン Op.9-2」ほどの規模はありませんが、両手作品と並んで演奏会のレパートリーに定着しており、片手のためのプレリュードを代表する重要作品と言えるでしょう。
演奏時間は約3分30秒、難易度はツェルニー30番修了〜40番入門程度。
この作品についてさらに詳しく知る
【ピアノ】スクリャービン「左手のための2つの小品 Op.9」演奏完全ガイド
‣ フット「左手のための3つのピアノ小品 Op.37 より 第1曲 前奏曲風練習曲」(1897年)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

アメリカの作曲家アーサー・フット(1853-1937)が、ヘラーへの献呈作品として書いた全3曲の組曲の冒頭を飾る一曲。
バロック的な語法を基調としながら、自由なレチタティーヴォ風の場面が組み合わされた構成をとっており、締めくくり方にはやや唐突な印象も残ります。
演奏時間は約2分50秒、難易度はツェルニー40番修了程度。
‣ レーガー「左手のための4つの特別な練習曲 より 第4曲 前奏曲とフーガ」(1901年)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、前奏曲 1-2小節)

J.S.バッハとブラームスの系譜を意識した作曲家、マックス・レーガー(1873-1916)による性格的小品集の終曲。
Graveの重々しい曲想で始まり、13小節目から曲の終わりにかけて重厚なクライマックスを築きます。3/4拍子で記譜されながらも小節線にあまりとらわれない自由な書法が特徴で、この前奏曲部分だけで約2分40秒を要します。
第4曲全体の演奏時間は約7分、難易度はツェルニー40番修了程度。
レーガーの著作を詳しく知る
【ピアノ】「Modulation」(マックス・レーガー 著)レビュー:アレンジ初中級者に有益な転調の虎の巻(姉妹サイトへリンク)
‣ サン=サーンス「左手のための6つの練習曲 Op.135 より 第1曲 前奏曲」(1912年)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

70代半ばを過ぎたカミーユ・サン=サーンス(1835-1921)が1912年に書いた「左手のための6つの練習曲 Op.135」の冒頭に置かれた一曲。
和音中心ではなく、音価や音型を変化させながら展開する分散和音の扱いが中心となっており、1本の指を伸ばしたまま他の指でスタッカートを弾く技術も要求されます。
演奏時間は約2分、難易度はツェルニー40番中盤程度。
この作品についてさらに詳しく知る
【ピアノ】サン=サーンス「左手のための6つの練習曲 Op.135」:作品の背景とエチュードとしての価値
‣ バッハ/ホーホシュテッター編「平均律クラヴィーア曲集 第2巻 第12番 より プレリュード」(1917年)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

無名時代のレーガーをいち早く見出したことでも知られる音楽家、ツェーザル・ホーホシュテッター(1863年-没年不詳)が、第一次世界大戦の負傷者へ捧げた曲集「Album für das einhändige Klavierspiel」に収めた編曲。
原曲をおおむね忠実になぞりながらも音域を下方へ大きく広げ、原曲にはないダイナミクスの指示を随所に書き加えた、ロマン派的な解釈の色合いが強い仕上がりとなっています。曲の最後にはフェルマータとAdagioの指示が加えられ、フーガを伴わずこの一曲だけで完結させる意図がうかがえます。
演奏時間は約4分30秒、難易度はツェルニー40番修了程度。
ホーホシュテッターについてさらに詳しく知る
【ピアノ】片手作品から読み解くツェーザル・ホーホシュテッター:第一次世界大戦の負傷者へ捧げた名曲編曲集
‣ ショパン/ホーホシュテッター編「プレリュード Op.28-4」(1917年)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

同じくホーホシュテッターが同曲集に収めた編曲で、原曲のメロディを1オクターヴ低く移し、和音伴奏も低音域に密集させることで、原曲よりも重々しい響きを帯びた一曲に仕上げられています。メロディよりも高い音域で伴奏が鳴らされる場面が多く、最上声部が旋律を歌う原曲とは異なる響きの構造が特徴です。調性・小節数は原曲から変更されていません。
演奏時間は約2分、難易度はツェルニー30番修了〜40番入門程度。
ホーホシュテッターについてさらに詳しく知る
【ピアノ】片手作品から読み解くツェーザル・ホーホシュテッター:第一次世界大戦の負傷者へ捧げた名曲編曲集
‣ ショパン/ホーホシュテッター編「プレリュード Op.28-6」(1917年)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)
1-4小節.png)
同じくホーホシュテッターが同曲集に収めた編曲で、原曲の時点ですでに左手が旋律を担う特徴的な作品を、ホーホシュテッターが片手用に編み直しました。右手パートの和音を間引く方法で左手一つでの演奏を実現しており、左右どちらの手でも演奏できるよう運指が部分的に併記されているのも特徴の一つです。音程の広いアルペッジョを含む箇所もあり、ある程度の手の大きさが求められます。
演奏時間は約1分50秒、難易度はツェルニー30番修了〜40番入門程度。
ホーホシュテッターについてさらに詳しく知る
【ピアノ】片手作品から読み解くツェーザル・ホーホシュテッター:第一次世界大戦の負傷者へ捧げた名曲編曲集
‣ コルチマリョフ「左手のための前奏曲」(1922年)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
「社会的意義」を掲げた作品でスターリン賞を受賞した、ロシア(ソヴィエト連邦)の作曲家クリメンティ・コルチマリョフ(1899-1958)による一曲。
「Moderato con tristezza(悲しみをもって、中くらいの速さで)」という発想標語のとおり、切なさをたたえた覚えやすい旋律を持ち、ロシア・ロマン派の様式で書かれています。演奏面では無理のない書法でありながらピアノがよく鳴るよう工夫されており、レパートリーに取り入れやすい一曲と言えるでしょう。
演奏時間は約3分、難易度はツェルニー40番修了程度。
‣ シュールホフ「左手のための組曲 第3番 より 第1曲 前奏曲」(1926年)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

第一次世界大戦での負傷で右腕が麻痺したピアニスト、オタカール・ホルマンのために、エルヴィン・シュールホフ(1894-1942)が書いた全5曲の組曲の第1曲。
ジャズをクラシックの文脈に取り込んだシュールホフらしい幅広い書法の一端がすでにこの前奏曲にも表れており、続く「アリア」「ツィンガラ」などへの導入としての役割を果たしています。
演奏時間は約3分20秒、難易度はツェルニー40番修了程度。
オタカール・ホルマンについてさらに詳しく知る
‣ ゴドフスキー「左手のための前奏曲とフーガ(B.A.C.H.)」(1929年)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、前奏曲 1-2小節)

「左手の使徒」ことレオポルド・ゴドフスキー(1870-1938)が作曲した左手独奏オリジナル作品。
無窮動風の前奏曲が置かれ、末尾では続くフーガの主題がさりげなく先取りされる仕掛けが施されています。アーサー・ローサーに献呈されました。
全曲の演奏時間は約5分30秒、難易度はツェルニー50番入門以降程度。
ゴドフスキーについてさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くゴドフスキー:「左手の使徒」が遺した作品群
‣ モンポウ「6つの前奏曲 より 第6番(左手のために)」(1930年)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
小節線を用いない独自の記譜法で知られるカタルーニャの作曲家フェデリコ・モンポウ(1893-1987)による一曲。
主に単音の連なりと広い音域で書かれ、モンポウ特有の自由なゆらぎの中で語りかけるような性格を持ちます。運指の指示はないものの、ペダリングは丁寧に書き込まれており、響きの扱いへの細かな配慮がうかがえます。
演奏時間は約5分、難易度はツェルニー40番修了程度。
‣ アデア「3つの前奏曲(左手のための)」(1930年頃)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
ガーンジー島生まれのイギリスの作曲家・ピアニスト、イヴォンヌ・マドレーヌ・アデア(1897-1989)による、教材としても扱いやすい全3曲の左手用小品集。
第1曲はアルペジオを中心としたポピュラー調のバラードで、裏拍を用いたリズムの工夫などが見られます。第2曲はメランコリックな性格を持つ、BGMを思わせる美しい小品。第3曲は前の2曲とは対照的な快活さを持ちながらも、曲集全体に通じるほのかな哀愁が感じられます。
全曲の演奏時間は約4分10秒、難易度はツェルニー30番中盤程度。
‣ ポンセ「前奏曲とフーガ」(1931年)
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、前奏曲 1-3小節)

ヘンデルの主題を用いた左手独奏作品で、メキシコの作曲家マヌエル・ポンセ(1882-1948)による一曲。パウル・ヴィトゲンシュタインのために書かれた可能性が指摘されています。旋律を声部分けで示しながら、まるでギターで演奏しているかのように線的に進んでいくのが、この前奏曲部分の特徴です。
全曲の演奏時間は約5分30秒、難易度はツェルニー40番中盤程度。
‣ ロフェ「小組曲(左手のための)より 第1曲 プレリュード」(1937年)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
メルボルン生まれのオーストラリアの作曲家、エスター・ロフェ(1904-2000)による全3曲の組曲の第1曲。
低音域で沈鬱に響く5度音程の和音が印象的な、どことなく切なく幻想的な雰囲気を持つ一曲。続く「舞曲」「コラール」への導入としての役割を担っています。出だしのメロディも記憶に残るのではないでしょうか。
演奏時間は約55秒、難易度はツェルニー30番中盤程度。
収録:Composers’ Series, The – Volume 6 Piano Solos (Rofe)
‣ ショパン/ショーム編「プレリュード Op.28-6」(1951年)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
アメリカのピアノ教育者ジョン・W・ショーム(1905-1988)が「LEFT HAND SOLOS for the piano BOOK2」に収めた編曲。
同じ原曲をホーホシュテッターも編曲しており、聴き比べてみると和音の間引き方やテンポ表示、発想標語の書き加え方などに違いが見られます。ショーム版は原曲の和音をより大胆に減らしており、初めて左手だけの演奏に挑戦する方にとっては、こちらのほうが取り組みやすく感じられるでしょう。
演奏時間は約2分、難易度はツェルニー30番中盤程度。
この2つの編曲は、記事「【ピアノ】左手編曲版のショパン「プレリュード Op.28-6」:2つの編曲を比較」でも詳しく比較しています。
「LEFT HAND SOLOS for the piano BOOK2」についてさらに詳しく知る
【ピアノ】John W. Schaum「LEFT HAND SOLOS for the piano」シリーズ 完全ガイド
‣ ボントフト「前奏曲とフゲッタ」(1958年頃)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
経歴の詳細があまり伝わっていないイギリスの作曲家、フレデリック・S・ボントフトによる新バロック様式の作品。
滑らかな16分音符の流れの中にメロディが織り込まれた書法で進み、静かに終わることで続くフゲッタへの橋渡しをします。Yolande Uyttenhove氏(ブリュッセル)に献呈されました。
前奏曲とフゲッタをあわせた全曲の演奏時間は約5分、難易度はツェルニー40番中盤程度。
‣ アンドリーセン「前奏曲」(1960年)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
アムステルダム音楽院の院長を務めたオランダの作曲家・ピアニスト、ウィレム・アンドリーセン(1887-1964)による一曲。コル・デ・フロートに献呈されました。
冒頭に掲げられた「Molto adagio e mesto(非常にゆるやかに、悲しげに)」の指示がそのまま曲全体の性格を貫いており、付点リズムによるためらいがちなメロディと、何度も出てくる3度音程の響きが特徴的です。機能和声の枠を離れながらも耳になじみやすく書かれており、a-mollを思わせる響きから始まり、最後はA-durの主和音で結ばれる運びに、独特の余韻が感じられます。
演奏時間は約4分、難易度はツェルニー40番修了程度。
収録:「Mano sinistra I:Six pieces by Netherlands composers for piano left hand」
‣ ツィルヒャー「前奏曲」(作曲年不明)
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-6小節)

ヴュルツブルク音楽学校で長く教鞭を執ったドイツの作曲家、ヘルマン・ツィルヒャー(1881-1948)による、左右どちらの手でも演奏可能な作品。
ブラームスを思わせる叙情性を持ち、約4分の中に多彩な書法とテンポ変化による場面転換がバランスよく盛り込まれています。音域が中低域に重心を置いているため、左手での演奏のほうが難易度は低く感じられるでしょう。
演奏時間は約4分、難易度はツェルニー40番中盤程度。
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
‣ ヴィルヘルム・マーラー「前奏曲とフーガ」(作曲年不明)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
ハンブルク音楽大学の学長も務めたドイツの作曲家、ヴィルヘルム・マーラー(1902-1976)による、左右どちらの手でも演奏可能な作品。
静謐な雰囲気の中、16分音符が全曲を支配するJ.S.バッハのプレリュードを思わせる書法で書かれており、拍子記号が3/4と4/4の間を交互に揺れ動く構成をとりながら、オクターブと対位法的な動きが絡み合います。最後はピカルディ終止でフーガへとつながっていきます。右手演奏用の代替運指が付されているのも特徴と言えるでしょう。
前奏曲とフーガをあわせた全曲の演奏時間は約4分、難易度はツェルニー40番中盤程度。
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
‣ 林光「花の図鑑・前奏曲集 ピアノ(左手)のために」(2005年)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
日本の作曲家、林光(1931-2012)が、左手のピアニストとして舞台に復帰した舘野泉に捧げた全8曲の小さな前奏曲集。
古今の詩人たちによって歌われてきた花々を題材としており、各曲の冒頭には秋山清、与謝野晶子、宮沢賢治などの詩歌からの引用を添えた短いエッセイが付されています。無調の語法で書かれ、曲によっては小節線を持たないなど、自由な記譜が採用されています。
全8曲合計の演奏時間は約20分、難易度はツェルニー40番修了程度。
‣ 末吉保雄「いっぱいのこどもたち 左手のためのピアノ小前奏曲集」(2008年)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
舘野泉のために複数の作品を献呈してきた作曲家、末吉保雄(1937-2018)による全6曲の前奏曲集。
小林一茶の句「雪とけて村いっぱいの子ども哉」にちなんで名付けられ、子どもたち特有の身のこなしを各曲で追いかける試みがなされています。無調の語法で書かれながらも拍子やテンポの変化が頻繁で、これが子どもの落ち着きのない動きや感情を音楽的に描き出しています。
全6曲合計の演奏時間は約15分、難易度はツェルニー40番修了程度。
‣ エスカンデ「ディヴェルティメント ピアノ(左手)のために より I. プレリュード」(2009年頃)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
ピアニスト舘野泉との出会いをきっかけに、左手のための作品を相次いで手がけてきたアルゼンチンの作曲家パブロ・エスカンデ(1971- )による、全4楽章からなる組曲の第1楽章。
緩やかな導入部から次第に緊張を高めてアレグロへと至る、対位法的な二部形式で書かれています。全楽章は4度音程で関連づけられ、新バロック的な性格とギリシャ旋法が組み合わされた作品です。
前奏曲の演奏時間は約3分30秒、難易度はツェルニー40番修了程度。
► 作品一覧表
| 作曲家 | 作品 | 成立年 | 演奏時間 | 難易度目安 |
|---|---|---|---|---|
| スクリャービン | Op.9 より 第1曲 プレリュード | 1894年 | 約3分30秒 | ツェルニー30番修了〜40番入門 |
| フット | Op.37 より 第1曲 前奏曲風練習曲 | 1897年 | 約2分50秒 | ツェルニー40番修了 |
| レーガー | 前奏曲とフーガ | 1901年 | 約7分(全曲) | ツェルニー40番修了 |
| サン=サーンス | Op.135 より 第1曲 前奏曲 | 1912年 | 約2分 | ツェルニー40番中盤 |
| バッハ/ホーホシュテッター編 | BWV881 より プレリュード | 1917年 | 約4分30秒 | ツェルニー40番修了 |
| ショパン/ホーホシュテッター編 | プレリュード Op.28-4 | 1917年 | 約2分 | ツェルニー30番修了〜40番入門 |
| ショパン/ホーホシュテッター編 | プレリュード Op.28-6 | 1917年 | 約1分50秒 | ツェルニー30番修了〜40番入門 |
| コルチマリョフ | 左手のための前奏曲 | 1922年 | 約3分 | ツェルニー40番修了 |
| シュールホフ | 組曲 第3番 より 第1曲 前奏曲 | 1926年 | 約3分20秒 | ツェルニー40番修了 |
| ゴドフスキー | 前奏曲とフーガ(B.A.C.H.) | 1929年 | 約5分30秒(全曲) | ツェルニー50番入門以降 |
| モンポウ | 6つの前奏曲 より 第6番 | 1930年 | 約5分 | ツェルニー40番修了 |
| アデア | 3つの前奏曲(左手のための) | 1930年頃 | 約4分10秒(全曲) | ツェルニー30番中盤 |
| ポンセ | 前奏曲とフーガ | 1931年 | 約5分30秒(全曲) | ツェルニー40番中盤 |
| ロフェ | 小組曲 より 第1曲 プレリュード | 1937年 | 約55秒 | ツェルニー30番中盤 |
| ショパン/ショーム編 | プレリュード Op.28-6 | 1951年 | 約2分 | ツェルニー30番中盤 |
| ボントフト | 前奏曲とフゲッタ | 1958年頃 | 約5分(全曲) | ツェルニー40番中盤 |
| アンドリーセン | 前奏曲 | 1960年 | 約4分 | ツェルニー40番修了 |
| ツィルヒャー | 前奏曲 | 不明 | 約4分 | ツェルニー40番中盤 |
| ヴィルヘルム・マーラー | 前奏曲とフーガ | 不明 | 約4分(全曲) | ツェルニー40番中盤 |
| 林光 | 花の図鑑・前奏曲集 | 2005年 | 約20分(全曲) | ツェルニー40番修了 |
| 末吉保雄 | いっぱいのこどもたち | 2008年 | 約15分(全曲) | ツェルニー40番修了 |
| エスカンデ | ディヴェルティメント より I. プレリュード | 2009年頃 | 約3分30秒 | ツェルニー40番修了 |
※難易度表記はあくまで目安です。左手演奏への慣れや手の大きさなどによって実際の難しさは変わります。
► どの作品に取り組むか
これから片手のプレリュード作品に触れてみたい方には、スクリャービンのOp.9-1、ショパン/ホーホシュテッター編の2作品、ショパン/ショーム編など、比較的取り組みやすい作品から入るのがおすすめです。演奏時間・難易度ともに無理がなく、片手でプレリュードの音楽性を体感する第一歩として選びやすいでしょう。
そこからレーガーやポンセ、ゴドフスキーのようなより高度な作品へ進むことで、片手一つでの前奏曲という形式が、時代や作曲家ごとにどのように異なる表情を見せてきたかを味わうことができます。さらに、邦人作曲家やエスカンデといった21世紀の作品にまで目を向けると、このジャンルが現在も新たな書き手を得て広がり続けていることが実感できるはずです。
► 終わりに
前奏曲というジャンルは、フーガへの導入としての役割を持つものから、それ自体で完結した性格小品まで、片手作品の中でも特に多様な姿を見せてきました。時代とともに広がってきたその幅を、ぜひ実際の音で確かめてみてください。
当サイトでは、作曲家・作品ごとに片手作品を整理した「左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別」を公開しています。プレリュード以外の作品についても知りたい場合は、あわせてご覧ください。
併読推奨記事
本Webメディアの全記事への入り口となる総合ガイドです。入門・基礎知識、作品ライブラリー、楽曲別ガイド、技術・知識、作曲家シリーズ、参考文献・資料・レビューまで、目的別に記事をまとめています。
► 関連コンテンツ
YouTubeチャンネル
・Piano Poetry
チャンネルはこちら
SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら


コメント