【ピアノ】左手作品は何から弾けばいい?:定番曲限定・レベル別おすすめ曲
► はじめに
左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 をご覧いただくと、時代も作曲家も幅広く、想像していたよりもずっと多くの作品が存在することに気づくかもしれません。
一方、選択肢が増えれば増えるほど、「結局どの曲から弾き始めればよいのか」「今の自分のレベルに合う作品はどれなのか」「初めて左手作品に挑戦するとき、何を基準に選べばいいのか」といった迷いも生まれてきます。
本記事では、左手のためのピアノ作品の中でも特によく知られている定番作品に絞り、演奏レベル別におすすめの楽曲を整理しました。実際に弾く一曲を決めるための目安としてお役立てください。
► 本記事での選曲基準
楽譜を入手しやすい作品から選曲
左手作品を選ぶ際にまず問題になりやすいのが、楽譜の入手のしやすさです。そこで本記事では、レイモンド・レヴェンタールによる選曲・編集で知られる定番アンソロジー「Piano Music for One Hand:A COLLECTION OF STUDIES, EXERCISES AND PIECES」の収録作品から選曲しました。楽譜情報は、【ピアノ】レイモンド・レヴェンタール「Piano Music for One Hand」レビュー をご覧ください。
定番曲から選曲
本記事の狙いは、左手作品にまだ詳しくない学習者に選曲のヒントを届けることにあります。そのため、左手のためのピアノ音楽の中でも、比較的知られており、現在も取り上げられる機会の多い作品を中心に選びました。
※難易度表記はあくまで目安です。左手演奏への慣れや手の大きさなどによって実際の難しさは変わります。
► レベル別:左手作品は何から弾けばいい?
【ピアノ】左手のみで演奏するピアノ曲:魅力と実践の入門ガイド では、左手演奏独特の困難さに対応するために、椅子の位置や座り方から解説しています。はじめて左手作品に取り組む方はあわせてご覧ください。
‣ ブルグミュラー25の練習曲修了程度まで
C.P.E.バッハ「右手あるいは左手のための小品」
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

演奏時間:約1分
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
右手だけでも左手だけでも演奏できるというユニークな発想で書かれた作品です。和音を伴わず、音域の狭いアルペジオを中心に構成されているため、手の大きさによる影響を比較的受けにくい書法になっています。
ケーラー「左手のための教本 Op.302 より 3つの小品」
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1曲 1-5小節)

演奏時間:各曲の演奏時間は数十秒
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
技術的なハードルも比較的低く抑えられており、音楽性と取り組みやすさを兼ね備えているため、左手独奏に初挑戦する際の入り口として選びやすい作品群と言えるでしょう。
‣ ツェルニー30番修了程度まで
ベルガー「12の練習曲 Op.12 より 第9曲」
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

演奏時間:約3分10秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
1820年前後の作曲と伝えられており、左手のみを想定して書かれた最初期作品として、ピアノ音楽史という視点からも興味深い一曲です。長調と、中間部の短調が対比を描くシンプルな構成ながら、耳に残りやすい旋律を持ち、初中級〜中級者が最初に取り組む左手曲として、有力な候補になるでしょう。
カルクブレンナー「左手のための4声のフーガ」
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-8小節)

演奏時間:約1分30秒
難易度:ツェルニー30番修了程度
速いテンポで進む4声のフーガですが、対位法の扱いは比較的シンプルにまとめられており、左手フーガとしては挑戦しやすい部類に入ります。左手単独のために書かれた最初期のフーガとも考えられており、歴史的なレパートリーをたどるうえでも見逃せない一曲といえます。
スクリャービン「左手のためのプレリュード Op.9-1」
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

演奏時間:約3分30秒
難易度:ツェルニー30番修了程度
Op.9-2と組み合わせて演奏されることも多く、左手作品の中でも特に名の知られた一曲です。小さな規模の中に、ロシア的な哀愁を帯びた旋律が凝縮されています。このOp.9は、スクリャービンが右手の不調を抱えていた時期に書かれた作品です。
‣ ツェルニー40番修了程度まで
スクリャービン「左手のためのノクターン Op.9-2」
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

演奏時間:約6分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
Op.9-1と組み合わせて演奏される機会が多く、静けさと劇的な高まりを併せ持つ、カデンツァを含む充実した内容の一曲です。メロディ・伴奏・バスなどを左手一つで担いながら幅広い音域を行き来し、片手による演奏とは思えないほど豊かな響きを生み出しています。
ライネッケ「左手のためのピアノソナタ Op.179 より 第4楽章」
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番終了程度
19世紀に書かれた左手独奏用ソナタとしても、貴重な存在です。第4楽章はロンド形式で、無窮動的な動きとマーチ風の部分が交互に現れます。第1楽章・第3楽章と比べると難易度はやや控えめですが、演奏効果は十分に高く、まずはこの楽章だけを取り出して取り組むのもいいでしょう。
‣ ツェルニー50番入門以降
レーガー「左手のための4つの特別な練習曲 より 第4曲 前奏曲とフーガ」
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第4曲 1-2小節)

演奏時間:約6分
難易度:ツェルニー50番中盤程度
4曲の中でも特に難度の高い一曲ですが、単独で取り上げられることも多く、内容の充実度も際立っています。フーガは3声で書かれています。
ブルーメンフェルド「左手のための練習曲 Op.36」
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-2小節)

演奏時間:約6分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
春の気配を思わせるような、余韻の深い一曲。タイトルには「練習曲」とありますが、音楽的な内容は技術的な習作の域を超えています。親しみやすさと演奏効果を兼ね備えており、聴き手の反応も得やすい作品ですが、本記事で紹介する中では最も難易度の高い一曲となります。
► 左手作品を選ぶときに確認したいポイント
1. 現在のピアノ演奏レベル
まず目安になるのは、今の自分がどのくらいの難易度の曲を無理なく弾けているかという点です。両手の曲での経験は、左手作品を選ぶ際にもある程度参考になります。
2. 左手だけで演奏することへの慣れ
両手での演奏経験が豊富でも、左手一つで旋律と伴奏を同時にこなす感覚はまた別のものです。初級・中級者はもちろん、両手演奏に十分慣れている上級者であっても、左手演奏の入門1曲目にはシンプルな作品を選ぶという考え方も持っておくといいでしょう。
3. 手の大きさ・身体的な条件
左手作品では、片手でも十分な響きを確保する狙いなどから、オクターヴを超える和音などが用いられることも珍しくありません。手の大きさや柔軟性によって弾きやすさが大きく変わる点も、考慮しておきたいところです。
4. 楽譜の入手しやすさ
魅力的な作品でも、楽譜が絶版だったり、入手が難しかったりする場合があります。実際に練習を始められるかどうかも、選曲の段階で確認しておくと安心です。本記事で紹介した作品は、いずれもレヴェンタールのアンソロジー(【ピアノ】レイモンド・レヴェンタール「Piano Music for One Hand」レビュー)に収録されているため、まず一冊で複数の定番作品を確認できるというメリットがあります。楽譜を探す手間を減らし、実際に弾いてみるところまで進みやすいでしょう。
► もっと多くの左手作品を探したい方へ
ここで紹介したのは、数ある左手作品のごく一部にすぎません。左手のためのピアノ作品には、まだまだ幅広いレパートリーが広がっています。
当サイトでは、作曲家・作品ごとに左手作品を整理した「左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別」を公開しています。「どんな作品が存在するのか知りたい」「特定の作曲家の左手作品を調べたい」「珍しい作品を探したい」といったときには、ライブラリーもあわせてご覧ください。
筆者が左手作品に取り組み始めた頃、その分野に詳しい女性ピアニストの方から「とにかく数多くの左手作品を実際に弾いてみて、自分に合う作品を探すことが大切」というアドバイスをいただいたことがあります。本記事で定番曲を知ったあとは、興味の赴くままに探索を広げていく段階と言えるでしょう。
► 終わりに
左手作品には、初心者でも取り組みやすい小品から、高度な技巧を要する大規模な作品まで、幅広いレパートリーがあります。
まずは本記事で紹介した定番作品の中から、現在の演奏レベルや左手演奏への慣れに合った一曲を選んでみてください。そして、実際に弾いてみることで、自分にとっての「弾きやすい作品」「魅力を感じる作品」が少しずつ見えてくるはずです。
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