【ピアノ】左手作品から読み解く作曲家シリーズ 記事まとめ
► はじめに
左手のために書かれた作品を軸に、その作曲家自身の人物像や時代背景を読み解くシリーズ記事をまとめました。
左手ピアノ音楽の黎明期から現代まで、時代を追って紹介します。有名な作曲家から、左手ピアノ音楽の歴史を語るうえで欠かせないものの一般にはあまり知られていない作曲家まで取り上げています。
左手音楽の歴史を、編纂者・校訂者・演奏家などの視点から読み解くシリーズは、姉妹シリーズ 【ピアノ】左手音楽から読み解く音楽家シリーズ 記事まとめ をご覧ください。
► 記事一覧
‣ 左手作品から読み解く作曲家シリーズ
【ピアノ】左手作品から読み解くルートヴィヒ・ベルガー:左手のために書かれた最初期の出版作品
メンデルスゾーンの師であり「無言歌集」の原型を生み出したとも評されながら、現代ではほぼ忘れられた存在となったルートヴィヒ・ベルガー(1777–1839)を解説。1817年頃に腕の神経障がいに見舞われ、それと関連が感じられる左手作品を遺しました。「12の練習曲 Op.12 より 第9曲」(1820年頃)は、左手のためだけに明確に書かれた作品として、おそらく最初に出版されたピアノ作品と言われています。左手ピアノ音楽の歴史がどこから始まったのかを、その起点となった一曲から読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くカルクブレンナー:左手のための最初のフーガを遺した名ピアニスト
ショパンとの関係で語られることの多いフレデリック・カルクブレンナー(1785–1849)の人物解説記事。ドイツ系フランスのピアニスト・教師・作曲家として、1825年から35年にかけてパリ第一のピアニストという名声の絶頂期を迎えた人物です。1831年、パリに到着したばかりのショパンに自らのメソッドによる研修を勧めたことでも知られますが、同じ年に「左手のための4声のフーガ」も出版しました。「左手のために書かれた最初のフーガ」として記録されるこの小品を軸に、名声欲や実業家としての一面もあわせ持った名ピアニストの実像を読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くマルクスゼン:ブラームスの恩師が遺した片手の音楽
ブラームスの師として知られるエードゥアルト・マルクスゼン(1806–1887)が残した左手作品2曲(Op.33 第2曲、Op.40)を解説。いずれも1844年前後の作品で、ドライショクとヘンゼルトという当代一流の技巧派ピアニストへの献呈作品です。左手ピアノ音楽の黎明期に、教育者・作曲家がどのような眼差しをヴィルトゥオーゾ文化に向けていたかを読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くリスト:二つの作品に見る作曲家の素顔
両手を縦横に駆使するヴィルトゥオーゾのイメージが強いリストですが、片腕の弟子ゲザ・ジチーのために書き下ろした「ハンガリーの神 S.543」と、初期版に左手独奏パッセージを含む「ペトラルカのソネット 第104番」という、わずかながら左手にまつわる作品を残しています。本記事ではその背景と音楽的特徴を解説しており、華やかなヴィルトゥオーゾとは異なる内省的なリストの姿が浮かび上がります。
【ピアノ】左手作品から読み解くテオドール・デーラー:ツェルニーの弟子が遺した2つの片手作品
ツェルニーに師事したオーストリア系ピアニスト、テオドール・デーラー(1814–1856)の人物解説記事。師ツェルニー自身も左手作品を遺しており、その系譜の中でデーラーが「12の演奏会用練習曲 Op.30 第7番」「演奏会用練習曲 Op.42 No.33」という左手のための2曲を書いたという事実は、19世紀ウィーンのピアノ教育において左手作品がどのように受け継がれていたのかを考える手がかりとなります。42歳という短い生涯を送った知られざるヴィルトゥオーゾの、もう一つの顔を読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くドライショク:片手で二人分を弾いた男
左手のみでコンサートを公に行った最初のピアニストとして記録されるアレクサンダー・ドライショク(1818–1869)の人物像と、彼が残した左手作品2曲(Op.22、Op.129)を解説。「2本の右手を持つ男」と呼ばれた超絶技巧の実像を、同時代の批評や証言をもとに読み解きます。左手独奏というジャンルの歴史的起点を知るうえで、外せない一本です。
【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
19世紀中頃のパリとミラノで「ピアノのパガニーニ」と称されたアドルフォ・フマガッリ(1818–1856)の人物像と、彼が残した左手作品を解説。ヴェルディ、ベッリーニ、マイアベーア、ロッシーニなどのオペラを素材にしたトランスクリプションを中心に、各作品の書法上の特徴・限界を分析します。リストへの献呈作である「《ロベール・ル・ディアーブル》大幻想曲 Op.106」を筆頭に、左手で聴衆を驚倒させた演奏家の実像を批評や証言から読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くカール・ライネッケ:19世紀に左手ソナタを書いた先駆者
ライプツィヒ音楽院の教授・院長として、多くの音楽家を育てたカール・ライネッケ(1824–1910)の人物解説記事。19世紀に左手のためのピアノソナタを出版した作曲家は、ゲザ・ジチーと彼の二人だけとされています。右腕を失ったジチーにとって左手作品が必然だったのに対し、ライネッケにとっては必然ではなく選択でした。若き日のOp.1に含まれる左手フーガから、4楽章構成の本格的なソナタOp.179まで、その音楽観を読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くボナミーチ:膨大な練習曲が語るもの
ナポリ音楽院の書記からピアノ教師となったフェルディナンド・ボナミーチ(1827–1905)を取り上げます。ドライショクやフマガッリが左手演奏の技巧的・演奏会的な魅力を追い求めたのに対し、ボナミーチは左手技術の体系化という明確な意図のもと、膨大な数の練習曲・練習パッセージを書き残しました。Op.271〜273の3曲集を通じて技術的な訓練から音楽的な性格的練習曲へと重心が移っていく構成や、イシドール・フィリップ校訂版の序文、ボナミーチ自身による丁寧な演奏指示まで、地道に左手技術の土台を築いた作曲家の仕事を読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くジチー:片腕だけで演奏会を切り開いた伯爵
15歳で狩猟中の事故により右腕を失いながら、片腕だけで本格的な演奏会活動を切り開いたハンガリー伯爵ゲザ・ジチー(1849–1924)の人物解説記事。両手を使える身体条件のもとで左手作品に取り組んだドライショクやフマガッリとは異なり、右腕を失った現実の中から自らのレパートリーを築き上げた演奏家でした。リストとの深い師弟関係・友情や、「6つの練習曲」「左手のためのピアノソナタ」などの自作、J.S.バッハ「シャコンヌ」やシューベルト「魔王」の編曲まで、その生涯と作品群を読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くブルーメンフェルド:ゴドフスキーに捧げられた1905年の左手練習曲
指揮者・ピアニスト・作曲家・教師という四つの顔を持ちながら、いずれの分野でも評価されつつ歴史の表舞台からは退いてしまったフェリックス・ブルーメンフェルド(1863-1931)の人物解説記事。1905年にゴドフスキーへ献呈された「左手のための練習曲 Op.36」を軸に、13年後に自ら右半身の麻痺を患うという運命との重なりや、シモン・バレル、レオン・フライシャー、ジェームズ・トッコ、ジョン・コリリアーノへと連なる、一曲の音楽的継承の広がりを読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くゴドフスキー:「左手の使徒」が遺した作品群
「左手の使徒」と称されたレオポルド・ゴドフスキー(1870–1938)の人物解説記事。ショパンの「エチュード」を素材に1894年から1914年にかけて出版された左手独奏版22曲と、約15年のブランクを経て1928年以降に再燃した後期の左手作品群という、二つの時期に分かれる作品群を通観します。1930年、ショパンのノクターンのレコード制作中に右手が麻痺し演奏活動から退くという結末とも重なり合う、一人のヴィルトゥオーゾの生涯を読み解きます。
【ピアノ】なぜ、ゴドフスキーは左手のピアニストにならなかったのか
「左手の使徒」と称されたレオポルド・ゴドフスキー(1870–1938)は、ショパンの「エチュード」による左手独奏版編曲22曲をはじめ、左手のためのオリジナル作品も数多く生み出しました。ところが1930年、ロンドンでの録音中に右手の麻痺を発症した後も、彼が左手のピアニストとして再出発した形跡は確認できません。左手音楽を深く追求した人物が、なぜ左手ピアニストの道を選ばなかったのか、その逆説を作品と生涯の両面から読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くスクリャービン:右手への執着と、左手のための名品
モスクワ音楽院時代、同級生ヨゼフ・レヴィーンへの対抗心から昼夜を問わず猛練習を重ねた末に右手の腱炎を発症し、医師に「もう二度と弾けないかもしれない」と告げられながらも半年間左手だけで練習を続けたという、アレクサンドル・スクリャービン(1872–1915)の青年期の危機を解説。回復から約2年後に書かれた「左手のための2つの小品 Op.9」(1894年)を軸に、演奏会で喝采を浴びながらも自ら封印した「幻のワルツ」の逸話や、ゴドフスキーが1906年のベルリン・リサイタルでOp.9を取り上げていた事実まで、初期スクリャービンの知られざる素顔を読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くヨゼフ・ホフマン:ルービンシュタイン唯一の弟子が遺した片手の練習曲
ポーランド系アメリカ人のピアニストとして、ショパン演奏において20世紀前半に並ぶ者のない存在と評されたヨゼフ・ホフマン(1876–1957)の人物解説記事。アントン・ルービンシュタインが正式に個人教授した唯一の弟子という経歴を持ちながら、作曲家としては筆名も用いつつ100曲以上を発表するなど、演奏家と作曲家という二つの顔をあえて切り離していた人物です。自身の名義で発表した数少ない作品の一つ「左手のための練習曲 ハ長調 Op.32」を軸に、70以上の発明特許を持つ発明家としての顔にも触れながら、その美学を読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くイグナツ・フリードマン:名ピアニストと帰属の定まらない左手編曲
生涯に2800回以上のコンサートをこなした20世紀前半屈指のピアニスト、イグナツ・フリードマン(1882–1948)の人物解説記事。左手ピアノ音楽との関わりは活動全体からすると多くありませんが、「イゾルデの愛の死」(ワーグナー=リスト)左手独奏版の編曲者として彼の名が資料に現れます。ただしこの帰属は資料によって見解が分かれており、ヴィトゲンシュタイン説をとる資料も存在します。原出版譜に編曲者名が印刷されていないという空白から生じたこの問題を通じて、左手ピアノ音楽史における資料そのものの成り立ちを読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くリパッティ:逸話に彩られた左手のソナチネ
33歳で夭折したルーマニアのピアニスト=作曲家ディヌ・リパッティが、作曲クラスの仲間とともに師の誕生日に贈るために書いたとされる、3楽章の左手のためのソナチネを取り上げます。五線紙が足りなかったという逸話や、片脚の恩師へのブラックユーモアという解釈など、成立事情が独特な作品です。演奏家としての知名度に比べて作曲家としての側面はあまり知られていないリパッティの、もう一つの顔に触れることができます。構想から完成まで数年を経たこの小品の背景と音楽的特徴を解説しています。
【ピアノ】左手作品から読み解くロバート・ヘルプス:右手の困難の中で書いた3つのエチュード
アメリカで「ピアニストのピアニスト、作曲家の作曲家」と称されたロバート・ヘルプス(1928-2001)の人物解説記事。右手に困難を抱えていた時期に自分自身のために書いた「左手のための音楽 3つのエチュード」(1975年)を軸に、片手で演奏することを単なる制約ではなく作曲上の課題として捉えたヘルプス自身の言葉を通じて、その音楽観を読み解きます。
【ピアノ】左手作品から読み解くラウル・ソーザ:右手の負傷が開いた、もう一つのキャリア
両手のピアニストとして国際的なキャリアを築きながら、1980年の右手負傷がきっかけで左手演奏に本格的に取り組んだアルゼンチン生まれのカナダ人ピアニスト、ラウル・ソーザの人物解説記事。J.S.バッハ「半音階的幻想曲とフーガ」やラヴェル「ラ・ヴァルス」、ストラヴィンスキー「火の鳥」など、自ら左手用に編曲した大作から、オリジナル作品「左手と弦楽オーケストラのための協奏曲」まで、演奏家と作編曲家の両方の顔を持って歩んだキャリアを読み解きます。
‣ 番外編
· 番外編①:右手作品から読み解く作曲家
【ピアノ】片手作品から読み解くライオネル・ノヴァク:左手の自由を失った音楽家と右手のための音楽
1980年の脳卒中により左手が自由に使えなくなったアメリカの作曲家・ピアニスト、ライオネル・ノヴァク(1911–1995)の人物解説記事。この境遇を経て彼が遺したのは右手だけで演奏する作品でした。妻の誕生日に捧げた「和泉式部の日記より7つの歌」をはじめ、オットー・ルーニングやアリソン・ノヴァク(実娘)など、彼のために書かれた数々の右手作品もあわせて紹介します。
· 番外編②:左右どちらの手でも演奏できる片手作品を中心に遺した音楽家
【ピアノ】片手作品から読み解くツェーザル・ホーホシュテッター:第一次世界大戦の負傷者へ捧げた名曲編曲集
ドイツのオルガニスト・作曲家・編曲家・批評家ツェーザル・ホーホシュテッター(1863-没年不詳)が1917年に出版した曲集「Album für das einhändige Klavierspiel(片手ピアノのためのアルバム)」をもとにした人物・作品解説記事。J.S.バッハ、ショパン、シューマン、レーガー、ジチーによる8曲の編曲を収め、第8曲以外のすべてに左手用・右手用両方の運指が記されているという、片手ピアノ音楽の中でも稀有な構成を持つ曲集です。「第一次世界大戦の負傷者へ」という献呈の言葉の背後にある事情や、マックス・レーガー・ゲザ・ジチーとの知られざる交流にも触れながら、この曲集が生まれた背景を読み解きます。
► 終わりに
左手作品の魅力だけでなく、それを生んだ人物の背景まで知ると、作品の見え方や楽しみ方が変わってきます。以下のリンクより、楽曲個別記事もあわせてお読みください。
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