目的別:片手ピアノ音楽を学ぶための参考書籍ライブラリー

目的別:片手ピアノ音楽を学ぶための参考書籍ライブラリー

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本ライブラリーでは、片手(左手・右手)のためのピアノ音楽を調べたり、学んだりするうえで役立つ書籍を厳選して紹介しています。網羅的なリストではなく、選択的なコレクションです。

片手音楽を専門に扱った書籍はそれほど多くありません。そのため本ライブラリーでは、片手音楽の専門書に加えて、一般的なピアノ音楽書の中に片手音楽についての貴重な記述が含まれている書籍も取り上げています。

 

書籍の分類:

作品を探す:片手作品のカタログ・書誌資料
片手音楽史を知る:歴史的な位置づけを知るための資料
人物を知る:片手音楽に関わった作曲家・演奏家の自伝・伝記・回想録
楽曲・演奏を深める:特定の作品の解釈や演奏に役立つ資料
解説付き楽譜集:楽譜に加えて、まとまった解説が収録されているもの

 

紹介している書籍には洋書(英語・ドイツ語)も多く含まれるため、各書籍の情報に「言語」を記載しています。ほとんどの書籍には詳細レビュー記事へのリンクがついているので、必要に応じて参考にしてください。

本記事は随時更新されていく予定です。

 

► 目的別早見表

 

「何を知りたいか」から資料を選べるよう、目的ごとにおすすめの資料をまとめました。

 

目的 おすすめの資料
左手・右手の作品を幅広く探したい One Handed(Patterson)
片手音楽の歴史と重要人物・重要作品をつかみたい Piano Music for One Hand(Edel)
片手用の編曲を、同じ原曲の両手用編曲と比べたい The Pianist’s Guide to Transcriptions, Arrangements, and Paraphrases(Hinson)
絶版になった楽譜の出版情報をたどりたい The Pianist’s Resource Guide 1978-79(Rezits、Deatsman)
かつて片手作品がどう評価されていたかを知りたい Klaviermusik(Georgii)、The History of Pianoforte Music(Westerby)
片手音楽に関わった人物の素顔を知りたい 「人物を知る」の書籍
ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」を演奏・研究したい ラヴェル―回想のピアノ(Long)、The Art of the Left Hand(Lau)
左手作品を実際に弾き始めたい Piano Music for One Hand(Lewenthal)、片手で弾くピアノ曲集(Georgii)
片手のための作曲・編曲を学びたい THE GODOWSKY COLLECTION Vol.3・Vol.4、Piano Music for One Hand(Lewenthal)、片手で弾くピアノ曲集(Georgii)

 

► 特におすすめの書籍

 

片手音楽を本格的に調べたい方に、まず手に取っていただきたい2冊を紹介します。どちらが優れているというより、用途によって使い分けるのがおすすめです。

 

· Piano Music for One Hand 著:Theodore Edel

 

・出版社:Indiana University Press(インディアナ大学出版局)
・初版:1994年
・ページ数:121ページ
・言語:英語

 

片手のためのピアノ音楽の歴史的背景や、ドライショク、フマガッリ、ジチー、ヴィトゲンシュタインといったキーパーソンの詳細解説、左手独奏曲・右手独奏曲・オーケストラとの共演作・室内楽の4カテゴリーに分けた作品カタログを収録した一冊。

30ページを超える歴史部分(第一部)のボリュームが大きな特徴で、作品カタログに留まらない「背景知識の参考書」としての性格を持っています。歴史的な流れや重要人物について知りたいときに、まず開きたい一冊です。

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· One Handed:A Guide to Piano Music for One Hand 編集・注釈:Donald L. Patterson

 

・出版社:Greenwood Press(グリーンウッド・プレス)
・初版:1999年
・ページ数:313ページ
・言語:英語

 

左手独奏作品だけでなく、右手独奏作品や片手用編曲作品、協奏的作品まで含めて網羅的に探せる、片手音楽特化の実用的リファレンス。2,100を超える作品データに加え、76件の参考文献、36種類のアンソロジー収録曲一覧、ディスコグラフィーまで充実しています。

「はじめに」では、ポジショニング、ペダリング、運指といった片手演奏の技術的なポイントや、両手用の楽曲を片手向けに編曲する際のアイデアにも触れられています。具体的な作品を探したいときは、まずこの一冊をご覧ください。

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► 片手音楽の学習に役立つ書籍ライブラリー

 

目的に応じて、様々な資料を紹介します。

 

‣ 作品を探す(作品カタログ・書誌資料)

– The Pianist’s Guide to Transcriptions, Arrangements, and Paraphrases 著:Maurice Hinson

 

・出版社:Indiana University Press
・初版:1990年
・ページ数:本編159ページ+前付けなど31ページ(現行版)
・言語:英語

 

ピアノ編曲作品のガイドブックで、2,000曲以上の編曲作品の中に、少数ながら優れた片手用編曲も含まれています。片手作品の収録数ではEdel・Pattersonに及びませんが、片手用の編曲を同じ原曲の両手用編曲と並べて比較できるのは、本書ならではの強みです。巻末の「片手用トランスクリプション索引」から本編をたどる使い方がおすすめです。

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– The Pianist’s Resource Guide 1978-79 著:Joseph Rezits、Gerald Deatsman

 

・出版社:Pallma Music Co.(発売元:Kjos West)
・刊行:1978年(1978-79年版)
・ページ数:1,491ページ
・言語:英語

 

ピアノ音楽全般を扱った大部の書誌資料ですが、その中に「Music For Left Hand Alone」という独立した検索項目が2ページにわたって設けられています。作品名・編曲者・出版社・出版番号が記録されているため、絶版楽譜を追跡する際の手がかりになります。1970年代末の左手音楽の出版状況を伝える資料として読むのがいいでしょう。

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‣ 片手音楽史を知る

– Klaviermusik 著:Walter Georgii(ヴァルター・ゲオルギイ)

 

・出版社:Atlantis Musikbuch-Verlag
・初版:1942年(第6版:1984年)
・ページ数:652ページ(第6版)
・言語:ドイツ語

 

ピアノ音楽全般を扱った通史ですが、巻末付録の「片手のための音楽」が約5ページ半にわたって片手音楽の歴史をたどっています。作品ごとに著者自身の率直な評価が添えられている点が最大の魅力で、片手音楽の文献ではあまり見かけない作曲家の名前にも出会えます。改訂にあたってページ数が追加された記録があるので、購入の際は「第6版以降」かどうかを確認しておきましょう。

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– The History of Pianoforte Music 著:Herbert Westerby

 

・出版社:Routledge(現行の復刻版)
・初版:1924年
・ページ数:432ページ(現行版)
・言語:英語

 

1924年刊行のピアノ音楽通史。左手作品についての記述は「Works for Left Hand」の項目の2段落ほどに限られますが、左手作品が教育と技巧の側面から評価され、作品が学習課程として紹介されている点に、当時の位置づけがよく表れています。ヴィトゲンシュタインではなくジチーが先駆者として語られているのも、時代を感じさせる記述です。

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‣ 人物を知る(自伝・伝記・回想録)

– I Really Should Be Practicing 著:Gary Graffman

 

・書籍副題:Reflections on the Pleasures and Perils of Playing the Piano in Public
・出版社:Doubleday
・初版:1981年
・言語:英語

 

右手の故障をきっかけに左手のための音楽へと活動の場を広げたピアニスト、ゲイリー・グラフマン自身による回想録。副題のとおり、人前でピアノを弾くことの喜びと危うさが本人の言葉で綴られており、左手のレパートリーを切り拓いた演奏家の人物像を知るための貴重な手がかりとなります。

関連記事:【ピアノ】左手音楽から読み解くゲイリー・グラフマン:右手の故障から生まれた新たなレパートリー

 

– Scriabin: A Biography 著:Faubion Bowers

 

・出版社:Dover Publications
・初版:1969年(講談社インターナショナル、全2巻)/Dover改訂版:1996年
・言語:英語

 

アレクサンドル・スクリャービンの本格的な伝記。もともと2巻で刊行されたものをDover版では1冊にまとめた改訂版で、作品目録と多数の貴重な写真も収録されています。若き日に右手を痛めた経験から生まれた「左手のための2つの小品 Op.9」を、作曲家の生涯の流れの中で捉え直したい方におすすめです。

関連記事:【ピアノ】左手作品から読み解くスクリャービン:右手への執着と、左手のための名品

 

– A Bundle of Time: The Memoirs of Harriet Cohen 著:Harriet Cohen

 

・出版社:Faber & Faber
・初版:1969年
・言語:英語

 

イギリスのピアニスト、ハリエット・コーエンの回想録。コーエンは20世紀前半のイギリス音楽界で活躍した両手のピアニストですが、右手の負傷後、一時期は左手のための作品を演奏したことでも知られています。本書では、演奏家の情報を通して当時のイギリス音楽界の様子を知ることができます。

なお、グラスの載ったトレイを運んでいた際に右手を負傷し、9針を縫う大怪我を負ったエピソードはよく知られていますが、この回想録にはその記述が一切ありません。

関連記事:【ピアノ】左手音楽から読み解くハリエット・コーエン

 

– Duet for Three Hands 著:Cyril Smith(聞き書き:Joyce Egginton)

 

・出版社:Angus and Robertson(ロンドン)
・初版:1958年
・言語:英語

 

イギリスのピアニスト、シリル・スミスの自伝です。ジャーナリストのジョイス・エギントン(Joyce Egginton)への口述をもとにまとめられ、妻でピアニストのフィリス・セリックも1章を寄稿しています。1956年、ソ連への演奏旅行中に脳血栓に倒れ、左腕の機能を失った際の詳しい経緯が本人の言葉で語られており、その後、夫妻が「3手」のためのピアノ・デュオとして共演を続けていった歩みをたどることができます。片手音楽の中でも資料の少ない「3手」の編成を知るうえで、欠かせない一冊です。

関連記事:【ピアノ】片手音楽から読み解くシリル・スミス:左腕の自由を失ったピアニストが拓いた「3手」の音楽

 

– 大ピアニストがあなたに伝えたいこと 100のレッスン 著:千蔵八郎

 

・出版社:春秋社
・初版:1996年
・ページ数:207ページ
・言語:日本語

 

100人のピアニストの発言を時代順に紹介した書籍で、片手音楽の専門書ではありません。しかし掲載人物のうち22人が、片手作品の作曲・編曲・演奏・献呈などに関わっています。特にフライシャーとグラフマンの項目では、ピアニストが手の故障とどう向き合ってきたのかを垣間見ることができます。

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‣ 楽曲・演奏を深める

– ラヴェル―回想のピアノ 著:マルグリット・ロン

 

・訳:北原道彦、藤村久美子
・出版社:音楽之友社
・邦訳初版:1985年
・ページ数:194ページ
・言語:日本語

 

ラヴェルと親交を結んだピアニスト、マルグリット・ロンの回想録。「左手のためのピアノ協奏曲」の誕生経緯や、ウィーンでの非公開演奏会をめぐるラヴェルとヴィトゲンシュタインの確執など、現場に居合わせた証言者ならではの記述が含まれています。左手協奏曲を演奏・研究する方に、ぜひ目を通してほしい一冊です。

関連記事:

・【ピアノ】マルグリット・ロンが語るラヴェルの左手協奏曲
・書籍全体の詳しいレビューを読む(姉妹サイト)

 

– The Art of the Left Hand 著:Sandra Wing-Yee Lau(研究論文)

 

・種別:D.M.A. Final Project(スタンフォード大学)
・提出:1994年
・入手方法:ProQuest(UMI)経由でPDFを購入
・ページ数:44ページ
・言語:英語

 

ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」を中心に扱った研究論文。特にChapter2では、ソロとトゥッティの対比を「音色」の問題として捉える視点や、身体の使い方・ペダリング・ペルルミュテールによる運指上の助言など、実際に弾くときに役立つ考察が展開されています。なお、Chapter3のレパートリー目録は不正確な箇所があるため、他の資料と照合しながら使うといいでしょう。

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‣ 解説付き楽譜集

– Piano Music for One Hand 選曲・編集:Raymond Lewenthal

 

※Edelの同名書籍とは別の楽譜集です。

・出版社:G. Schirmer(販売は Hal Leonard Corporation)
・初版:1972年
・ページ数:128ページ
・言語:英語(解説部分)
・対象レベル:初級~上級者

 

片手独奏作品(左手用作品を中心に、右手のみでも演奏可能な作品を含む)を集めた楽譜集。冒頭にまとめられた6ページ分の解説では、片手用レパートリーの概観、片手用楽曲の2つの基本タイプ、運指・ペダリング・姿勢などが扱われており、どのような曲を左手用に編曲すると学習効果が高いかという提案まで含まれています。「左手作品の楽譜集を1冊だけ手元に置いておきたい」という方におすすめです。

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– 片手で弾くピアノ曲集 オリジナル作品と編曲作品集 編:ヴァルター・ゲオルギイ

 

・出版社:音楽之友社
・初版:1998年(原著:「Einhändig」第1巻、1955年)
・ページ数:63ページ
・言語:日本語
・対象レベル:初級~上級者

 

1955年にドイツで出版された「Einhändig」第1巻の内容を日本語で紹介した曲集。C.P.E.バッハ、レーガー、スクリャービンなどのオリジナル作品と、テレマン、J.S.バッハ、シューマンなどの編曲作品が、はっきり分けて収録されています。

巻末の7ページにわたる解説では、片手作品の演奏法、編曲作品の原曲、編曲の技法、片手で弾くピアノ音楽の作曲史概観が扱われており、片手ピアノという分野への入門書としても読める一冊です。片手音楽を日本語でまとまって学べる数少ない資料であることも注目に値するでしょう。

編者のゲオルギイは、ピアノ音楽史「Klaviermusik」(前述)の著者でもあり、その巻末付録では片手作品一つひとつへの評価を読むことができます。

なお、続編の「Einhändig」第2巻(輸入楽譜)には、3手連弾や片手ピアノとヴァイオリンのための作品が収められており、巻末にはほぼ同じ解説が付いています。

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関連記事:【ピアノ】ヴァルター・ゲオルギイ「Einhändig Band II」レビュー:収録曲・難易度・資料としての価値

 

– THE GODOWSKY COLLECTION Vol.3、Vol.4 編纂・序論:Millan Sachania

 

・出版社:Carl Fischer
・初版:Vol.3 2002年、Vol.4 2003年
・ページ数:Vol.3 445ページ(うち解説約32ページ)、Vol.4 400ページ(うち解説約26ページ)
・言語:英語(解説部分)
・対象レベル:上級者

 

「左手の使徒」レオポルド・ゴドフスキーの作品を集めた楽譜シリーズのうち、片手音楽の資料として特に重要な2冊。どちらの巻にも、編纂者ミラン・サカーニアによる長大な序論エッセイが収録されており、楽譜集でありながら研究書に近い読みごたえがあります。両巻の冒頭には共通の総論が置かれており、その後に各巻の収録曲に即した解説が続きます。

 

Vol.3:53 Studies on Etudes of Frédéric Chopin and Other Chopin Arrangements

「ショパンのエチュードによる53の練習曲」(うち22曲が左手独奏用)を全曲収録した巻。序論では、作品が発表当時に浴びた激しい批判と聴衆の熱狂などが詳しく語られています。ゴドフスキー以前に存在したショパンの左手用編曲(フィリップ、ジチーなど)にも触れられており、片手音楽史の資料としても貴重と言えるでしょう。さらに、ゴドフスキー自身による原典の序文「左手独奏のための練習曲についての特記事項」やペダルの用法なども再録されています。

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Vol.4:More Transcriptions, Arrangements and Original Compositions

「左手のための組曲」「左手のための前奏曲とフーガ(B.A.C.H.)」「左手のための6つのワルツポエム」など、左手オリジナル作品群を収録した巻。ヴィトゲンシュタインのために書かれたとされている「宝石のワルツの主題による交響的変容」も含まれています。序論では、ゴドフスキーが前作から時を経て再び左手音楽の創作に向かいはじめた経緯や、「左手だけで、両手で弾いているように聴こえさせる」ための書法上の工夫が、ゴドフスキー自身の論考を引きながら解説されています。片手のための作曲・編曲に取り組む方には、特に参考になることでしょう。

→ 詳しいレビューを読む

 

関連記事:

・【ピアノ】左手作品から読み解くゴドフスキー:「左手の使徒」が遺した作品群
・【ピアノ】片手ピアノ音楽を知る手がかり:ゴドフスキーの論考「Piano Music for the Left Hand」(1935年)

 

► 左手ピアノ作品ライブラリーとあわせて

 

この参考書籍ライブラリーで紹介している文献をはじめ、多様な資料を照合し、運営者自身が楽譜・音源も一曲ずつ確認しながら作品情報をまとめたのが「左手ピアノ作品ライブラリー」です。本記事で紹介している資料を通して気になる作品を見つけたら、難易度や演奏時間の目安をあわせて確認してみてください。

左手ピアノ作品ライブラリー

関連記事:【ピアノ】「左手ピアノ作品ライブラリー」の編集方針:文献・楽譜・音源で一曲ずつ確かめる調査方法

 

► 両手のピアノ学習のための参考書籍

 

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