【ピアノ】片手作品のレパートリーを自分で開拓する方法
► はじめに
片手のみで演奏する作品のレパートリーを広げていくには、まず数多くの作品に触れ、実際に音を出しながら自分に合うものを探していく過程が欠かせません。その入り口として、左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 をぜひ活用してみてください。
一方、「左手のために書かれた作品を左手で弾く」「右手のために書かれた作品を右手で弾く」という枠にとどまらず、自分自身の手で新たなレパートリーを切り開いていく視点を持つと、選曲の幅はさらに広がっていきます。
本記事では、そのための具体的な方法をいくつか紹介します。
► 自分で開拓する方法
‣ 反対の手のレパートリーを弾いてみる
右手のために書かれた作品を左手で弾く、あるいは左手作品を右手で弾いてみる。こうした「反対の手」への挑戦も、レパートリーを広げる有効な手段の一つです。
「左手のために書かれた」ということと「左手でしか弾けない」ということは、必ずしもイコールではありません。
作品の中には、左手という条件そのものが音楽的な意味を強く持っているものもありますが、特定の奏者からの委嘱、作曲上の事情、あるいは作品固有の技術的条件などによって、左手が選ばれている場合もあります。片手作品を「左手作品」「右手作品」ときっちり二分して考えるより、それぞれの作品がなぜその手のために書かれたのかを個別に確認していく姿勢のほうが、レパートリー開拓においては有効かもしれません。
より詳しくは、【ピアノ】片手作品は、反対の手でも弾けるのか をご覧ください。
‣ 自分で編曲する
もう一つの方法は、ピアノ編曲そのものを学ぶことです。手の大きさや届く音域など、自身の体格や条件に合わせて音を組み直せるようになれば、編曲スキルは片手ピアノに取り組む人にとって大きな武器になります。
編曲といっても、最初から高度な技術が必要なわけではありません。音を減らしたり、音域を調整したり、伴奏型を組み替えたりするだけでも、片手で演奏できる形に近づけられる場合があります。
【ピアノ】左手編曲のテクニック 完全ガイド では、左手作品を編曲する際に押さえておきたい技法上のポイントを整理し、独学の進め方についても紹介しています。編曲学習の参考にしてみてください。
自分の手で選曲の幅を自由に広げられるようになった姿を思い描きながら、楽しみつつ編曲を学んでいただければと思います。
‣ スミス&セリック夫妻に学ぶ「既存作品に少しだけ手を加える」という発想
【ピアノ】スミス&セリック夫妻の3手デュオ「Cyril Smith & Phyllis Sellick: Piano Duos」レビュー でも取り上げたとおり、イギリスを代表するピアニストの一人であったシリル・スミス(1909-1974)は、1956年のソ連公演中に血栓症を発症し、左腕の自由を失いました。それでも妻フィリス・セリックとの共演を続ける道を選び、スミスが右手、セリックが両手を担う、合計3本の手による演奏スタイルを確立していきます。
アルバムのブックレットでは、スミスとセリックが、多くの連弾曲は大幅な改変を加えなくても3手で演奏できると考えていたことが紹介されています。実際、収録されたシューベルトの2作品とフォーレの作品も、原曲の音楽を生かしながら3手で演奏できる形に改変され、演奏されました。
この録音から読み取れるのは、既存の4手ピアノ作品の中から、大がかりな改変を加えずに3手で演奏できる作品を見つけ出すという発想です。これは、片手演奏のレパートリーを広げるうえでも、応用できる視点ではないでしょうか。
つまり、原曲に少し手を加えるだけで演奏可能になる作品を探すというアプローチです。これは3手作品に限らず、通常の片手ソロのレパートリーを探す際にも有効です。この方法の良いところは、まだ本格的な編曲技術を身につけていない段階からでも取り組める点にあります。まずは原曲と自分の演奏可能な範囲を照らし合わせ、「どこを変えれば弾けるか」を考えてみるだけでも構いません。
だからこそ、シリル・スミスのように、片手のピアニストとして活動してきた人々が、実際にどのような形でレパートリーと向き合ってきたのかを知ることには大きな意味があります。左手のための音楽を世に広めてきた演奏家・編纂者たちの歩みに焦点を当てたシリーズは、【ピアノ】左手音楽から読み解く音楽家シリーズ 記事まとめ をご覧ください。
► 終わりに
「既存の左手作品を左手で弾く」「既存の右手作品を右手で弾く」という枠を少し外してみると、片手作品のレパートリーを広げる方法はさまざまに見えてきます。
反対の手で弾いてみる。自分で編曲してみる。あるいは、既存の両手作品や連弾作品の中から、片手で演奏できる可能性を探してみる。
こうした視点を持つだけでも、レパートリー開拓の方法は大きく変わってきます。まずは自分にできそうなところから、少しずつ試してみてください。
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