【ピアノ】ゴドフスキー左手オリジナル作品入門:最初に挑戦したいおすすめ3曲

【ピアノ】ゴドフスキー左手オリジナル作品入門:最初に挑戦したいおすすめ3曲

► はじめに

 

レオポルド・ゴドフスキー(Leopold Godowsky, 1870–1938)といえば、ピアノ史に名を残す作曲家・編曲家として知られています。とりわけ左手独奏作品は、演奏技術だけでなく、左手作品というジャンルそのものの可能性を大きく押し広げました。左手レパートリー全体で見ても、最難関に位置づけられる作品が少なくありません。

そのため、「ゴドフスキーに挑戦してみたいけれど、どの曲から手をつければいいのか分からない」という声もよく耳にします。

そこで本記事では、ゴドフスキーの左手作品の中でも比較的取り組みやすく、それでいて音楽的な魅力をしっかり味わえる3曲を取り上げます。ただし「取り組みやすい」という表現は、あくまでゴドフスキー作品の中で相対的に見た場合の話です。左手のためのピアノ曲全般として捉えれば、決して簡単な作品ではないという点はご承知おきください。

 

► 最初に挑戦したい3曲

‣ おすすめ①:左手のための組曲 より 第6曲 シシリエンヌ

· 組曲全体について

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第6曲 1-2小節)

ゴドフスキー「左手のための組曲 より 第6曲」1-2小節

作曲年:1929年頃(マジョルカ島パルマ滞在中に着想、資料により1926年作曲との記載もあり)
出版年:1930年
演奏時間:
  I. Allemande 約4分10秒
  II. Courante 約5分30秒
  III. Gavotte 約4分30秒
  IV. Sarabande 約4分
  V. Bourrée 約3分
  VI. Sicilienne 約4分50秒
  VII. Menuet 約6分
  VIII. Gigue 約3分20秒
 全曲合計:約35分
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:イシドール・フィリップ

 

この作品は、マジョルカ島パルマ滞在中に着想を得て作曲されたと伝えられています。最終的に8曲からなる組曲としてまとめられました。ゴドフスキー自身、ロココ風の形式を借りながらも中身はこれまでにない新しい試みだと自負していたようで、ゴドフスキー自身も重要な作品と位置づけていました。

アルマンド、クーラント、ガヴォット、サラバンド、ブーレ、シシリエンヌ、メヌエット、ジーグという18世紀の舞曲形式を下敷きにしつつ、そこに彼らしい緻密な書法が凝縮された内容になっています。

 

·「第6曲 シシリエンヌ」をおすすめする理由

 

・組曲の中では比較的演奏しやすい部類に入る(シシリエンヌの難易度:ツェルニー40番修了程度)
・覚えやすく美しい旋律
・ゴドフスキーらしい和声感も味わえる

 

第6曲「シシリエンヌ」は、今回紹介する中でもとりわけ耳に残りやすく親しみやすい旋律を持つ一曲で、d-mollのメランコリックな響きが印象的な作品です。

反復小節線を考慮しなければ「全40小節」というコンパクトな規模なので学習しやすく、前半に比べて後半のほうがやや難易度は上がるものの、全体を通して極端に弾きにくい箇所はほとんどありません。無理なく通して弾ける構成になっています。

組曲全体としては約35分に及ぶ大作ですが、この第6曲は歌心を重視した音楽であり、ゴドフスキー作品への入り口として選びやすい一曲と言えるでしょう。

 

‣ おすすめ②:左手のための6つのワルツポエム より 第1番

· 曲集全体について

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ゴドフスキー「左手のための6つのワルツポエム より 第1曲」1-4小節

出版年:1930年(ゴドフスキー自身による序文は1937年1月1日付で追加収録)
演奏時間:
  No.1 Allegretto amabile 約2分
  No.2 Allegretto grazioso 約4分
  No.3 Allegretto amabile 約4分30秒
  No.4 Moderato, con tenerezza e grazioso 約2分10秒
  No.5 Moderato 約3分40秒
  No.6 Con fuoco 約3分20秒
 全曲合計:約20分
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:Carl Engel

 

サロン風の雰囲気を持つ6曲からなる小品集です。同時期に書かれたシュトラウスの主題による作品とは違い、既存の旋律を借りることなく、すべてゴドフスキー自身の楽想によってまとめられました。

全体を通して譜読み自体のハードルはそれほど高くなく、一曲一曲がコンパクトにまとまっているため、ゴドフスキーの左手作品に初めて触れる際の入門としても選びやすい曲集です。

 

·「第1曲」をおすすめする理由

 

・反復小節線を考慮しなければ全32小節と短く、無理なく学習を進められる
・ドラマティックな展開は控えめで、サロン風の親しみやすい雰囲気を持つ
・ゴドフスキー独特の響きを負担なく体験できる

 

第1番は曲の規模がコンパクトなぶん最後まで仕上げやすく(難易度は、ツェルニー40番修了程度)、短い作品ながらもゴドフスキーらしい対位法的・半音階的な書法をしっかり味わえる一曲です。無理のない奏法で演奏すれば、ピアノが自然によく響くように書かれています

 

‣ おすすめ③:エレジー

· 楽曲について

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1小節目)

ゴドフスキー「エレジー」1小節目

出版:1931年
演奏時間:約3分10秒
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ゴットフリート・ガルストン、エミール・R・ブランシェ

 

レイモンド・レヴェンタール編のアンソロジーに収録されたこともあり、数あるゴドフスキーの左手オリジナル作品の中でも比較的よく知られる存在になりました。エミール・R・ブランシェへの献呈を含む点も特徴で、当時の左手ピアノ音楽をめぐる人的つながりをうかがわせる一曲です。

冒頭には「mesto(悲しげに)」と記されていますが、単純な悲しみというよりも、もう少し遠くを見つめるような奥行きのある表情を持った音楽と言えるでしょう。音域は中〜低音域が中心で、高音部譜表の五線を上に飛び出すような箇所は、曲の終わり近くにわずかに現れる程度に留まります。

 

· おすすめする理由

 

・譜面上は混雑しているように見えるが、比較的演奏しやすい(難易度:ツェルニー40番修了程度)
・レヴェンタール編アンソロジーにも収録されている
・静かで美しい抒情性を持ち、深い音楽

 

ゴドフスキーのオリジナル作品の中では演奏機会も多く、楽譜も比較的入手しやすいため、最初の一曲として検討しやすい作品と言えるでしょう。

音楽的内容という点では、今回紹介した3曲の中でも最も奥行きのある作品です。

 

► 3曲の比較

 

作品 難易度(推奨) 特徴
シシリエンヌ ツェルニー40番修了程度 覚えやすく美しい旋律
ワルツポエム 第1番 ツェルニー40番修了程度 コンパクトな規模の小品
エレジー ツェルニー40番修了程度 抒情的で奥行きのある楽曲

 

難易度はあくまで推奨難易度です。これらの作品にはゴドフスキー自身による運指やペダリングが詳細に書き込まれているので、少し前の段階からでも挑戦できるでしょう。

 

► 次に挑戦したいオリジナル曲

 

インテルメッツォ(マリンコニコ)

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

ゴドフスキー「インテルメッツォ(マリンコニコ)」1-3小節

出版年:1930年
演奏時間:約3分10秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:アレクサンダー・ジロティ、エミール・R・ブランシェ

 

その名の通り、「Malinconico(物憂げに)」な性格を持つインテルメッツォ。随所に用いられるスタッカートの表情に独特の味わいがあり、哀愁に留まらない、しゃれた雰囲気を醸し出しています。

本作もエミール・R・ブランシェに献呈されており、当時の左手ピアノ音楽をめぐる作曲家・演奏家間のつながりを感じさせます。

ゴドフスキーの左手オリジナル作品の中では、上記の3曲とともに比較的取り組みやすい部類に入り、次に挑戦するのに適した一曲でしょう。

 

► 楽譜の入手方法

 

今回紹介した作品はいずれも「THE GODOWSKY COLLECTION, Vol.4」に収録されています。

 

エレジーに取り組みたい方には、以下の記事で紹介しているアンソロジーも手に入りやすくおすすめなので、チェックしてみてください。

【ピアノ】レイモンド・レヴェンタール「Piano Music for One Hand」レビュー

 

► 終わりに

 

ゴドフスキーの左手作品には技巧を要する曲が数多く存在しますが、その中にも比較的手が届きやすい作品はきちんとあります。

本記事で取り上げた3曲は、それぞれ違った持ち味を備えながらも、いずれもゴドフスキーならではの書法にじっくり触れられる作品ばかりです。ゴドフスキーの音楽世界への入り口として、ぜひ最初の一曲を選んでみてください。

 

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