【ピアノ】片手のための間奏曲作品ガイド:年代順にたどる

【ピアノ】片手のための間奏曲作品ガイド:年代順にたどる

► はじめに

 

間奏曲(インテルメッツォ)は、もともと他の楽曲や楽章の間に置かれる音楽を指す言葉でしたが、時代とともに独立した小品の題名としても用いられるようになりました。とりわけ19世紀以降は、作曲家それぞれの個性を反映した性格的小品として、多様な作品が書かれています。

本記事では、「Intermezzo」「間奏曲」「インテルメッツォ」などを作品名または曲集内の曲名に含む片手作品を、作品(編曲の場合は片手版)が成立した年代順に紹介します。

選曲や、作品の歴史をたどる際の手がかりとしてお役立てください。

なお、記事内で示す成立年は、原則として作品の作曲年を記載し、それが確認できない場合や編曲作品については、出版年など確認できる年代を示しています。範囲表記の場合は着手年を基準に並べています。

 

► 演奏形態について

 

本ガイドでは、作品名の末尾に以下の記号を付しています:

[LH]:左手のみで演奏
[RH]:右手のみで演奏
[LH/RH]:左手または右手で演奏
[LH][RH]:左手作品と右手作品が両方入っている項目など

作品を実際にどちらの手で演奏できるかではなく、作曲者・編曲者が指定した演奏形態を基準として、[LH][RH][LH/RH]を付しています。

※現時点で本記事に掲載している作品は、すべて左手のための作品です。

 

► 年代順にたどる作品紹介

‣ パルムグレン「間奏曲」(1898年) [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

パルムグレン「間奏曲」1-5小節

ヘルシンキ音楽学校で学んだのち、ブゾーニらに師事したセリム・パルムグレン(1878-1951)が左手のために残した、オリジナル独奏作品。

短い小品ながら、さまざまなアーティキュレーションが細かく書き込まれており、音の表情を作り分ける楽しさがあります。曲の冒頭から10度音程の和音が複数回登場する点が、響きの面での大きな特徴と言えるでしょう。

演奏時間は約1分50秒、難易度はツェルニー30番修了程度。

収録:舘野泉 左手のピアノ・シリーズ 左手のためのピアノ珠玉集 時のはざま(Amazon.co.jp)

 

‣ ゴドフスキー「間奏曲(マリンコニコ)」(1930年) [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

ゴドフスキー「間奏曲(マリンコニコ)」1-3小節

「左手の使徒」と呼ばれるレオポルド・ゴドフスキー(1870-1938)が書いたインテルメッツォ。アレクサンダー・ジロティに献呈されました。

副題の「マリンコニコ」が示す通り、どこか物憂げな性格を基調としていますが、随所に用いられるスタッカートの効果によって、単なる哀愁にとどまらないしゃれた雰囲気も漂います。ゴドフスキーの左手作品の中では比較的取り組みやすい部類に入り、同作品群に触れる際の候補の一つとなるでしょう。

演奏時間は約3分10秒、難易度はツェルニー40番修了程度。

 

ゴドフスキーについてさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くゴドフスキー:「左手の使徒」が遺した作品群

 

‣ ブリヒト「左手のための4つのピアノ小品 Op.30 より 第1曲 Intermezzo」(1933年) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

フランツ・シュミットに師事し、のちナチス政権下のオーストリアを逃れてアメリカへ渡ったヴァルター・ブリヒト(1904-1970)が、パウル・ヴィトゲンシュタインに捧げた全4曲の小品集の冒頭曲。運指はすべてヴィトゲンシュタイン自身によるものと、楽譜の表紙に記されています。

ため息を思わせる音型から始まる、メランコリックな性格の一曲です。広い音域を使った立体的な響きが特徴で、続く「無言歌」「素描」「練習曲」への導入としての役割も果たしています。

第1曲単独の演奏時間は約2分30秒、難易度はツェルニー50番入門以降程度。

楽譜と音源は作曲者公式サイト(walterbricht.com)で無料公開されています。

 

‣ ディヒラー「左手のための間奏曲とカプリッチョ より 第1曲 間奏曲」(1980年頃) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

ウィーン国立音楽アカデミーで教鞭を執り、ピアノ演奏法に関する著書も残したヨーゼフ・ディヒラー(1912-1993)による全2曲の作品の第1曲。

クラスターや不協和音を交えつつも、随所に聴き取りやすい和声進行が織り込まれており、ジャズのエッセンスを感じさせる作風が特徴です。音数自体はシンプルですが、部分的に3段譜・4段譜が用いられ、複数の声部が重なり合う様子が視覚的にも明確に把握できます。

第1曲単独の演奏時間は約5分、難易度はツェルニー40番修了程度。

楽譜:左手のための間奏曲(第1曲のみ/Musse.jp)

 

ディヒラーの著書についてさらに詳しく知る

・【ピアノ】ヨーゼフ・ディッヒラー「ピアノ演奏法の芸術的完成」レビュー(姉妹サイトへリンク)
・【ピアノ】ヨーゼフ・ディッヒラー「ピアノの解釈と限界」レビュー(姉妹サイトへリンク)

※ディヒラーは、「ディッヒラー」という表記が用いられることもあります。

 

► 作品一覧表

 

作曲家 作品 成立年 演奏時間 難易度目安
パルムグレン 間奏曲 1898年 約1分50秒 ツェルニー30番修了
ゴドフスキー 間奏曲(マリンコニコ) 1930年 約3分10秒 ツェルニー40番修了
ブリヒト 4つのピアノ小品 Op.30 より 第1曲 1933年 約2分30秒 ツェルニー50番入門以降
ディヒラー 間奏曲とカプリッチョ より 第1曲 1980年頃 約5分 ツェルニー40番修了

※難易度表記はあくまで目安です。左手演奏への慣れや手の大きさなどによって実際の難しさは変わります。

 

► どの作品に取り組むか

 

これから片手の間奏曲作品に触れてみたい方は、まずパルムグレンの「間奏曲」のような、比較的短い作品から取り組んでみるといいでしょう。作品が持つ抒情性や独特の雰囲気を、短い時間の中で味わうことができます。

そこからゴドフスキー、ブリヒト、ディヒラーなどの作品へ進むと、同じ「間奏曲」という題名でも、作品の規模や書法が大きく異なることも分かります。

 

► 終わりに

 

本記事で紹介した作品を見ても、同じ「間奏曲」という題名でありながら、短い抒情的小品から、複数曲からなる作品集の一部、さらに現代的な書法を取り入れた作品まで、その姿はさまざまです。

片手作品という視点から間奏曲をたどることで、作曲家ごとの音楽性だけでなく、片手のためのピアノ音楽がどのように広がってきたのかも見えてきます。気になる作品があれば、楽譜や音源にも触れてみてください。

当サイトでは、作曲家・作品ごとに片手作品を整理した「左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別」を公開しています。間奏曲以外の作品についても知りたい場合は、あわせてご覧ください。

 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

左手・片手のためのピアノ音楽を専門とし、作曲・編曲、講演などを行っています。また、当サイト「One-Hand Piano Institute」を運営し、作品・作曲家・音楽史・技術(作曲・編曲・演奏)・楽譜・文献まで、片手で演奏するピアノ音楽を多角的に紹介しています。

日本音楽コンクールをはじめ、国内外の作曲コンクールで受賞歴を持ち、これらの受賞作品はいずれも、左手ピアノを編成に含むアンサンブル作品、および、左手のためのピアノ独奏作品です。
また、大学院では左手のためのピアノ音楽における作曲・編曲をテーマに研究し、首席で修了しています。

右手の負傷をきっかけに出会った左手のためのピアノ音楽に心惹かれ、以来15年以上、この分野に取り組んできました。左手音楽の魅力と可能性を、より多くの方に知っていただけたら嬉しく思います。

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