左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 G-I

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 G-I

► はじめに

 

本ページでは、G-Iで始まる作曲家の左手ピアノ作品をまとめています。作曲作品・編曲作品・教本・室内楽・協奏曲などを、作曲家ごとに整理しています。

作品を探す際は、以下のアルファベット別ページもご利用ください。

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別

 

► 作曲家別 G-I

‣ Gabrilovich, Ossip Solomonovich(1878-1936) ガブリロヴィチ

 

オシップ・ガブリロヴィチ(1878年サンクトペテルブルク生まれ、1936年デトロイト没)はロシア出身のアメリカのピアニスト・指揮者・作曲家です。サンクトペテルブルク音楽院でアントン・ルービンシュタインにピアノを、リャードフやグラズノフらに作曲を学んでルビンシテイン賞を受賞したのち、ウィーンに渡りレシェティツキのもとでさらに研鑽を積みました。

1900年のカーネギーホール・デビューを皮切りにアメリカでも高い評価を得た演奏活動を展開する一方、1910年代にはミュンヘンのコンツェルトフェライン管弦楽団(後のミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団)の指揮者を務めています。第一次世界大戦の勃発で敵性外国人として拘束された経験を経て渡米し、1918年からはデトロイト交響楽団の初代常任指揮者としてオーケストラの発展に尽力しました。

作曲家としては大規模な作品よりも、自身の演奏活動のために書かれた小品を中心に手掛けています。

 

· Étude for the Left Hand, Op.12 No.2

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-2小節)

ガブリロヴィッチ「左手のための練習曲 Op.12-2(《2つのピアノ小品》Op.12 より)」1-2小節

邦題:左手のための練習曲 Op.12-2(《2つのピアノ小品》Op.12 より)

 

出版:1917年
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:レオポルド・ゴドフスキーに献呈

 

「2つのピアノ小品 Op.12」の第2曲として書かれた演奏会用エチュード。

メロディにあたる音符には大きな符頭、それ以外の音符には小さな符頭が用いられており、主要メロディを視覚的に区別しやすい工夫が施されている点が、記譜上の特徴と言えるでしょう。

特に前半の大部分では、旋律がオクターヴ・ユニゾンによって補強される書き方になっています。全体を通じて高音域はほとんど用いられず、中低音域を中心とした重厚な響きが支配的で、曲想にもどこか重々しさを感じずにはいられません。

シンプルな旋律線を、アルペジオや随所に織り交ぜられた半音階的な動きを持つ伴奏で彩る書法は、ゴドフスキー「ショパンのエチュードによる練習曲 より No.16 Op.10-6」の編曲を思わせるところがあります。

 

‣ Ganz, Rudolph(1877-1972) ルドルフ・ガンツ

 

ルドルフ・ガンツ(1877年2月24日チューリッヒ生まれ、1972年8月2日シカゴ没)はスイス系アメリカ人のピアニスト・指揮者・作曲家・教育者です。チューリッヒ、ローザンヌ、ストラスブールで音楽を学んだ後、ベルリンでブゾーニにピアノを師事しました。

1899年にベルリン・フィルとのデビューを飾り、翌1900年にアメリカへ渡ってシカゴ音楽大学でピアノ科を率いました。1905年には同地でラヴェルの音楽をアメリカで初めて演奏した人物としても知られています。1921年から1927年はセントルイス交響楽団の首席指揮者を務め、1934年からはシカゴ音楽大学の学長として1954年まで在任しました。

バルトーク、ラヴェル、ヴァンサン・ダンディらの作品を北米に積極的に紹介したことでも評価されています。

 

· Capriccio No.1 for the left hand alone, Op.26 No.1

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手独奏のためのカプリッチョ 第1番 Op.26 No.1

 

出版年:1917年
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:Mollie Margolies

 

ガヴォット的な三部形式(G-dur—e-moll—G-dur)をとる小品です。両端のセクションは活き活きとした楽想ですが、中間部はテンポが落ち着き、広い音域のアルペジオに包まれた内省的な旋律が現れます。

Op.26は、No.1(左手)とNo.2(右手)がペアをなす作品として同時に出版されており、興味深い試みと言えるでしょう。

 

‣ Godowsky, Leopold(1870-1938) ゴドフスキー

 

レオポルド・ゴドフスキー(1870年ヴィルナ近郊ソシュリ生まれ、1938年ニューヨーク没)はリトアニア出身のアメリカのピアニスト・作曲家です。同時代のピアニストたちから神話的な存在として語られ、その演奏技術はホフマンやラフマニノフをも「神業」と言わしめました。

演奏会での知名度に反して多くの作品を残しており、中でも「ショパンのエチュードによる練習曲」は、ピアノ音楽史上難易度の高い作品群として現在も知られています。1930年に脳卒中で右手が麻痺したことは、左手音楽を大量に書き続けた直後の出来事として、皮肉な巡り合わせとして語り継がれています。

 

· Studies on Chopin’s Etudes — for the left hand alone

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、No.22 Op.10-12 革命 1-2小節)

ゴドフスキー「ショパンのエチュードによる練習曲 より No.22 Op.10-12 革命」1-2小節

邦題:ショパンのエチュードによる練習曲 より 左手独奏編曲 全22曲

 

出版年:1899–1914年にかけて順次出版
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)

 

作品の概要

全53曲からなる「ショパンのエチュードによる練習曲」のうち、22曲が左手独奏のために書かれています。

原曲のショパンのエチュードは両手のための作品ですが、ゴドフスキーはそれを左手のみで再現するに留まらず、調性の変更、和声の変更、内声部の追加、対位的な声部の書き加えなど、大規模な再創作を行いました。これらの変更の中には、左手編曲だからこそそうしたであろうものと(調性の変更に多い)、もっと創作的な意図で変更したであろうものとが両方含まれています。半音階的な色彩など、ゴドフスキーのオリジナル作品でも頻繁に聴かれるサウンドが多くの編曲で聴かれます。運指・ペダリングはゴドフスキー自身によって付けられました。

イシドール・フィリップはこの作品について「考えられるあらゆるリズムの組み合わせが詰め込まれており、現代ピアニズムに多大な影響を与えるだろう」と評しています。

 

左手独奏版 収録曲一覧

Study No. 原曲 調性(ゴドフスキー版)
No.2 Op.10-1 変ニ長調
No.3 Op.10-2 イ短調
No.5 Op.10-3「別れ」 変ニ長調
No.6 Op.10-4 嬰ハ短調
No.12a Op.10-5「黒鍵」 変ト長調
No.13 Op.10-6 変ホ短調
No.15a Op.10-7 変ホ長調
No.16a Op.10-8 変ト長調
No.18a Op.10-9 嬰ヘ短調
No.20 Op.10-10 変イ長調
No.21 Op.10-11 イ長調
No.22 Op.10-12「革命」 嬰ハ短調
No.23 Op.25-1「エオリアンハープ」 変イ長調
No.28a Op.25-2 嬰ヘ短調
No.30 Op.25-3 ヘ長調
No.31 Op.25-4 イ短調
No.35 Op.25-5 変ロ短調
No.40 Op.25-9「蝶々」 変ト長調
No.41 Op.25-10 ロ短調
No.43 Op.25-12「大洋」 嬰ハ短調
No.44 3つの新しいエチュード No.1 ヘ短調
No.45a 3つの新しいエチュード No.2 変ニ長調

 

比較的取り組みやすい作品

全曲を通じて難度は高いものの、比較的取り組みやすい作品として、No.5(Op.10-3 別れ)、No.13(Op.10-6)、No.35(Op.25-5)、No.44(3つの新しいエチュード No.1)などが挙げられます。

 

‣ Greulich, F. W.(1796-1837) グロイリッヒ

 

カール・ヴィルヘルム・グロイリッヒ(1796–1837)はベルリンで活躍したピアノ教育者・作曲家です。師はルートヴィヒ・ベルガーで、左手音楽への関心を師から受け継いだ可能性が指摘されています。

 

· Etude in B-flat minor “Con brio e mobilità” from Etudes de Salon pour la main gauche seule, Op.19

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-2小節)

グロイリッヒ「左手のためのサロン練習曲集 Op.19 より h-moll "Con brio e mobilità"」1-2小節

邦題:左手のためのサロン練習曲集 Op.19 より h-moll “Con brio e mobilità”

 

作曲年:不明
演奏時間:約1分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:レヴェンタールのアンソロジー、ケーラー Op.302 他

 

速いテンポで16分音符が絶え間なく流れる無窮動的な練習曲。

技術的な課題としては、速いテンポの中で、1と3の指によるオクターブの連続、10度音程の跳躍が連続する箇所があり、手の柔軟性が問われます。後半は強弱記号が比較的細かく書き込まれており、遠近感の変化を丁寧にコントロールする表現力も求められます。

 

‣ Hartsell, Randall ランドール・ハートセル

 

ランドール・ハートセルはノースカロライナ州出身の作曲家です。12歳でピアノを始め、高校時代にはすでに作曲を手掛けていました。イースト・カロライナ大学でピアノ演奏とピアノ教授法を学び、1980年代初頭にリン・フリーマン・オルソンとの出会いをきっかけに自作の楽譜を出版社へ送るようになり、1990年にアルフレッド社から「Something Special」シリーズを刊行しました。以後、多くの作品集・独奏曲を発表しています。

 

· Spanish Sunset(for Right Hand Alone)

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

出版:Alfred Publishing Co., Inc., 2003年(Signature Series)、全2ページ
演奏時間:約1分40秒
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

作品の背景

アルフレッド社のSignature Seriesより刊行された、右手のための小品です。運指とペダリングが記譜されており、右手のために書かれた作品ですが、左手のみでの演奏も可能です。表紙には広々とした屋外の風景写真が用いられているので、タイトルの情景を思い浮かべながら演奏を楽しむのはどうでしょうか。

 

音楽的な特徴

大譜表で記譜されていますが、下段(低音部譜表)はほとんど使われておらず、実質的に上段のみで音楽が進む書き方になっているのが特徴の一つと言えるでしょう。

使われている音自体はシンプルですが、強弱記号は比較的細かく書き込まれており、また、レガートで歌う部分と和音の連打による部分とのニュアンスの対比に味わいがある作品です。序奏の直後には「bring out melody(メロディを浮き立たせて)」という指示があり、埋もれがちな旋律の音を意識的に強調するよう演奏者に求めています。

 

‣ Hindemith, Paul(1895-1963) ヒンデミット

 

パウル・ヒンデミット(1895年ハーナウ生まれ、1963年フランクフルト没)はドイツを代表する作曲家の一人です。1921年にシュトゥットガルトとドナウエッシンゲンで自作の一幕オペラを初演して注目を集め、急進的な前衛作曲家として頭角を現しました。1922年にはドナウエッシンゲンの室内楽演奏会の運営委員に選出され、当時の音楽の動向に対して強い影響力を持つようになります。Schott社との専属契約を結んだのもこの時期で、フランクフルト歌劇場のコンサートマスター職を辞して自由な創作活動に専念しました。Op.29が書かれた1922〜23年は、まさにこうした転換点の直中にあたります。

 

· Klaviermusik(Klavier: linke Hand)mit Orchester, Op.29

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のためのピアノと管弦楽のための協奏曲 Op.29(管弦楽付きピアノ音楽)

 

作曲年:1922–1923年(第1楽章:1923年5月24日完成)
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(協奏曲)
献呈:パウル・ヴィトゲンシュタイン

 

構成(全4楽章)

I. Einleitung, Mäßige schnelle Halbe
II. Sehr lebhafte Halbe
III. Trio, Basso ostinato
IV. Finale, Bewegte Halbe

 

作品の成立と波乱の経緯

1922年、ヴィトゲンシュタインからの委嘱によって書かれた左手と管弦楽のための協奏曲です。ヒンデミットは1923年4〜5月にかけて全4楽章を完成させ、ヴィトゲンシュタインに送り届けました。楽譜を添えた書簡の中でヒンデミットは「最初は少し戸惑われるかもしれませんが、シンプルで完全に問題のない作品です。時間が経てばきっと気に入っていただけると確信しています」と記しています。

しかしヴィトゲンシュタインはこの作品を演奏しませんでした。彼は生涯にわたって独占的な演奏権を保持し、他のピアニストへの譲渡も出版も拒否し続けました。このためヒンデミット自身の作品目録にすら1925年まで記載が遅れ、楽譜は長らく日の目を見ませんでした。

2002年にヴィトゲンシュタインの遺産が調査された際、写譜による一部の資料がヒンデミット財団(スイス)に保管されていたことが判明しました。自筆譜のピアノ独奏部分は失われていましたが、保存されていたスケッチや資料をもとに楽譜が校訂・復元され、作曲から81年を経た2006年にEulenburg社から初めて出版されています。

 

音楽について

4楽章構成で、各楽章は異なる速度標語と性格を持ちます。第3楽章はトリオとバッソ・オスティナートの二部からなり、変奏曲的な性格を帯びています。ヒンデミット自身が「シンプルで完全に問題のない作品」と述べたように、同時代の前衛的な作風と比べると比較的聴きやすく、当時のヒンデミットの語法の一断面を示していると言えるでしょう。最終楽章の締めくくりが最も分かりやすくなるという、一種のサプライズさえ感じられます。

 

‣ Höffer, Paul(1895–1949) パウル・ヘッファー

 

パウル・ヘッファー(1895年12月21日バルメン=エルバーフェルト生まれ、1949年8月31日ベルリン没)はドイツの作曲家・音楽教育者です。ケルン音楽院でヴァルター・ゲオルギイにピアノを、フランツ・シュレーカーに作曲を師事しました。その後ベルリンで活動を続け、1923年からベルリン高等音楽院で教えました。オペラ、オラトリオ、管弦楽曲、室内楽、ピアノ曲、声楽曲など幅広いジャンルを手がけており、作風はヒンデミットに近いとされています。

 

· Zwei Etüden from 12 Klavierstücke

 

邦題:12のピアノ小品 より 左手のための2つの練習曲

 

作曲年:1941/42年
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか

 

第1番 Largo

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ヘッファー「12のピアノ小品 より 左手のための2つの練習曲 第1番 Largo」1-4小節

演奏時間:約6分
難易度:ツェルニー40番中盤程度

和音主体の書法による重々しい曲で、和音演奏とメロディのピックアップが主な練習課題。低音に繰り返し現れるリズム素材とオルゲルプンクトが「運命のノック」を思わせる印象を与え、J.S.バッハの「イタリア協奏曲 BWV971 第2楽章」にも通じる雰囲気を持っています。

 

第2番 Allegro vivace

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

ヘッファー「12のピアノ小品 より 左手のための2つの練習曲 第2番 Allegro vivace」1-3小節

演奏時間:約2分30秒
難易度:ツェルニー40番中盤程度

跳躍と高速連符の連続が練習課題。第1番とは対照的な諧謔的な性格を持っています。d-mollの主和音による力強い終結で締めくくられます。なお、難しい跳躍が続く箇所にはossiaが示されており、演奏上の選択肢が与えられているので、学習段階に応じて決定するといいでしょう。

 

‣ Hofmann, Josef Casimir(1876-1957) ヨゼフ・ホフマン

 

ヨゼフ・ホフマン(1876年クラクフ近郊ポドゴルジェ生まれ、1957年ロサンゼルス没)はポーランド系アメリカ人のピアニスト・作曲家・発明家です。幼少期から神童として名をはせ、アントン・ルービンシュタインが個人教授した唯一の弟子となりました。20世紀を代表する大ピアニストのひとりとして長年にわたり演奏活動を続け、特にショパンの演奏で高い評価を得ています。作曲家としても100曲以上の作品を残しており、多くは「ミヒャエル・ドヴォルスキー」という筆名で出版されています。また70以上の特許を持つ発明家でもありました。

 

· Etude for the Left Hand in C major, Op.32

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-3小節)

ホフマン「左手のための練習曲 ハ長調 Op.32」1-3小節

邦題:左手のための練習曲 ハ長調 Op.32

 

作曲年:不明
演奏時間:約3分50秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

Andanteの柔らかい曲想から、スケルツォ的性格のマーチへと向かう構成です。半音階的な和声や広い音域を使用した充実した一作です。ホフマンは多くの作品で筆名を使用しましたが、この作品は自身の名前で出版されました。ホフマンによるピアノロールの演奏記録も残っています。

録音機会は多くない作品ですが、ピアニストArtem Yasynskyyの録音音源「Hofmann: Piano Works」などに収録されています。

 

この作品をさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くヨゼフ・ホフマン:ルービンシュタイン唯一の弟子が遺した片手の練習曲

 

‣ Hyde, Miriam(1913-2005) ミリアム・ハイド

 

ミリアム・ハイド(1913年アデレード生まれ、2005年に没)は、20世紀オーストラリアを代表するピアニスト・作曲家の一人です。ロンドンの王立音楽大学に留学し、自作のピアノ協奏曲でBBCなど主要オーケストラと共演しました。帰国後はシドニーを拠点に演奏・作曲・教育の各方面で活躍し、独奏曲から管弦楽曲、歌曲まで幅広い作品を残しています。1982年に左腕を骨折した経験があり、これがきっかけで右手一本のための「3つの練習曲」を書くなど、隻手のピアノ作品への関心は自身の経験とも結びついていました。

 

· Concert Waltz, for Left Hand

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のための演奏会用ワルツ

 

作曲年:1977年
出版:Wollongong: Wirripang Pty Ltd, 2012年8月初版(校訂:クリスティン・エドワーズ)
演奏時間:約1分40秒
難易度:ツェルニー30番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

作品の背景

本作は、自動車事故で右手を負傷した教え子のために書かれた作品です。作曲者自身の記述によれば、1977年8月11日、リーズのヘディングリーで行われた第4次テストクリケットのテレビ中継を見ながら、その昼休みの間に書き上げられたといい、この試合でイングランドの打者ボイコットが自身通算100本目のセンチュリー(100得点)を記録したことも書き添えられています。

 

音楽的な特徴

Allegro con brioの快活なテンポを持ちながら、どこか諧謔的なユーモアの漂う曲想が特徴です。「or, for small hands:」と記された代替パターンが用意されている箇所があり、手があまり大きくない奏者にも配慮した書き方がされています。

 

· Left Hand Study

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のための練習曲

 

作曲年:1985年
出版:Wollongong: Wirripang Pty Ltd, 2013年10月初版(校訂:クリスティン・エドワーズ)
演奏時間:約1分50秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:メロディ・イェーマンズ(Melody Yeomans)のために

 

作品の背景

1985年、右手首を骨折した教え子メロディ・イェーマンズのために、ハイドは左手のための小品を2曲書きました。本作はそのうちの1曲で、もう1曲「Melody」は2002年にAMEB(オーストラリア音楽検定協会)第4級の教本シリーズ15に収録される形で出版されています。

 

音楽的な特徴

Allegro con brioで、基本的には単音の連続によるパッセージワークで構成されていますが、部分的に控えめな和音が添えられた箇所もあります。曲中には増2度進行を用いた箇所が複数含まれており、これが本作のサウンド面での特徴の一つと言えるでしょう。聴けば練習曲であることがすぐに分かる音の使い方をしていますが、同時に一つの楽曲としてのまとまりも感じさせる作りです。終結和音には()による代替表記が与えられており、手があまり大きくない奏者への選択肢も用意されています。

 

► 終わりに

 

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