左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 G-I

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 G-I

► はじめに

 

本ページでは、G-Iで始まる作曲家の左手ピアノ作品をまとめています。作曲作品・編曲作品・教本・室内楽・協奏曲などを、作曲家ごとに整理しています。

作品を探す際は、以下のアルファベット別ページもご利用ください。

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別

 

► 作曲家別 G-I

‣ Gabrilovich, Ossip Solomonovich(1878-1936) ガブリロヴィチ

 

オシップ・ガブリロヴィチ(1878年サンクトペテルブルク生まれ、1936年デトロイト没)はロシア出身のアメリカのピアニスト・指揮者・作曲家です。サンクトペテルブルク音楽院でアントン・ルービンシュタインにピアノを、リャードフやグラズノフらに作曲を学んでルビンシテイン賞を受賞したのち、ウィーンに渡りレシェティツキのもとでさらに研鑽を積みました。

1900年のカーネギーホール・デビューを皮切りにアメリカでも高い評価を得た演奏活動を展開する一方、1910年代にはミュンヘンのコンツェルトフェライン管弦楽団(後のミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団)の指揮者を務めています。第一次世界大戦の勃発で敵性外国人として拘束された経験を経て渡米し、1918年からはデトロイト交響楽団の初代常任指揮者としてオーケストラの発展に尽力しました。

作曲家としては大規模な作品よりも、自身の演奏活動のために書かれた小品を中心に手掛けています。

 

· Étude for the Left Hand, Op.12 No.2 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-2小節)

ガブリロヴィッチ「左手のための練習曲 Op.12-2(《2つのピアノ小品》Op.12 より)」1-2小節

邦題:左手のための練習曲 Op.12-2(《2つのピアノ小品》Op.12 より)

 

出版:1917年
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:レオポルド・ゴドフスキーに献呈

 

「2つのピアノ小品 Op.12」の第2曲として書かれた演奏会用エチュード。

メロディにあたる音符には大きな符頭、それ以外の音符には小さな符頭が用いられており、主要メロディを視覚的に区別しやすい工夫が施されている点が、記譜上の特徴と言えるでしょう。

特に前半の大部分では、旋律がオクターヴ・ユニゾンによって補強される書き方になっています。全体を通じて高音域はほとんど用いられず、中低音域を中心とした重厚な響きが支配的で、曲想にもどこか重々しさを感じずにはいられません。

シンプルな旋律線を、アルペジオや随所に織り交ぜられた半音階的な動きを持つ伴奏で彩る書法は、ゴドフスキー「ショパンのエチュードによる練習曲 より No.16 Op.10-6」の編曲を思わせるところがあります。

 

‣ Ganz, Rudolph(1877-1972) ルドルフ・ガンツ

 

ルドルフ・ガンツ(1877年2月24日チューリッヒ生まれ、1972年8月2日シカゴ没)はスイス系アメリカ人のピアニスト・指揮者・作曲家・教育者です。チューリッヒ、ローザンヌ、ストラスブールで音楽を学んだ後、ベルリンでブゾーニにピアノを師事しました。

1899年にベルリン・フィルとのデビューを飾り、翌1900年にアメリカへ渡ってシカゴ音楽大学でピアノ科を率いました。1905年には同地でラヴェルの音楽をアメリカで初めて演奏した人物としても知られています。1921年から1927年はセントルイス交響楽団の首席指揮者を務め、1934年からはシカゴ音楽大学の学長として1954年まで在任しました。

バルトーク、ラヴェル、ヴァンサン・ダンディらの作品を北米に積極的に紹介したことでも評価されています。

 

· Capriccio No.1 for the left hand alone, Op.26 No.1 [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手独奏のためのカプリッチョ 第1番 Op.26 No.1

 

出版年:1917年
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:Mollie Margolies

 

ガヴォット的な三部形式(G-dur—e-moll—G-dur)をとる小品です。両端のセクションは活き活きとした楽想ですが、中間部はテンポが落ち着き、広い音域のアルペジオに包まれた内省的な旋律が現れます。

Op.26は、No.1(左手)とNo.2(右手)がペアをなす作品として同時に出版されており、興味深い試みと言えるでしょう。

 

‣ Godowsky, Leopold(1870-1938) ゴドフスキー

 

レオポルド・ゴドフスキー(1870年ヴィルナ近郊ソシュリ生まれ、1938年ニューヨーク没)はリトアニア出身のアメリカのピアニスト・作曲家です。同時代のピアニストたちから神話的な存在として語られ、その演奏技術はホフマンやラフマニノフをも「神業」と言わしめました。

演奏会での知名度に反して多くの作品を残しており、中でも「ショパンのエチュードによる練習曲」は、ピアノ音楽史上難易度の高い作品群として現在も知られています。1930年に脳卒中で右手が麻痺したことは、左手音楽を大量に書き続けた直後の出来事として、皮肉な巡り合わせとして語り継がれています。

 

ゴドフスキーについてさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くゴドフスキー:「左手の使徒」が遺した作品群
【ピアノ】なぜ、ゴドフスキーは左手のピアニストにならなかったのか
【ピアノ】ゴドフスキー左手オリジナル作品入門:最初に挑戦したいおすすめ3曲
【ピアノ】ニコラス・ロス「Godowsky: Apostle of the Left Hand」レビュー

 

· Studies on Chopin’s Etudes — for the left hand alone [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、No.22 Op.10-12 革命 1-2小節)

ゴドフスキー「ショパンのエチュードによる練習曲 より No.22 Op.10-12 革命」1-2小節

邦題:ショパンのエチュードによる練習曲 より 左手独奏編曲 全22曲

 

出版年:1894〜1914年出版
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)

 

作品の概要

全53曲からなる「ショパンのエチュードによる練習曲」のうち、22曲が左手独奏のために書かれています。

原曲のショパンのエチュードは両手のための作品ですが、ゴドフスキーはそれを左手のみで再現するに留まらず、調性の変更、和声の変更、内声部の追加、対位的な声部の書き加えなど、大規模な再創作を行いました。これらの変更の中には、左手編曲だからこそそうしたであろうものと(調性の変更に多い)、もっと創作的な意図で変更したであろうものとが両方含まれています。半音階的な色彩など、ゴドフスキーのオリジナル作品でも頻繁に聴かれるサウンドが多くの編曲で聴かれます。運指・ペダリングはゴドフスキー自身によって付けられました。

イシドール・フィリップはこの作品について「考えられるあらゆるリズムの組み合わせが詰め込まれており、現代ピアニズムに多大な影響を与えるだろう」と評しています。

なお、この左手独奏版22曲のうち最初に録音が残されたのは第22番(Op.10-12「革命」の編曲)で、1912年、ショパン弾きとして知られたヴラディーミル・ド・パハマンによるものでした(【ピアノ】左手音楽から読み解くヴラディーミル・ド・パハマン)。

 

左手独奏版 収録曲一覧

Study No. 原曲 調性(ゴドフスキー版)
No.2 Op.10-1 変ニ長調
No.3 Op.10-2 イ短調
No.5 Op.10-3「別れ」 変ニ長調
No.6 Op.10-4 嬰ハ短調
No.12a Op.10-5「黒鍵」 変ト長調
No.13 Op.10-6 変ホ短調
No.15a Op.10-7 変ホ長調
No.16a Op.10-8 変ト長調
No.18a Op.10-9 嬰ヘ短調
No.20 Op.10-10 変イ長調
No.21 Op.10-11 イ長調
No.22 Op.10-12「革命」 嬰ハ短調
No.23 Op.25-1「エオリアンハープ」 変イ長調
No.28a Op.25-2 嬰ヘ短調
No.30 Op.25-3 ヘ長調
No.31 Op.25-4 イ短調
No.35 Op.25-5 変ロ短調
No.40 Op.25-9「蝶々」 変ト長調
No.41 Op.25-10 ロ短調
No.43 Op.25-12「大洋」 嬰ハ短調
No.44 3つの新しいエチュード No.1 ヘ短調
No.45a 3つの新しいエチュード No.2 変ニ長調

 

比較的取り組みやすい作品

全曲を通じて難度は高いものの、比較的取り組みやすい作品として、No.5(Op.10-3 別れ)、No.13(Op.10-6)、No.35(Op.25-5)、No.44(3つの新しいエチュード No.1)などが挙げられます。

 

· Symphonic Metamorphosis of the Schatz-Walzer Themes from “The Gypsy Baron” [LH]

 

※本楽曲自体の著作権は消滅していますが、手元の楽譜(サパートン校訂版)における校訂・編集部分の著作権が存続しているため、譜例の掲載は見送っております。

邦題:宝石のワルツの主題による交響的変容

 

原曲:J. シュトラウス2世 / 歌劇《ジプシー男爵》より「宝石のワルツ」
出版年:1941年
校訂:David Saperton(ゴドフスキーの娘婿。厚めのオッシアを追加)
演奏時間:約10分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度(全左手作品の中でも難曲として知られる)
分類:編曲作品(独奏)

 

本作は1928年5月に書かれた作品で、ゴドフスキーが代表作「ショパンのエチュードによる練習曲」以降、約15年間新たな左手のための編曲を手がけていなかった時期における、数少ない例外の一つにあたります。

もとはパウル・ヴィトゲンシュタインのために書かれた作品で、彼が3年間の独占使用権を得ていたにもかかわらず、結局ヴィトゲンシュタイン自身がこの曲を演奏することはなく、ゴドフスキーはのちにサイモン・バレアに献呈先を改めました。ゴドフスキー自身、妻への手紙の中で、この作品の出来映えについて、ヴィトゲンシュタインには少々もったいないほどの音楽だという趣旨のことを述べていたとも伝えられています。出版はゴドフスキーの死後まで持ち越され、1941年、娘婿にあたるピアニストのデイヴィッド・サパートンの校訂によって初めて刊行されました。

ヨハン・シュトラウス2世の音楽に基づくパラフレーズとしてはゴドフスキーにとって4作目にあたります。

7回にわたるテンポ変化によってワルツに次々と変化が与えられる構成で、左手独奏作品の中では、難易度・規模ともに充実した名作と言えるでしょう。

 

· Waltz-Poems for the Left Hand Alone [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ゴドフスキー「左手のための6つのワルツポエム より 第1曲」1-4小節

邦題:左手のための6つのワルツポエム

 

出版年:1930年(ゴドフスキー自身による序文は1937年1月1日付で追加収録)
難易度:ツェルニー40番修了程度
演奏時間:
  No.1 Allegretto amabile 約2分
  No.2 Allegretto grazioso 約4分
  No.3 Allegretto amabile 約4分30秒
  No.4 Moderato, con tenerezza e grazioso 約2分10秒
  No.5 Moderato 約3分40秒
  No.6 Con fuoco 約3分20秒
 全曲合計:約20分
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:Carl Engel

 

サロン風の小品集。前後して書かれたシュトラウスの主題による作品とは異なり、本作は既存の旋律を借りることなくゴドフスキー自身の楽想で書かれています。特に第1番と第4番は、正しい弾き方をすればピアノがよく鳴るように書かれており、コンパクトながら完成度の高い作品と言えるでしょう。

全曲を通じて譜読み自体のハードルはさほど高くなく、コンパクトにまとめられているため、ゴドフスキーの左手作品に初めて取り組む際の入門としても適した曲集です。

 

· Prelude and Fugue for the Left Hand Alone(B.A.C.H.) [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-2小節)

ゴドフスキー「左手のための前奏曲とフーガ(B.A.C.H.)」1-2小節

邦題:左手のための前奏曲とフーガ(B.A.C.H.)

 

作曲年:1929年
出版年:1930年
演奏時間:約5分30秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:アーサー・ローサー

 

ゴドフスキーにとって最初の左手独奏用オリジナル作品にあたるのが本作です。無窮動風の前奏曲に続いて、B-A-C-Hの音型を主題とするフーガが置かれています。前奏曲の終わりにフーガ主題の先取りが、フーガの終わりに前奏曲の回想が、それぞれさりげなく織り込まれているのも、この作品の粋な仕掛けの一つと言えるでしょう。

曲全体を通してオルゲルプンクト(保続音)が多用されています。前奏曲の締めくくり方からは、ラフマニノフの「前奏曲 ト短調 Op.23-5」の締めくくりを思い出さずにはいられません。

バロック時代の前奏曲とフーガに通じる楽想面での共通点は多く見られるものの、本作では、ゴドフスキー独自の対位法的・半音階的書法に加え、広い音域とダイナミクスの幅の大きさがあります。こういった部分が本作の聴きどころであり、演奏するうえでのポイントにもなっています。

 

· Suite for the Left Hand Alone [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第6曲 1-2小節)

ゴドフスキー「左手のための組曲 より 第6曲」1-2小節

邦題:左手のための組曲

 

作曲年:1929年頃(マジョルカ島パルマ滞在中に着想、資料により1926年作曲との記載もあり)
出版年:1930年
演奏時間:
  I. Allemande 約4分10秒
  II. Courante 約5分30秒
  III. Gavotte 約4分30秒
  IV. Sarabande 約4分
  V. Bourrée 約3分
  VI. Sicilienne 約4分50秒
  VII. Menuet 約6分
  VIII. Gigue 約3分20秒
 全曲合計:約35分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:イシドール・フィリップ

 

この作品は、マジョルカ島パルマに滞在していた頃に作曲し、最終的に8曲からなる組曲としてまとめ上げられました。ゴドフスキー自身、ロココ風の形式を借りながら中身は従来にない新しいものだと自負していたようで、重要な作品と考えていたと伝えられています。

アルマンド、クーラント、ガヴォット、サラバンド、ブーレ、シシリエンヌ、メヌエット、ジーグという8つの舞曲からなり、いずれも18世紀の組曲形式を下敷きにしながら、そこに彼独特の重厚な対位法と和声を凝縮させた内容になっています。

第7曲「メヌエット」と第8曲「ジーグ」については、のちに作曲家自身により両手用にも編曲されました。

 

· Impromptu [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-2小節)

ゴドフスキー「左手のための即興曲」1-2小節

邦題:左手のための即興曲

 

作曲年:1920年
出版年:1930年
演奏時間:約2分10秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ヨーゼフ・レヴィーン、エミール・R・ブランシェ

 

本作は1920年の作曲で、1930年前後に集中して出版された一連の左手作品群の中では、比較的早い時期に書かれました。

断片的なメロディをつなぎ合わせるようにして曲が組み立てられており、誰の耳にも分かりやすいメロディというわけではないものの、どこか情熱的な性格を感じさせる音楽になっています。8分音符が淡々と連なっていくシンプルな構造を持つ一方、臨時記号が非常に多く用いられているのも特徴の一つです。

 

· Capriccio(Patetico) [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-2小節)

ゴドフスキー「カプリッチョ」1-2小節

邦題:カプリッチョ(パテティコ)

 

出版年:1931年
演奏時間:約4分10秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:アーネスト・ハッチソン、エミール・R・ブランシェ

 

テクニックの多彩さやリズムの生命力に富んだ作品で、かなりの難度を持つ一曲。

同音連打が印象的に用いられている作品で、しかもその連打は一様ではなく、16分音符の3連符での連打、16分音符での連打、8分音符での連打、4分音符での連打というように、様々な音価・形で曲中に姿を見せます。曲の終わりは、それまでの活発さとは対照的に、非常に静かに閉じられます。

 

· Intermezzo(Malinconico) [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

ゴドフスキー「間奏曲(マリンコニコ)」1-3小節

邦題:間奏曲(マリンコニコ)

 

出版年:1930年
演奏時間:約3分10秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:アレクサンダー・ジロティ、エミール・R・ブランシェ

 

その名の通り、どこか物憂げな(マリンコニコ)性格を持つインテルメッツォです。随所に用いられるスタッカートの表情に独特の味わいがあり、単なる哀愁に留まらない、しゃれた雰囲気を醸し出しています。

ゴドフスキーの左手作品の中では比較的取り組みやすい部類に入る一曲で、彼の左手レパートリーに触れる際の入り口としても適していると言えるでしょう。

 

· Elegy [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1小節目)

ゴドフスキー「左手のための悲歌」1小節目

邦題:左手のための悲歌

 

出版:1931年
演奏時間:約3分10秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ゴットフリート・ガルストン、エミール・R・ブランシェ

 

ゴドフスキーの左手作品の中では比較的取り組みやすい部類に入る一曲です。レイモンド・レヴェンタール編のアンソロジーに収録されたこともあり、ゴドフスキーの数ある左手オリジナル作品の中でも比較的よく知られる存在になりました。

冒頭には「mesto(悲しげに)」と記されていますが、単純な悲しみというよりも、もう少し遠くを見つめるような、奥行きのある表情を持った音楽です。音域は中〜低音域が中心で、高音部譜表の五線を上に飛び出すような箇所は、曲の終わり近くにわずかに現れるのみです。

 

· Etude Macabre [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-2小節)

ゴドフスキー「エチュード・マカーブル」1-2小節 B

邦題:エチュード・マカーブル

 

作曲年:1929年
出版年:1930年頃
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:エミール・R・ブランシェ

 

もとは「Wailing Winds(泣き叫ぶ風)」という題名で構想されていた作品で、のちに現在の「Etude Macabre」という題に改められました。

1段の譜表に書かれた無窮動の練習曲で、書法としては、ゴドフスキーが編曲した「ショパンのエチュードによる練習曲 より No.2, Op.10-1」と近い性格を持つ作品です。

音が絶え間なく連続していく中に、アクセントの位置をあえてずらす仕掛けが随所に組み込まれています。この「隠された突っかかり」とでも言うべき仕掛けによって、無窮動の中でも作曲上のメリハリが生み出されているのが本作の面白さと言えるでしょう。

 

· Meditation [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-2小節)

ゴドフスキー「左手のための瞑想曲」1-2小節

邦題:左手のための瞑想曲

 

出版:1930年頃
演奏時間:約3分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ドミトリ・ティオムキン、エミール・R・ブランシェ

 

ゴドフスキーの左手作品の中では比較的取り組みやすい一曲です。レイモンド・レヴェンタール編のアンソロジーに収録されたことで、ゴドフスキーの数ある左手オリジナル作品の中でも比較的よく知られる存在になりました。

半音階的な書法による伴奏とともに、穏やかな旋律が紡がれていきます。ただし、その旋律自体にはこれといった際立った個性が少なく、人によってはやや掴みどころのなさを感じる部分もあるかもしれません。

 

‣ Golub, Peter(1952- ) ピーター・ゴルブ

· Six Pieces [RH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:6つの小品

 

作曲年:1980年頃
演奏時間:全曲合計 約5分50秒
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ライオネル・ノヴァクのために

 

構成(全6曲)

1. Rhapsodically
2. Smoothly
3. Sprightly
4. Ringing
5. Majestically
6. Playful

 

作品の背景

ノヴァクの録音に寄せた解説の中で作曲者は、本作をピアノという楽器そのものの音響を探る試みだったと位置づけ、優れた奏者の一つの手が、あたかも二つの手であるかのように響くことを目指したと述べています。

各曲とも2ページ程度にまとめられたコンパクトな仕上がりです。

 

‣ Greulich, F. W.(1796-1837) グロイリッヒ

 

カール・ヴィルヘルム・グロイリッヒ(1796–1837)はベルリンで活躍したピアノ教育者・作曲家です。師はルートヴィヒ・ベルガーで、左手音楽への関心を師から受け継いだ可能性が指摘されています。

 

· Etude in B-flat minor “Con brio e mobilità” from Etudes de Salon pour la main gauche seule, Op.19 [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-2小節)

グロイリッヒ「左手のためのサロン練習曲集 Op.19 より h-moll "Con brio e mobilità"」1-2小節

邦題:左手のためのサロン練習曲集 Op.19 より h-moll “Con brio e mobilità”

 

作曲年:不明
演奏時間:約1分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:レヴェンタールのアンソロジー、ケーラー Op.302 他

 

速いテンポで16分音符が絶え間なく流れる無窮動的な練習曲。

技術的な課題としては、速いテンポの中で、1と3の指によるオクターブの連続、10度音程の跳躍が連続する箇所があり、手の柔軟性が問われます。後半は強弱記号が比較的細かく書き込まれており、遠近感の変化を丁寧にコントロールする表現力も求められます。

 

‣ Hartsell, Randall ランドール・ハートセル

 

ランドール・ハートセルはノースカロライナ州出身の作曲家です。12歳でピアノを始め、高校時代にはすでに作曲を手掛けていました。イースト・カロライナ大学でピアノ演奏とピアノ教授法を学び、1980年代初頭にリン・フリーマン・オルソンとの出会いをきっかけに自作の楽譜を出版社へ送るようになり、1990年にアルフレッド社から「Something Special」シリーズを刊行しました。以後、多くの作品集・独奏曲を発表しています。

 

· Spanish Sunset(for Right Hand Alone) [RH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:スペインの夕暮れ(右手のための)

 

出版:Alfred Publishing Co., Inc., 2003年(Signature Series)、全2ページ
演奏時間:約1分40秒
難易度:ブルグミュラー25の練習曲中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

作品の背景

アルフレッド社のSignature Seriesより刊行された、右手のための小品です。運指とペダリングが記譜されており、右手のために書かれた作品ですが、左手のみでの演奏も可能です。表紙には広々とした屋外の風景写真が用いられているので、タイトルの情景を思い浮かべながら演奏を楽しむのはどうでしょうか。

 

音楽的な特徴

大譜表で記譜されていますが、下段(低音部譜表)はほとんど使われておらず、実質的に上段のみで音楽が進む書き方になっているのが特徴の一つと言えるでしょう。

使われている音自体はシンプルですが、強弱記号は比較的細かく書き込まれており、また、レガートで歌う部分と和音の連打による部分とのニュアンスの対比に味わいがある作品です。序奏の直後には「bring out melody(メロディを浮き立たせて)」という指示があり、埋もれがちな旋律の音を意識的に強調するよう演奏者に求めています。

 

‣ Hayashi, Hikaru(1931-2012) 林光

 

林光は1931年東京生まれ、2012年に没した作曲家です。1953年に間宮芳生・外山雄三とともに「山羊の会」を結成、日本の国民音楽の発展を目指して本格的な作曲活動を開始しました。同年、《交響曲 ト調》で芸術祭賞を受賞したのを皮切りに、《オーケストラのための変奏曲》による尾高賞、映画『裸の島』(新藤兼人監督)の音楽によるモスクワ映画祭作曲賞、ヴィオラ協奏曲《悲歌》による尾高賞、オペラ《吾輩は猫である》によるサントリー音楽賞など、数々の賞を受けています。

合唱組曲「原爆小景」に代表されるように、社会的なメッセージを込めた作品を多く手がける一方、日本語と音楽の自然な結びつきを追求し、1975年からはオペラシアターこんにゃく座の座付作曲家・芸術監督として、「セロ弾きのゴーシュ」「森は生きている」「変身」など数多くの創作オペラを世に送り出しました。

 

· Floral Book – Preludes for piano(left hand) [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:花の図鑑・前奏曲集 ピアノ(左手)のために

 

作曲年:2005年(6月~8月にかけて作曲)
初演:2005年10月2日、東京文化会館小ホール(舘野泉リサイタル)
演奏時間:全曲合計 20分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:舘野泉

 

構成(全8曲)

1. ヒメエゾコザクラ(Rhodohypoxis baurii) 約3分10秒
2. イヌタデ(Persicaria longiseta) 約2分15秒
3. イヌノフグリ(Veronica didyma) 約2分50秒
4. サンザシ(Crataegus cuneta) 約2分20秒
5. ハス(Nelumbo nucifera) 約2分
6. ツリフネソウ(Impatiens textori) 約1分50秒
7. フキ(Petasites japonicus) 約2分30秒
8. ノイバラ(Rosa multiflora) 約2分30秒

 

作品の背景

本作は、古今の詩人たちによって歌われてきた花々を題材にした、8曲からなる小さな前奏曲集です。各曲の冒頭には、その花にまつわる詩や歌――秋山清、中野重治、与謝野晶子、沖縄のわらべ歌、宮沢賢治、中世の「梁塵秘抄」、フランスの詩人ロンサールなど――からの引用を添えた短いエッセイが付されています。ただし作曲者自身が述べているように、これらは花の写生でも詩の音楽的描写でもなく、その光から出発しながらも、5本の指の運動から自然に生まれる音の変化を追うことを心がけて書かれています。

左手のピアニストとして舞台に復帰した舘野泉に捧げられ、初演後半年の間に日本各地20箇所ほどで演奏されました。

 

音楽的な特徴

無調の語法で書かれており、曲によっては小節線を持たないなど、主に20世紀以降の音楽で用いられるようになった自由な記譜が採用されています。各曲にはそれぞれ異なる性格が与えられており、8曲それぞれの個性が曲集全体に多彩な表情を与えています。

 

‣ Helps, Robert(1928-2001) ロバート・ヘルプス

 

ロバート・ヘルプスはアメリカのピアニスト、作曲家です。アビー・ホワイトサイドにピアノを、ロジャー・セッションズに作曲と理論を師事し、カリフォルニア大学バークレー校で学位を取得しました。ニューイングランド音楽院やマンハッタン音楽院など各地でピアノを教え、晩年は南フロリダ大学に在籍しました。他の奏者が手を出さなかった難曲を弾きこなすピアニストとして知られる一方、作曲家としてもグッゲンハイム・フェローシップやフロム財団賞などを受けています。

 

· Music for Left Hand: Three Etudes for Piano Solo

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のための音楽 3つのエチュード

 

作曲年:1975年
出版年:1976年
演奏時間:全曲合計 約8分30秒
分類:オリジナル作品(独奏)

 

構成(全3曲)

第1曲 Andante con moto 献呈:イアン・アンダーウッド
第2曲 Adagio espressivo e rubato 献呈:タイソン・ストリート
第3曲 Allegro brillante 献呈:ルドルフ・コリッシュ

 

作品の背景

右手に不調を抱えていた時期、ヘルプスが自分自身のために書いた作品です。

作曲者自身の言葉によれば、片手用の作品を書く際の音の選び方には独特の難しさがあるといい、単一の手だけでは使える音が少なく音同士が近接しすぎる一方、連弾や2台ピアノでは逆に音が過剰になり響きが濁ってしまう——そのどちらの落とし穴も避けながら、片手の演奏であることを感じさせない音楽を作ることこそが、書き手にとっての挑戦だと述べています。

作曲家自身、3曲それぞれの性格を「高度にテクスチャー的でインプレッショニスティック」(第1曲)、「ヴォーカル的」(第2曲)、「ヴィルトゥオーゾ的——この場合、トッカータ」(第3曲)と特徴づけています。

 

音楽的な特徴

鍵盤の高音域を中心とした書法で、低音域はほとんど用いられません。大きな跳躍や複雑なリズムの組み合わせが要求される、技巧的な演奏会用作品です。第1・2曲には運指の指示がない一方、第3曲にはすべての音に運指が付されています。第3曲冒頭には「Senza or poco Pedal, except where indicated.(指示のある箇所以外は、ペダルを使わないか、ごくわずかにとどめる)」との注記があり、全体を通して作曲者自身による細かな指示が随所に見られます。

 

‣ Henze, Hans Werner(1926-2012) ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ

 

20世紀のドイツの作曲家、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェは、交響曲や協奏曲、オペラといった伝統的な形式を使って、壮大なスケールの楽曲を多数世に送り出しています。

創作の初期段階ではストラヴィンスキーやヒンデミットからの影響がみられ、やがて十二音技法なども試みますが、ルールに盲従することなく彼自身の音楽言語を追求し続けました。1953年、母国ドイツの空気に限界を感じた彼はイタリアへと拠点を移します。この地で、前衛的な作曲技法にヴェルディやベッリーニを思わせるイタリア特有の歌謡性や叙情美を掛け合わせ、オペラ「鹿の王」をはじめとする意欲作を次々に発表。こうして彼独自の音楽スタイルが確固たるものとなりました。

1960年代も後半に入ると、その創作姿勢に劇的な転換が訪れます。新左翼運動やマルクス主義へ深く傾倒し、キューバに渡って教育や指揮活動に取り組むなど、政治へのコミットメントを明確にしました。それに呼応するように、個人の尊厳や自由がいかにして権力や社会からの要請と衝突するかという社会・政治的テーマと正面から向き合い、かつてないほど野心的かつダイナミックな筆致で、自身の音楽へと投影していくようになったのです。

 

· La mano sinistra per pianoforte: Piece for Leon [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のためのピアノ曲(レオンのための小品)

 

作曲年:1988年
出版年:1990年
演奏時間:約3分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:レオン・フライシャー

 

左手演奏でも広く知られるピアニスト、レオン・フライシャーのために書かれた作品です。

小節線を用いず、3段の譜表に書き記された音楽で、厚みのあるクラスター和音の使用などが特徴と言えるでしょう。

無調による作品ですが、同じ音型の繰り返しが随所に用いられているため、無調作品としては比較的聴きやすい音楽となっています。エコーのような効果が時折差し挟まれており、単線的な響きに留まらない、立体的な奥行きを感じさせます。

 

‣ Hindemith, Paul(1895-1963) ヒンデミット

 

パウル・ヒンデミット(1895年ハーナウ生まれ、1963年フランクフルト没)はドイツを代表する作曲家の一人です。1921年にシュトゥットガルトとドナウエッシンゲンで自作の一幕オペラを初演して注目を集め、急進的な前衛作曲家として頭角を現しました。1922年にはドナウエッシンゲンの室内楽演奏会の運営委員に選出され、当時の音楽の動向に対して強い影響力を持つようになります。Schott社との専属契約を結んだのもこの時期で、フランクフルト歌劇場のコンサートマスター職を辞して自由な創作活動に専念しました。Op.29が書かれた1922〜23年は、まさにこうした転換点の直中にあたります。

 

· Klaviermusik(Klavier: linke Hand)mit Orchester, Op.29 [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のためのピアノと管弦楽のための協奏曲 Op.29(管弦楽付きピアノ音楽)

 

作曲年:1922–1923年(第1楽章:1923年5月24日完成)
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(協奏曲)
献呈:パウル・ヴィトゲンシュタイン

 

構成(全4楽章)

I. Einleitung, Mäßige schnelle Halbe
II. Sehr lebhafte Halbe
III. Trio, Basso ostinato
IV. Finale, Bewegte Halbe

 

作品の成立と波乱の経緯

1922年、ヴィトゲンシュタインからの委嘱によって書かれた左手と管弦楽のための協奏曲です。ヒンデミットは1923年4〜5月にかけて全4楽章を完成させ、ヴィトゲンシュタインに送り届けました。楽譜を添えた書簡の中でヒンデミットは「最初は少し戸惑われるかもしれませんが、シンプルで完全に問題のない作品です。時間が経てばきっと気に入っていただけると確信しています」と記しています。

しかしヴィトゲンシュタインはこの作品を演奏しませんでした。彼は生涯にわたって独占的な演奏権を保持し、他のピアニストへの譲渡も出版も拒否し続けました。このためヒンデミット自身の作品目録にすら1925年まで記載が遅れ、楽譜は長らく日の目を見ませんでした。

2002年にヴィトゲンシュタインの遺産が調査された際、写譜による一部の資料がヒンデミット財団(スイス)に保管されていたことが判明しました。自筆譜のピアノ独奏部分は失われていましたが、保存されていたスケッチや資料をもとに楽譜が校訂・復元され、作曲から81年を経た2006年にEulenburg社から初めて出版されています。

 

音楽について

4楽章構成で、各楽章は異なる速度標語と性格を持ちます。第3楽章はトリオとバッソ・オスティナートの二部からなり、変奏曲的な性格を帯びています。ヒンデミット自身が「シンプルで完全に問題のない作品」と述べたように、同時代の前衛的な作風と比べると比較的聴きやすく、当時のヒンデミットの語法の一断面を示していると言えるでしょう。最終楽章の締めくくりが最も分かりやすくなるという、一種のサプライズさえ感じられます。

 

‣ Hochstetter, Cäsar ツェーザル・ホーホシュテッター

 

ツェーザル・ホーホシュテッター(1863年-没年不詳)は、ドイツ出身のユダヤ系音楽家です。オルガニストや作曲家、批評家としてドイツやスイスを拠点に活躍しました。 彼は同時代の音楽家と深い関わりを持っており、特に無名時代のマックス・レーガーの才能をいち早く見出し、世に広めた功績は重要です。また、左手用作品で知られるラインベルガーと親交があったほか、ゲザ・ジチーを称賛する批評も残しています。1940年までダルムシュタットでの居住記録が残っていますが、その後の足跡は謎に包まれています。

 

ホーホシュテッターについてさらに詳しく知る

【ピアノ】片手作品から読み解くツェーザル・ホーホシュテッター:第一次世界大戦の負傷者へ捧げた名曲編曲集

 

· Bach, Johann Sebastian(arr. Hochstetter, Cäsar)/ Präludium. Elegie. Aus dem 2. Teile des Wohltemperierten Klaviers [LH/RH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

バッハ=ホーホシュテッター「平均律クラヴィーア曲集 第2巻 第12番 BWV881 ヘ短調 より プレリュード」1-5小節

邦題:J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第2巻 第12番 BWV881 ヘ短調 より プレリュード」(ホーホシュテッター編、片手のための)

 

出版年:1917年
原曲:Bach, Johann Sebastian / Das wohltemperierte Clavier, 2 teil, 24 Präludien und Fugen  Prelude und Fuge Nr.12 f-moll BWV881  Prelude
編曲:Hochstetter, Cäsar(右手・左手いずれでも演奏可能な編曲)
演奏時間:約4分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品(独奏)
収録:Album für das einhändige Klavierspiel
献呈:Den Verwundeten(第一次世界大戦の負傷者へ)

 

J.S.バッハの原曲プレリュードをおおむね忠実になぞった編曲ですが、音域が下方へ大きく広げられており、原曲には見られないダイナミクスの指示が随所に書き加えられています。したがって、全体としてロマン派的な解釈の色合いが強く感じられる仕上がりになっているのが特徴と言えるでしょう。

曲の最後の2小節には、原曲にはないフェルマータとAdagioのテンポ指示が加えられており、これによってフーガを伴わずこのプレリュード単体で一つの完結した作品として成立させる意図がうかがえます。

 

「Album für das einhändige Klavierspiel」収録作品の運指について

この作品に限らず、曲集「Album für das einhändige Klavierspiel」に収録されている片手作品の運指については、左手で弾く場合の指番号に加え、右手で弾く場合の指番号も併記されています。両方の手での演奏に対応させようとする意図がうかがえます(曲集の序文にもその旨記載あり)。

 

· Chopin, Frédéric(arr. Hochstetter, Cäsar)/ Präludium. Aus Op.28: 24 Präludien (Nr. 4). [LH/RH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ショパン=ホーホシュテッター「プレリュード Op.28-4」1-4小節

邦題:ショパン「プレリュード Op.28-4」(ホーホシュテッター編、片手のための)

 

出版年:1917年
原曲:Chopin, Frédéric / 24 préludes  Prelude No.4 e-moll Op.28-4
編曲:Hochstetter, Cäsar(右手・左手いずれでも演奏可能な編曲)
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー30番修了〜40番入門程度
分類:編曲作品(独奏)
収録:Album für das einhändige Klavierspiel
献呈:Den Verwundeten(第一次世界大戦の負傷者へ)

 

この編曲では、原曲のメロディが1オクターヴ低く移されているうえ、和音伴奏も低音域に密集して配置されているため、全体の響きが原曲よりも重々しい印象を帯びています。メロディよりも高い音域で伴奏部分が鳴らされる場面が多く見られ、最上声部でメロディが歌われる原曲とは異なる響きの構造になっている点が特徴です。

調性・小節数はいずれも原曲から変更されていません。

 

· Chopin, Frédéric(arr. Hochstetter, Cäsar)/ Präludium. Aus Op.28: 24 Präludien (Nr. 6). [LH/RH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ショパン=ホーホシュテッター「プレリュード Op.28-6」(片手のための)1-4小節

邦題:ショパン「プレリュード Op.28-6」(ホーホシュテッター編、片手のための)

 

出版年:1917年
原曲:Chopin, Frederic / 24 préludes Prelude No.6 h-moll Op.28-6
編曲:Hochstetter, Cäsar(右手・左手いずれでも演奏可能な編曲)
演奏時間:約1分50秒
難易度:ツェルニー30番修了〜40番入門程度
分類:編曲作品(独奏)
収録:Album für das einhändige Klavierspiel
献呈:Den Verwundeten(第一次世界大戦の負傷者へ)

 

原曲であるショパンの「プレリュード Op.28-6」は、左手が旋律を担う構成を持つ作品ですが、本編曲はその右手パートの和音を間引くなどの工夫で、左手一本のみでの演奏を可能にしています。調性・小節数とも原曲から変更されていません。ペダリングの指示は、曲頭にcon ped.の意味合いで一度記されているのみに留まり、以降は特に書き込まれていません。

発想標語などの独自の書き加えはなく、音の選び方以外は原曲の姿にかなり近い仕上がりになっているのが大きな特徴です。また、音程の広いアルペッジョを含む箇所もあり、演奏にあたっては一定の手の大きさが必要とされます。

 

· Schumann, Robert(arr. Hochstetter, Cäsar)/ Romanze. Aus Op.124: Albumblätter, 20 Klavierstücke [LH/RH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

シューマン=ホーホシュテッター「アルバムの綴り Op.124 より 第11曲 ロマンス」1-3小節

邦題:シューマン「アルバムの綴り Op.124 より 第11曲 ロマンス」(ホーホシュテッター編、片手のための)

 

出版年:1917年
原曲:Schumann, Robert / Albumblätter「Romanze」Op.124-11
編曲:Hochstetter, Cäsar(右手・左手いずれでも演奏可能な編曲)
演奏時間:約1分40秒
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)
収録:Album für das einhändige Klavierspiel
献呈:Den Verwundeten(第一次世界大戦の負傷者へ)

 

多少の創作的な補筆は加えられているものの、原曲の持つ雰囲気がしっかりと保たれた編曲になっています。主要な旋律がオクターヴで奏されるため、演奏にはやや高いハードルが伴い、加えて、比較的多くの跳躍が現れる点も技術的な難所となっています。

 

· Max Reger(arr. Hochstetter, Cäsar)/ Aus »Blätter und Blüten«, 12 Klavierstücke [LH/RH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、ロマンス 第1番 1-4小節)

レーガー=ホーホシュテッター「葉と花 12のピアノ曲による3曲 より ロマンス 第1番」1-4小節

邦題:マックス・レーガー「葉と花」12のピアノ曲による3曲(ホーホシュテッター編)

 

出版年:1917年
原曲:Reger, Max /「Blätter und Blüten」12 Klavierstücke
編曲:Hochstetter, Cäsar(右手・左手いずれでも演奏可能な編曲)
分類:編曲作品(独奏)
収録:Album für das einhändige Klavierspiel
献呈:Den Verwundeten(第一次世界大戦の負傷者へ)

 

5. Max Reger: Albumblatt(アルバムの綴り)

発想記号:Zart bewegt.
演奏時間:約50秒
難易度:ツェルニー40番中盤程度

わずか全22小節という、この3曲の中でも特に短い作品です。旋律の音と音の間を埋めるように内声が発音していく書き方が特徴的で、片手でありながら声部の絡み合いを感じさせる作りになっています。

 

6. Max Reger: Humoreske(ユモレスク)

発想記号:Lebhaft und leicht.(straff rhythmisch!)
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー40番中盤程度

軽やかな表情と、豊かに歌う部分との対照が魅力的な作品です。部分的にossia(代替奏法)が書かれていますが、「r.H.(右手)」「l.H.(左手)」というように、どちらの手で演奏するかによってossiaを使い分けているという、興味深い記譜が見られる一曲でもあります。

 

7. Max Reger: Romanze Nr.1(ロマンス 第1番)

発想記号:Langsam und ausdrucksvoll.
演奏時間:約2分30秒
難易度:ツェルニー40番中盤程度

豊かな情感をたたえたロマンス。ここでも、旋律の音と音の間を埋めるように内声が発音していく書法が用いられています。6度音程の連続が随所に現れ、これが本作のサウンド面での特徴の一つになっています。

 

· Zichy, Géza(ed. Hochstetter, Cäsar)/ Liebestraum. Fantasie [LH/RH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-6小節)

ホーホシュテッター編曲「片手ピアノのためのアルバム」より、ジチー「愛の夢 幻想曲」1-6小節

邦題:ジチー「愛の夢 幻想曲」(ホーホシュテッター編、片手のための)

 

出版年:1917年
原曲:Zichy, Géza / Liebestraum
編曲:Hochstetter, Cäsar(右手・左手いずれでも演奏可能な編曲)
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品(独奏)
収録:Album für das einhändige Klavierspiel
献呈:Den Verwundeten(第一次世界大戦の負傷者へ)

 

左手のみで活動したピアニストとして知られるジチー自身の作品を、ホーホシュテッターが片手演奏用に整えたもので、同曲集に収められた編曲の中では唯一、運指がまったく指示されていない点が特徴です。

主部以降の譜面は、一見すると両手用の作品かと思わせるほどの書法になっており、多くの部分で、メロディ・バス・ハーモニーという本来離れた声部を同時に鳴らそうとする構成をとっています。そのため、音楽にとって根幹となる自然な拍感が損なわれやすい書き方になっており、同曲集の他の編曲と比較すると、音楽的な自然さを保ちながら演奏するのがやや難しい編曲と言えるでしょう。

 

‣ Höffer, Paul(1895–1949) パウル・ヘッファー

 

パウル・ヘッファー(1895年12月21日バルメン=エルバーフェルト生まれ、1949年8月31日ベルリン没)はドイツの作曲家・音楽教育者です。ケルン音楽院でヴァルター・ゲオルギイにピアノを、フランツ・シュレーカーに作曲を師事しました。その後ベルリンで活動を続け、1923年からベルリン高等音楽院で教えました。オペラ、オラトリオ、管弦楽曲、室内楽、ピアノ曲、声楽曲など幅広いジャンルを手がけており、作風はヒンデミットに近いとされています。

 

· Zwei Etüden from 12 Klavierstücke [LH/RH]

 

邦題:12のピアノ小品 より 左手のための2つの練習曲

 

作曲年:1941/42年
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか

 

第1番 Largo

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ヘッファー「12のピアノ小品 より 左手のための2つの練習曲 第1番 Largo」1-4小節

演奏時間:約6分
難易度:ツェルニー40番中盤程度

和音主体の書法による重々しい曲で、和音演奏とメロディのピックアップが主な練習課題。低音に繰り返し現れるリズム素材とオルゲルプンクトが「運命のノック」を思わせる印象を与え、J.S.バッハの「イタリア協奏曲 BWV971 第2楽章」にも通じる雰囲気を持っています。

 

第2番 Allegro vivace

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

ヘッファー「12のピアノ小品 より 左手のための2つの練習曲 第2番 Allegro vivace」1-3小節

演奏時間:約2分30秒
難易度:ツェルニー40番中盤程度

跳躍と高速連符の連続が練習課題。第1番とは対照的な諧謔的な性格を持っています。d-mollの主和音による力強い終結で締めくくられます。なお、難しい跳躍が続く箇所にはossiaが示されており、演奏上の選択肢が与えられているので、学習段階に応じて決定するといいでしょう。

 

‣ Hofmann, Josef Casimir(1876-1957) ヨゼフ・ホフマン

 

ヨゼフ・ホフマン(1876年クラクフ近郊ポドゴルジェ生まれ、1957年ロサンゼルス没)はポーランド系アメリカ人のピアニスト・作曲家・発明家です。幼少期から神童として名をはせ、アントン・ルービンシュタインが個人教授した唯一の弟子となりました。20世紀を代表する大ピアニストのひとりとして長年にわたり演奏活動を続け、特にショパンの演奏で高い評価を得ています。作曲家としても100曲以上の作品を残しており、多くは「ミヒャエル・ドヴォルスキー」という筆名で出版されています。また70以上の特許を持つ発明家でもありました。

 

· Etude for the Left Hand in C major, Op.32 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-3小節)

ホフマン「左手のための練習曲 ハ長調 Op.32」1-3小節

邦題:左手のための練習曲 ハ長調 Op.32

 

作曲年:不明
演奏時間:約3分50秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

Andanteの柔らかい曲想から、スケルツォ的性格のマーチへと向かう構成です。半音階的な和声や広い音域を使用した充実した一作です。ホフマンは多くの作品で筆名を使用しましたが、この作品は自身の名前で出版されました。ホフマンによるピアノロールの演奏記録も残っています。

録音機会は多くない作品ですが、ピアニストArtem Yasynskyyの録音音源「Hofmann: Piano Works」などに収録されています。

 

この作品をさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くヨゼフ・ホフマン:ルービンシュタイン唯一の弟子が遺した片手の練習曲

 

‣ Hollaender, Alexis(1840-1924) アレクシス・ホレンダー

 

アレクシス・ホレンダー(1840年シレジア生まれ、1924年ベルリン没)は、ピアニストおよび指揮者としてベルリンの音楽界で重きをなした人物です。ピアニストとして、シューマンの「クライスレリアーナ」や「交響的練習曲」をはじめとする主要ピアノ作品のベルリン初演も手がけました。作曲家としての活動や、シューマンのピアノ作品の校訂者としても知られています。

第一次世界大戦での負傷がきっかけで右腕を失ったパウル・ヴィトゲンシュタインが、演奏可能な左手作品を求めて図書館で資料を探っていた際、その数少ない収穫の一つとしてホレンダーの作品が挙げられたと伝えられています。

 

· Sechs Intermezzi, Op.31 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、第1曲 1-3小節)

ホレンダー「6つの小品 Op.31 より 第1曲」1-3小節

邦題:6つの小品 Op.31

 

出版年:1884年
難易度:ツェルニー30番修了〜40番入門程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

構成(全6曲、全曲左手独奏)

1. Abendlied (Evening Song) 夕べの歌
2. Etude  練習曲
3. Melodie  メロディ
4. Walzer(Waltz) ワルツ
5. Perpetuum mobile  無窮動
6. Jaglied(Hunting Song) 狩の歌

 

第1曲 Abendlied(Evening Song/夕べの歌)

演奏時間:約1分30秒

ロマンス風の性格を持ち、和音を主体とした書法で進行する曲です。シューマンを思わせる曲調が印象的でしょう。全曲を通して現れる付点リズムが印象的で、和音から浮かび上がるように歌う旋律が表情を生み出しています。

 

第4曲 Walzer(Waltz/ワルツ)

演奏時間:約2分50秒

典型的なサロン風の性格を持つ作品で、ダイナミクスの変化による対比がたびたび現れます。優雅な雰囲気を保ちながらも、全体的に生き生きとした活力が感じられる音楽で、「テンポは1つ振り」で演奏されるよう指示されています。

 

第6曲 Jaglied(Hunting Song/狩の歌)

演奏時間:約2分30秒

狩猟を思わせる明快で明るい性格の音楽です。音遣い自体はシンプルながら、音域を大きく行き来する跳躍が比較的多く現れるため、同曲集の中では技術的な難度がやや高い一曲と言えるでしょう。幅広いテクニックが盛り込まれていることに加え、同難易度帯の作品の中では演奏効果も比較的高く、演奏会でも映えやすい曲に仕上がっています。

 

‣ Hummel, Ferdinand(1855-1928) フェルディナント・フンメル

 

フェルディナント・フンメル(1855年9月6日ベルリン生まれ、1928年4月24日ベルリン没)はドイツの作曲家、ハープ奏者、ピアニストです。7歳で公衆の前でハープを演奏するほどの早熟ぶりを示し、プロイセン王ヴィルヘルム1世の援助を受けてウィーンでアントニオ・ザマラに師事しました。その後ベルリンの高等音楽学校やプロイセン芸術アカデミーで、ピアノをシャルヴェンカやクラク、作曲をヴュルストやバルギールらに学んでいます。ビルゼ管弦楽団のハープ奏者を経て、1892年に王立劇場音楽監督、1897年には宮廷楽長の地位に就きました。作品数は約120にのぼります。

なお、ベートーヴェンのライバルとして名高いヨハン・ネポムク・フンメルとは血縁関係にありません。

 

· Marsch für die linke Hand allein, Op.43 Nr.5 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-3小節)

フンメル「左手のためのマーチ Op.43-5」1-3小節

邦題:左手のためのマーチ Op.43-5

 

出版年:1900年(「Fünf Klavierstücke für die linke Hand allein」全5曲中の第5曲として刊行)
演奏時間:約4分30秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

「Fünf Klavierstücke für die linke Hand allein Op. 43」は、左手のための5つの性格的小品からなる曲集で、各曲でそれぞれ異なる左手の奏法を試みる内容で構成されました。「マーチ」はその最終曲にあたります。

「Tempo di marcia(Allegro)」で演奏され、付点リズムを基調とした行進曲調が全体を貫きます。極端な跳躍を要求しない書法のため、演奏に無理がありません。とはいえ、同程度の難易度帯にある他の左手作品と比べると、演奏効果は比較的高い部類に入る作品と言えます。

 

‣ Hyde, Miriam(1913-2005) ミリアム・ハイド

 

ミリアム・ハイド(1913年アデレード生まれ、2005年に没)は、20世紀オーストラリアを代表するピアニスト・作曲家の一人です。ロンドンの王立音楽大学に留学し、自作のピアノ協奏曲でBBCなど主要オーケストラと共演しました。帰国後はシドニーを拠点に演奏・作曲・教育の各方面で活躍し、独奏曲から管弦楽曲、歌曲まで幅広い作品を残しています。1982年に左腕を骨折した経験があり、これがきっかけで右手一本のための「3つの練習曲」を書くなど、隻手のピアノ作品への関心は自身の経験とも結びついていました。

 

· Concert Waltz, for Left Hand [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のための演奏会用ワルツ

 

作曲年:1977年
出版:Wollongong: Wirripang Pty Ltd, 2012年8月初版(校訂:クリスティン・エドワーズ)
演奏時間:約1分40秒
難易度:ツェルニー30番修了〜40番入門程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

作品の背景

本作は、自動車事故で右手を負傷した教え子のために書かれた作品です。作曲者自身の記述によれば、1977年8月11日、リーズのヘディングリーで行われた第4次テストクリケットのテレビ中継を見ながら、その昼休みの間に書き上げられたといい、この試合でイングランドの打者ボイコットが自身通算100本目のセンチュリー(100得点)を記録したことも書き添えられています。

 

音楽的な特徴

Allegro con brioの快活なテンポを持ちながら、どこか諧謔的なユーモアの漂う曲想が特徴です。「or, for small hands:」と記された代替パターンが用意されている箇所があり、手があまり大きくない奏者にも配慮した書き方がされています。

 

· Left Hand Study [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のための練習曲

 

作曲年:1985年
出版:Wollongong: Wirripang Pty Ltd, 2013年10月初版(校訂:クリスティン・エドワーズ)
演奏時間:約1分50秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:メロディ・イェーマンズ(Melody Yeomans)のために

 

作品の背景

1985年、右手首を骨折した教え子メロディ・イェーマンズのために、ハイドは左手のための小品を2曲書きました。本作はそのうちの1曲で、もう1曲「Melody」は2002年にAMEB(オーストラリア音楽検定協会)第4級の教本シリーズ15に収録される形で出版されています。

 

音楽的な特徴

Allegro con brioで、基本的には単音の連続によるパッセージワークで構成されていますが、部分的に控えめな和音が添えられた箇所もあります。曲中には増2度進行を用いた箇所が複数含まれており、これが本作のサウンド面での特徴の一つと言えるでしょう。聴けば練習曲であることがすぐに分かる音の使い方をしていますが、同時に一つの楽曲としてのまとまりも感じさせる作りです。終結和音には()による代替表記が与えられており、手があまり大きくない奏者への選択肢も用意されています。

 

► 終わりに

 

作品を探す際は、以下のアルファベット別ページもご利用ください。

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別

 

併読推奨記事

本Webメディアの全記事への入り口となる総合ガイドです。入門・基礎知識、作品ライブラリー、楽曲別ガイド、技術・知識、作曲家シリーズ、参考文献・資料・レビューまで、目的別に記事をまとめています。

左手ピアノ総合ガイド:すべての記事への入り口

 


 

► 関連コンテンツ

YouTubeチャンネル
・Piano Poetry
チャンネルはこちら

SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら

 

タイトルとURLをコピーしました