左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 S-V

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 S-V

► はじめに

 

本ページでは、S-Vで始まる作曲家の左手ピアノ作品をまとめています。作曲作品・編曲作品・教本・室内楽・協奏曲などを、作曲家ごとに整理しています。

作品を探す際は、以下のアルファベット別ページもご利用ください。

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別

 

► 作曲家別 S-V

‣ Saint-Saëns, Camille(1835-1921) サン=サーンス

· Six Études pour la main gauche seule, Op.135

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1曲 1-3小節)

サン=サーンス「左手のための6つの練習曲 Op.135 より 前奏曲」冒頭部分の楽譜。

邦題:左手のための6つの練習曲 Op.135

 

作曲年:1912年
演奏時間:全曲合計 約18分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

構成

1. Prélude(前奏曲) 2. Alla Fuga(フーガのように) 3. Moto Perpetuo(無窮動)
4. Bourée(ブーレ) 5. Élégie(エレジー) 6. Gigue(ジーク)

 

70代半ばを過ぎたサン=サーンス晩年の作で、彼が手がけた練習曲集としては最後の作品にあたり、先行作にはOp.52、Op.111があります。左手のための作品としてはこの一作のみが残されました。

和音中心ではなく、単一の音符の連続によるパッセージワークや、声部の独立を意識した対位法的な書法を基調としています。17世紀フランス舞曲への関心が組曲という形式の選択ににじみ出ているのが特徴です。

 

この作品をさらに詳しく知る

【ピアノ】サン=サーンス「左手のための6つの練習曲 Op.135」:作品の背景とエチュードとしての価値

 

‣ Sancan, Pierre(1916-2008) サンカン

 

ピエール・サンカン(1916年マザメ生まれ、2008年パリ没)はフランスの作曲家・ピアニスト・指揮者・教育者です。モロッコで音楽を始め、パリ音楽院でフーガ、指揮、ピアノ、作曲を学び、1943年にカンタータ「イカロスの伝説」でローマ大賞を受賞しました。1956年からパリ音楽院のピアノ科教授を務め、ミシェル・ベロフやジャン=フィリップ・コラールらを育てています。ドビュッシーの優れた解釈者としても知られており、現代的な技法と印象主義的な和声語法を結びつけた独自のスタイルを持ちます。

 

· Caprice romantique, pour piano (main gauche seule)

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のためのロマンティックなカプリス

 

作曲年:1949年
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

3拍子の気だるい雰囲気で静かに開始する、大きなワルツを思わせる作品。機能和声から逸脱した現代的な和声語法を持ちながらも耳なじみのよい書法で、演奏会でも映える仕上がりになっています。各部分でテンポと性格が変化したりと対比が意識されており、黒鍵グリッサンドが現れるのも特徴の一つです。マダム・ヴォスコチャキに献呈されました。

 

‣ Saxton, Robert (1953-) サクストン

 

ロバート・サクストン(1953年ロンドン生まれ)はイギリスの作曲家です。6歳から作曲を始め、幼少期にベンジャミン・ブリテンとエリザベス・ラッチェンスに指導を受けました。ケンブリッジ大学とオックスフォード大学でも作曲を学び、ルチアーノ・ベリオにも師事しています。21歳でガウデアムス国際作曲賞を受賞。ギルドホール音楽演劇学校やロンドン王立音楽アカデミーで作曲科の主任を務め、のちにオックスフォード大学ウースター・カレッジの作曲教授を2021年まで務めました。レオン・フライシャーをはじめとする演奏家との共同作業でも知られています。

 

· Chacony

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:シャコニィ

 

作曲年:1988年
委嘱:オールドバラ音楽祭
初演:1988年6月20日、レオン・フライシャー
演奏時間:約6分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:レオン・フライシャー

 

題名の「Chacony」は、パーセルやブリテンが用いた「シャコンヌ」の英語古語形にあたります。伝統的なシャコンヌと同じく、繰り返される短い音型を骨格として展開していく構造ですが、大部分が全音音階でできているなど、書法やサウンドは現代的です。

楽曲展開の概要:

・1音ずつ増えていく音の積み重ねから静かに開始
・中間部では音楽が動的な性格に変わり、線的なパッセージと声部の絡み合いが前面に出てくる
・その後、冒頭の素材が戻ってくるが、今度は力強い表情で明るく締めくくられる

CHESTER MUSICから出版されているこの作品の楽譜には、より詳細な作曲コンセプト解説が書かれています。

 

ピアニストのフライシャーは1960年代に右手の腱鞘炎(後にジストニアと診断)で両手演奏が困難となり、左手作品の演奏・委嘱に長年尽力しました。

 

‣ Schaum, John W.(1905-1988) ショーム

 

ジョン・W・ショームはアメリカのピアノ教育者・編曲家で、分かりやすい構成の教則本・練習曲集を数多く手がけました。丁寧な運指指示と無理のない曲順構成が特徴で、世界中のピアノ指導者に長く支持されています。

 

· LEFT HAND SOLOS for the piano, Book 1–2

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

 

難易度:Book 1(バイエル併用〜ブルグミュラー25修了程度)/Book 2(ツェルニー30番入門〜修了程度)
分類:編曲作品集(独奏)
備考:楽曲によっては、運指の調整により右手のみでの演奏にも対応

 

シリーズの概要

著名な左手作品や古典的な小品の旋律を、初中級者でも弾きやすく左手用アレンジした編曲集です。運指・ペダルの指示が丁寧に付されており、1曲あたり1〜数ページと短め。Book 2にはスクリャービン「左手のためのノクターン Op.9-2」の弾きやすいアレンジ版のほか、ショパン「プレリュード Op.28-6」なども収録されており、名旋律を初中級レベルで味わえる点が魅力です。

 

Book 1 収録曲

曲名 作曲者・出典
Can’t Help Singing Hugo Reinhold
Silvery Waves Addison P. Wyman
Deep Valley H. C. MacDougall
Rolling Along Paul Hiller
Plus and Minus Robert Schumann
Sunset Waltz Friedrich Wieck
Out of the Past Carl Czerny
Spring Song Felix Mendelssohn
Arkansas Traveler Traditional American
Serenade Ethelbert Nevin
Doing Things on a Big Scale Albert Biehl
Memories of You Cornelius Gurlitt
The Futile Courtship Johannes Brahms
Robin Adair Scottish Air
Halo on the Moon Arthur Foote
Longing Franz Schubert
Cuckoo Clock Emil Breslaur
Farewell to the Piano Ludwig van Beethoven

 

Book 2 収録曲

曲名 作曲者・出典
Dream Dust Charles F. Dennee Op.7, No.2
The Gypsy Baron (Waltz Theme) Johann Strauss
Revolving Door H. Maylath Op.163
Washington’s March Traditional
Spiral Staircase A. Krause
Evening Sun A. Hollaender
Nocturne A. Scriabine Op.9, No.2
The Squirrel and the Acorns Loeschhorn Op.38, No.5
In the Subway L. Birkedal-Barfod
Flashes in the Harbor S. Heller Op.125, No.12
Sunken Gardens L. Streabbog Op.97, No.3
Prelude F. Chopin Op.28, No.6
The Silent Rose Victor Herbert Op.15, No.1
Album Leaf Adam Geibel
Scotch Poem E. A. MacDowell Op.31, No.2
Chorale H. Berens Op.89
Sextet from “Lucia” G. Donizetti

 

このシリーズについてさらに詳しく知る

【ピアノ】ジョン・W・ショーム「LEFT HAND SOLOS for the piano」シリーズ 完全ガイド

 

‣ Schmidt, Franz(1874-1939) フランツ・シュミット

 

フランツ・シュミット(1874年プレスブルク生まれ、1939年ウィーン近郊没)はウィーンで活躍した作曲家で、ウィーン音楽院でブルックナーの対位法クラスに学んでいます。オペラ「ノートル=ダム」(初演1914年)でウィーンで高い評価を得た一方、ピアノのための作品は多くありません。ヴィトゲンシュタインに依頼されたことで左手作品を複数手がけており、左手のためのピアノ独奏曲としては「左手のためのトッカータ ニ短調」が唯一の作品です。

 

· Toccata für die linke Hand allein

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-2小節)

フランツ・シュミット「左手のためのトッカータ ニ短調」1-2小節

邦題:左手のためのトッカータ ニ短調

 

作曲年:1938年
演奏時間:約6分30秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:パウル・ヴィトゲンシュタイン

 

1938年10月に作曲され、パウル・ヴィトゲンシュタインに献呈した作品です。自筆譜の題名には「ピアノまたはチェンバロのための」という記載もあり、チェンバロでの演奏も想定されていました。左手独奏としての原典版は作曲から40年後の1978年に初めて出版されました。

Molto vivaceで始まる無窮動楽曲で、広い音域をわたる単一音符の連続によるパッセージワークが中心となっています。バロック的な乾いた感覚と近代的な和声が共存しており、独自の音楽語法が際立っています。

 

音源について

ステファン・ヴァルズィッキ「Piano Music for the Left Hand」(Nimbus Alliance、2015年)などに収録されています。このアルバムの詳細は以下の記事をご覧ください。

【ピアノ】ステファン・ヴァルズィッキ「Piano Music for the Left Hand」レビュー

 

· Quintet in G major for 2 Violins, Viola, Cello and Piano (Left Hand)

 

邦題:ピアノ五重奏曲 ト長調(左手ピアノ、2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための)

 

作曲年:1926年
演奏時間:約38分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(室内楽)
献呈:パウル・ヴィトゲンシュタイン

 

構成(全4楽章)

I. Lebhaft, doch nicht schnell
II. Adagio
III. Sehr ruhig – Lebhaft
IV. Sehr Lebhaft

 

作品の背景

シュミットが遺した3曲のピアノ五重奏曲は、いずれも第一次世界大戦で右腕を失ったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタインの依頼によって書かれ、彼に献呈されています。ヴィトゲンシュタインは最初の2曲を自ら初演しましたが、1939年の時点ですでにアメリカへ移住しており、左手版として実際に出版されたのはこのト長調の一曲のみでした。この作品の初演は1929年です。後年フリードリヒ・ヴューラーの手による両手版が世に出たことで演奏機会は広がりました。

 

音楽的な特徴

弦楽器のパートはブラームスを思わせる響きが漂います。一方でピアノパートは、ソロとして目立つような技巧的な派手さよりも、他の楽器の中に溶け込むように書かれた部分も多くあるのが特徴と言えるでしょう。

近現代作品が大部分を占める左手室内楽作品の中にあって、聴きやすさを持ち合わせた作品でもあり、特に「III. Sehr ruhig – Lebhaft」は「聴く」入門にもおすすめです。

 

‣ Schulhoff, Erwin(1894-1942) シュールホフ

 

エルヴィン・シュールホフ(1894年プラハ生まれ、1942年バイエルン州没)。ドイツ系ユダヤ人の家庭に生まれたチェコの作曲家・ピアニストで、複数の都市の音楽院で学び、レーガーからも影響を受けています。ジャズをクラシック音楽の文脈に取り込んだ先駆的な存在として知られるほか、ダダイズムとの接点も持ち、既成の枠にとらわれない作風を展開しました。しかしナチス政権下で活動を封じられ、1941年にソビエトへの亡命を図る直前に逮捕され、バイエルン州の収容所で翌年に亡くなりました。

 

· Suite No.3(Piano Left Hand)

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-2小節)

シュールホフ「組曲 第3番 より 前奏曲」1-3小節

邦題:左手のための組曲 第3番

 

作曲年:1926年
演奏時間:全曲合計 約15分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

第一次世界大戦での負傷がきっかけで右腕が半永久的に麻痺したチェコのピアニスト、オタカール・ホルマンのために1926年に作曲されました。ホルマンは翌1927年11月にベオグラード(ユーゴスラビア)で初演しています。

5曲から成る組曲で、各曲がそれぞれ異なる性格を持ちます。

・Preludio(前奏曲)
・Air(アリア)
・Zingara(ツィンガラ/ジプシーの女性)
・Improvisazione(即興曲)
・Finale(フィナーレ)

和声やリズムなどあらゆる点でシュールホフの幅広い作風を反映した多彩な作品です。演奏表現のための指示も丁寧に書き込まれています。左手独奏の演奏会作品として完成度が高く、特にフィナーレの演奏効果は圧倒的と言えるでしょう。

 

‣ Scriabin, Alexander(1872-1915) スクリャービン

· 2 Pieces for the left hand alone Op.9

 

プレリュード Op.9-1

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

スクリャービン「左手のための2つの小品 Op.9-1」の曲頭の楽譜。

ノクターン Op.9-2

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

スクリャービン「左手のための2つの小品 Op.9-2」の曲頭の楽譜。

邦題:左手のための2つの小品 Op.9

 

楽曲について(オリジナル作品)

曲名 作曲年 演奏時間 特徴
プレリュード Op.9-1 1894年 約3分半 両手作品とあわせてレパートリーとして定着
ノクターン Op.9-2 1894年 約6分 静寂さと劇的さを併せ持つ、カデンツァを含む充実作

 

難易度:Op.9-1 ツェルニー30番修了程度、Op.9-2 ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

作品全体の背景(Op.9共通)

このOp.9は、スクリャービン自身が過度な練習によって右手を痛めてしまったために作曲されたものです。1895年に出版され、後年の神秘主義的な作風とは異なる、ショパンの強い影響を受けたロマン派のスタイルを持っています。内容、知名度ともに、左手のためのピアノ曲における名作の一つと言えるでしょう。

ピアニストのデトレフ・クラウスによれば、これら2つの楽曲は「なぜこんなに悲しいのか分からない」および「白樺の木の下の夢」という、2つのロシア民謡に基づいているとされています。

 

この作品をさらに詳しく知る

【ピアノ】スクリャービン「左手のための2つの小品 Op.9」演奏完全ガイド

 

‣ Slonimsky, Sergei(1932-2020) セルゲイ・スロニムスキー

 

セルゲイ・ミハイロヴィチ・スロニムスキー(1932年8月12日レニングラード生まれ、2020年2月9日サンクトペテルブルク没)はロシアの作曲家・ピアニスト・音楽学者です。文学者ミハイル・スロニムスキーを父に、ロシア系アメリカ人の音楽学者ニコラス・スロニムスキーを叔父に持ち、芸術的な環境で育ちました。父方の叔母は後のカーティス音楽院のピアノ教師イザベル・ヴェンゲローロヴァです。

1950年からレニングラード音楽院で作曲(オレスト・エフラホフほか)とピアノを学び、卒業後は同院の教授として1959年から長年にわたって後進を育成しました。ロシア民謡から中世聖歌、12音技法、ジャズ、新ロマン主義まで幅広い語法を自在に操る折衷的な作風を持ち、多作家としても知られています。デニソフ、シュニトケ、グバイドゥーリナらと同時代のモスクワ勢とは異なり、「レニングラード楽派」に属する存在として位置づけられます。

 

· Concert Etude for the Left Hand to Paganini

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:パガニーニによる左手のためのコンサート・エチュード

 

作曲年:2000年
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
委嘱:ハーバート・アクセルロッドとイヴリン・アクセルロッドにより、ゲイリー・グラフマンのために委嘱
収録:Ruby Morgan 編「An Anthology of Piano Music for the Left Hand Alone」(2021年)

 

リスト、ブラームス、ラフマニノフらが用いてきたパガニーニの有名な主題を用いた作品で、変奏形式風な展開を持っています。

この作品の根底には驚きと遊び心が漂っており、曲の冒頭から一つのテーマを低音域と中高域とに分解した急激な跳躍を伴う書法が見られるなど、早速そのユーモアが感じられます。スロニムスキーの折衷的な作風らしく、親しみやすい旋律素材とあらゆる現代的な語法が共存しているのも特徴と言えるでしょう。

1段譜で書かれた部分も多く、音数は意外と限定的で、全体的にシンプルな作りになっています。

Ruby Morganのアンソロジー(2021年)を通じて初めて出版されました。

 

‣ Sosa, Raoul(1939-) ラウル・ソーザ

 

ラウル・ソーザ(1939年7月27日ブエノスアイレス生まれ)はアルゼンチン出身のカナダのピアニスト・作曲家・指揮者です。ブエノスアイレス音楽院でピアノと音楽理論を学び、1959年にテアトロ・コロンでデビュー。1962年のヴァン・クライバーン国際コンクールでファイナリストとなり、フランス政府奨学金でマグダ・タリアフェロ(パリ・ザルツブルク)、スタニスラフ・ネイガウス(イタリア)に師事しました。ウィグモア・ホールやサル・ショパン=プレイエルをはじめ欧米各地で演奏活動を行い、1967年からはモントリオールのケベック音楽院で教鞭を執りました。

1980年に右手を負傷したことを転機として、左手独奏のレパートリーを自ら作曲・編曲しながら演奏活動を続ける道へと進みました。並行してセルジュ・チェリビダッケに指揮を学び、1986〜89年にはモントリオールのサン=レオナール交響楽団の創設指揮者を務めています。2009年にカナダ勲章を受章。モントリオール音楽院の名誉教授。カナダ音楽センターのアソシエイト・コンポーザーとして作品が保存されています。

 

ソーザについてさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くラウル・ソーザ:右手の負傷が開いた、もう一つのキャリア

 

· Original Works
– Capriccioso (on Paganini’s Capriccio No.24)

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:カプリッチョーソ(パガニーニの「奇想曲 第24番」の主題による)

 

作曲年:1995年
演奏時間:約12分(全12ページ、手稿複製)
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

パガニーニの「奇想曲 第24番」の主題に基づく変奏曲。変奏の一つは「Berceuse chinoise」と題され、黒鍵のみで演奏されます。1段譜と大譜表が場面によって使い分けられ、大きな跳躍、厚い和音、複雑な声部の重なりなど様々な書法が見られます。

冒頭のヴァイオリン的な音型の箇所では、中高域の音響を補うためにヴァイオリンでは演奏できない和音が付加されました。

初演は、1995年11月19日、ウィニペグ・アーツ・ギャラリーにて作曲者自身によって行われました。

 

– Sonata for violin and piano left hand

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:ヴァイオリンと左手ピアノのためのソナタ

 

作曲:1992年
全28ページ(手稿複製)
演奏時間:約25分
分類:オリジナル作品(室内楽)

 

伴奏として主旋律を支えつつも、時にはヴァイオリンと対等に渡り合う左手ピアノの書法は、本作の大きな聴きどころです。初演は1992年10月23日に行われ、マルティーヌ・デロシュのヴァイオリンと、作曲者ソーザ自身のピアノによって披露されました。

 

– Sonata for cello and piano left hand

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:チェロと左手ピアノのためのソナタ

 

作曲:1995年
演奏時間:約23分
分類:オリジナル作品(室内楽)

 

本作は、作曲者が左手ピアノと他楽器の組み合わせに連続して取り組んでいた1995年に書かれました。これは「ヴァイオリンと左手ピアノのためのソナタ」の誕生から3年後にあたります。初演の奏者や当時の演奏状況など、詳しい背景を伝える資料は現時点では確認できておりません。

 

– Concerto pour la main gauche et orchestre à cordes

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手と弦楽オーケストラのための協奏曲

 

作曲年:1989年
演奏時間:約28分(全85ページ、手稿複製)
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(協奏曲)

 

構成(全3楽章)

第1楽章 Allegro molto
第2楽章 Adagio
第3楽章 Allegro

 

初演は、1992年2月2日、I Musici de Montréal により、作曲者自身によって行われました。

 

· Arrangements
– Bach / Sosa: Chromatic Fantasy and Fugue in D minor, BWV903

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:バッハ/ソーザ:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903(左手独奏版)

 

編曲年:1989年
演奏時間:約13分(全26ページ、手稿複製)
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)

 

J.S.バッハの原曲を左手独奏用に編曲した作品で、ソーザ独自の創作的なアーティキュレーションは加えず、原曲の構造と声部をできる限り保ったまま片手に移し替えることを目指した編曲です。「片手演奏への妥協がごくわずか」と評される、完成度の高い仕上がりとされてきました。

初演は1990年3月15日です。ソーザ自身による録音もあり、彼の左手編曲の中では最も広く知られている作品の一つとなりました。

 

– Bach / Sosa: Sinfonia No.14 in B-flat major, BWV800

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:バッハ/ソーザ:シンフォニア 第14番 変ロ長調 BWV800(左手独奏版)

 

編曲年:1988年
演奏時間:約2分20秒(全2ページ、手稿複製)
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)

 

原曲は3声の対位法作品で、その性質上、片手で完全に再現することには大きな制約が伴います。音の変更と声部の部分的な削減によって片手版として成立させており、原曲の12小節目以降に展開されるストレッタは省かれました。

アーティキュレーションは原典準拠で創作的な付加はなく、強弱記号が一部補足されています。運指付き。

 

– Gluck / Sosa: Il lamento d’Orfeo

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:グルック/ソーザ:オルフェオの嘆き(左手独奏版)

 

編曲年:1997年
演奏時間:約3分(全3ページ、手稿複製)
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)

 

グルックのオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」より、エウリディーチェを失ったオルフェオの嘆きの場面を原曲とした編曲です。深い哀愁を持ちながらも静かな美しさを失わないこの旋律を左手独奏として成立させており、原曲の特徴的な音の連打も引き継いでいます。

 

– Ravel / Sosa: La Valse

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:ラヴェル/ソーザ:ラ・ヴァルス(左手独奏版)

 

編曲年:1993年
演奏時間:約16分(全32ページ、手稿複製)
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)

 

ラヴェルの管弦楽曲「ラ・ヴァルス」の左手独奏版です。ラヴェル自身による両手版やピアノ連弾版でさえ演奏困難な作品を、さらに片手編曲した野心的な編曲です。低音のうねり、高音のきらめき、ワルツが加速していく運動感を左手ひとつで再現することを目指しており、技術的要求はきわめて高いと言えるでしょう。

ソーザ自身による録音があり、「半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903」の編曲とともに、彼の左手編曲の中では知られている作品の一つとなりました。

 

– Stravinsky / Sosa: L’Oiseau de feu

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:ストラヴィンスキー/ソーザ:火の鳥(左手独奏版)

 

編曲年:1996年
演奏時間:約24分(全22ページ、手稿複製)
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)
備考:底本 1919年版

 

ストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」の左手独奏版で、演奏機会の多い1919年版をもとにして編曲されました。色彩豊かなオーケストレーションを左手独奏で表現するにあたり、スタイルから大幅に変化させるのではなく、原曲の管弦楽的な音響にできる限り肉薄する方向で書かれています。

 

‣ Strauss, Richard(1864-1949) リヒャルト・シュトラウス

 

リヒャルト・シュトラウス(1864年6月11日ミュンヘン生まれ、1949年9月8日ガルミッシュ=パルテンキルヒェン没)はドイツ後期ロマン派を代表する作曲家・指揮者です。「ドン・ファン」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」「英雄の生涯」などの交響詩で革新的な書法を確立し、「サロメ」「エレクトラ」「ばらの騎士」といったオペラで国際的な地位を築きました。若い頃からヴィトゲンシュタイン家の常連客であり、パウル・ヴィトゲンシュタインとは個人的な親交がありました。

 

· Parergon zur Symphonia domestica für Klavier linke Hand und Orchester, Op.73

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、ソロの初導入部 19-21小節)

シュトラウス「家庭交響曲余録 Op.73」19-21小節

邦題:家庭交響曲余録 Op.73

 

作曲年:1924〜1925年(スコアの日付:1925年1月27日)
演奏時間:約25分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(協奏曲)
初演:1925年ドレスデン、フリッツ・ブッシュ指揮、ヴィトゲンシュタイン独奏(日付は資料によって異なる)
献呈:パウル・ヴィトゲンシュタイン

 

1924年にヴィトゲンシュタインから委嘱を受けて書かれた作品です。「Parergon」とはギリシャ語に由来する言葉でシュトラウス自身の造語とされており、「傍作」あるいは「補遺」に近い意味を持ちます。

シュトラウスの自伝的交響詩「家庭交響曲 Op.53」の「付け足し」として、主に息子フランツのテーマが中心に据えられています。作曲の直接のきっかけは、長男フランツが新婚旅行中に腸チフスで生死をさまよい、奇跡的に回復したことでした。曲全体が闘病から快癒へと向かう物語を描いており、シュトラウスにとって極めて私的な意味を持つ作品でした。

単一楽章で多くのセクションが連続し、一度登場したピアノはほぼ休みなく演奏し続けます。冒頭でピアノが登場するまで約1分30秒程度あり、この間のオーケストラの陰鬱なサウンドが、ソロの登場への期待感を高めていると言えるでしょう。闘病から始まる物語と結びついています。

ヴィトゲンシュタインは演奏権の独占を求め、他のピアニストが演奏できるようになったのは1950年以降のことでした。

 

· Panathenäenzug: Sinfonische Etüden in Form einer Passacaglia für Klavier (linke Hand) und Orchester, Op.74

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

シュトラウス「パンアテネの行列 Op.74」1-3小節

※リヒャルト・シュトラウス自身によるピアノ伴奏版編曲(ソロ+ピアノ伴奏形式:2台ピアノ)から浄書

 

邦題:パンアテネの行列 Op.74

 

作曲年:1926〜1927年(スコアの完成日:1927年2月14日)
演奏時間:約25分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(協奏曲)
初演:1928年1月16日、ベルリン、ブルーノ・ワルター指揮、ベルリン・フィル、ヴィトゲンシュタイン独奏
献呈:なし(ヴィトゲンシュタインが演奏)

 

Op.73に対してヴィトゲンシュタインが「ピアニスティックな輝きが足りない」「管弦楽が重すぎる」と不満を示したことを受けて、シュトラウスが新たに書き下ろした作品です。題名の「パンアテネ」は古代アテネの祭典で、4年に一度の大祭ではパルテノン神殿のアテナ女神像に向けた行列が行われていました。

曲はMaestosoの序奏、カデンツァ、そして11の変奏が絶え間なく続くパッサカリア形式で書かれています。変奏ごとにテンポが変わる指示が付されており、大まかに4つのセクションに相当する構造が内部に潜んでいます。

ピアノはほぼ全曲を通じて演奏し続けており、この辺りはOp.73との共通点と言えるでしょう。演奏機会はOp.73と比べて少なく、初演時の批評は厳しいものが多くありました。

 

‣ Stravinsky, Sviatoslav Soulima(1910-1994) スーリマ・ストラヴィンスキー

 

スーリマ・ストラヴィンスキーは1910年スイス・ローザンヌに生まれ、1994年に没した作曲家・ピアニストです。イーゴリ・ストラヴィンスキーの息子であり、父としばしば2台ピアノで共演したことでも知られています。活動の拠点はスイスとアメリカにまたがり、演奏家としての経験を活かした実践的なピアノ書法を持ち味として評価されてきました。

 

· Piano Suite for the Right Hand

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:右手のためのピアノ組曲

 

作曲年:1975年
演奏時間:約8分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ウォルター・ヒンリクセンの追悼に捧げられている

 

構成(全6曲)

I. Prelude
II. Marcia
III. Valse(Noble et rustique)
IV. Gavotte
V. Sarabande
VI. Gigue

 

作品の背景

本作はニューヨークのC.F.Peters社を興したウォルター・ヒンリクセン(1907–1969)の追悼に捧げられた組曲です。

「第1曲 Prelude」の冒頭直前には、実際には演奏されない「シンボル」として12音音列がそのまま記譜されており、この音列に基づく作曲技法を用いながら、行進曲・ワルツ・ガヴォット・サラバンド・ジーグといった、以前からの舞曲様式を各曲の性格づけに援用する構成にまとめられました。様式と語法のコントラストが興味深い作品です。

なお本作は後年、ヴィオラ独奏用にも編曲されています。

 

音楽的な特徴

「第4曲 Gavotte」の一部を除き、全曲を通じて一段譜で書かれた極めて薄い書法が貫かれており、同時に鳴る音はほとんどの場合2音までに留められています。強弱や表情記号は比較的細かく書き込まれており、「espressivo」「dolce」といった歌謡的な標語まで随所に見られることから、無調語法の中にあっても旋律的な歌ごころが重視されていることがうかがえます。

各曲はいずれも1ページ前後に収まる小品で、運指は一部にのみ付されている一方、ペダル指示は与えられていません。

 

‣ Takács, Jenő(1902-2005) タカーチュ

 

イェネー・タカーチュ(1902年チンファルヴァ、現在のジークェンドルフ生まれ、2005年アイゼンシュタット没)はハンガリー系オーストリアの作曲家・ピアニスト・民族音楽研究者です。ウィーン音楽院でヨーゼフ・マルクスに作曲を、ハンス・ガールに対位法を師事しました。カイロ音楽院やフィリピン大学、シンシナティ大学音楽院などで教壇に立ち、バルトークとも親交がありました。103歳まで生き、100歳の誕生日には世界各地で約200のコンサートが開かれました。

 

※タカーチュは、「タカーチェク」「タカークス」という表記が用いられることもある

 

· Toccata and Fuge für die linke Hand, Op.56

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のためのトッカータとフーガ Op.56

 

作曲年:1950年
演奏時間:全曲合計 約6分50秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:Peter Girardoni

 

J.S.バッハの「半音階的幻想曲とフーガ」を意識した構成を持ちながら、書法は現代的で独自の音楽語法が貫かれています。作品が生まれたきっかけは、「左手だけで演奏することは本当に可能か」という友人からの問いかけで、タカーチュはその答えとして本作を書き上げました。完成後にヴィトゲンシュタインへ送ったところ、「現代的すぎる」と返却されたというエピソードも残っています。

 

トッカータ

速度記号のないRapidと書かれた即興的な音遣いで始まります。その後♩=66で音楽が落ち着きを見せますが、再び拍節感の薄い即興的な箇所に戻り、大まかな区切りだけが小節線で示される場面も現れます。全体を通じて幻想的で流動的な性格が貫かれています。

 

フーガ

無調で始まりますが、進むにつれて音楽は次第に分かりやすくなっていきます。そして最終小節で、なんとC-durの主和音(ド・ミ・ソ)で締めくくられるという、意表をついた結末を迎えます。

トッカータの最終小節とフーガの最後から2番目の小節で共通したハーモニーが出てきますが:

・トッカータでは、その神秘的な響きが未解決のままフーガに入る
・フーガでは、その響きがC-durの主和音(ド・ミ・ソ)に解決し完結する

このように両曲の関連性が示され、最終的な意味づけまでされています。無調から調性へ向かうこの流れが、この曲の大きな聴きどころの一つと言えるでしょう。

 

‣ Takano, Yuya タカノユウヤ

· J.S. Bach: Partita No.2, BWV1004 (Complete) – Arranged for the left hand alone

 

邦題:J.S.Bach 《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 全曲》 左手独奏用編曲版

※シャコンヌを除く全4曲  シャコンヌはBach=Brahms版

 

作品データ:

・編曲者:タカノユウヤ(本Webメディア運営者)
・編曲時期:2019年
・演奏時間:約17分
・演奏レベル:ツェルニー50番入門以降程度

 

編曲の意義:

1. レパートリーの拡充
・左手独奏版として初めての試み
・ブラームスによるシャコンヌ編曲と併せて全曲演奏が可能に

2. 演奏技法・編曲技法への取り組み
・ブラームス版の編曲技法を詳細に分析し、その書法をもとに残り4曲を編曲
・5本の指による演奏の可能性を追求
・チャレンジングかつ演奏効果の高い編曲を実現

3. 作曲家・編曲家としての視点
・演奏家の挑戦意欲に応える作品作り
・技術的課題と音楽的表現の融合を目指した編曲

 

この作品の楽譜を見る

ECサイト

 

· Elgar: Salut d’amour for the left hand alone Op.12

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、曲頭)

エルガー「愛のあいさつ 〜左手独奏のための〜」楽譜 冒頭部分。

邦題:愛のあいさつ 〜左手独奏のための〜 作曲:エルガー

 

作品データ:

・編曲者:タカノユウヤ(本Webメディア運営者)
・2017年度 月刊ピアノ×ピティナ編曲オーディション 上級部門 第1位 受賞作品
・編曲時期:2017年2月
・演奏時間:約3分
・演奏レベル:ツェルニー40番入門程度から挑戦可能
ピティナ・ピアノ曲事典

 

楽譜の入手方法

本作品の楽譜は以下の方法で入手できます:

・ぷりんと楽譜で購入可能(» 愛のあいさつ〜左手独奏のための〜
・「月刊ピアノ 2017年10月号」バックナンバー
・ミュッセ

 

この作品をさらに詳しく知る

【ピアノ】「愛のあいさつ 〜左手独奏のための〜」編曲者による演奏解説

 

· Famous Melodies Arranged for the left hand alone

 

編曲・演奏:タカノユウヤ
形態:民謡・讃美歌・クラシック小品の左手独奏編曲(全4曲、随時追加予定)
底本:いずれもパブリックドメインの原曲による編曲

 

収録曲

曲名 原曲 ジャンル 演奏時間
Salut d’Amour(愛のあいさつ) エルガー クラシック 3:05
Danny Boy(ダニー・ボーイ) アイルランド民謡 トラディショナル 2:35
Amazing Grace(アメイジング・グレイス) 讃美歌 トラディショナル 2:57
Auld Lang Syne(蛍の光) スコットランド民謡 トラディショナル 2:09

 

解説

広く親しまれてきた名曲を、左手独奏用に編曲したシリーズ。原曲はいずれもパブリックドメインの作品で、クラシックの小品から讃美歌、各地の民謡まで幅広く選ばれています。懐かしいメロディが左手だけの演奏でどのように響くかを楽しめる内容となっており、今後も曲数が随時追加される予定です。

 

詳細・音源は以下の記事をご覧ください。

左手独奏で楽しむ名曲ピアノアレンジ集

 

‣ Thompson, John(1889-1963) ジョン・トンプソン

 

ジョン・S・トンプソン(1889年、ペンシルベニア州ウィリアムズタウン生まれ、1963年没)。若い頃はアメリカ・ヨーロッパ各地で演奏活動を行いましたが、後に教育者へと転身し、フィラデルフィア、インディアナポリス、カンザスシティの音楽院でピアノ科を主導しました。「Teaching Little Fingers to Play」や「Modern Course for the Piano」シリーズはピアノ教則本の定番として世界的に広く使われ続けています。

左手独奏作品としては「For Left Hand Alone Book One(1959年、11曲)」「For Left Hand Alone Book Two(1962年、9曲)」も手がけていますが、日本ではほとんど知られていません。

 

· Nocturne for Left Hand Alone

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のためのノクターン

 

作曲年:不明
演奏時間:約2分30秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

日本でも広く使われている「トンプソン 現代ピアノ教本 第4巻」に収録されたオリジナル左手独奏曲です。同巻ではショパン「プレリュード Op.28-6」とシューマン「トロイメライ」に挟まれる位置に置かれており、難易度の目安として参考になります。運指とペダリングの指示が付されているため、学習しやすい構成と言えるでしょう。

曲は「ABA+短いエンディング」の三部構造です。AセクションはAndante cantabile、Es-durによる穏やかな曲想。Bセクションは平行調のc-mollに転じ、Più mosso・con animaの指示とともに場面が切り替わります。最後の和音はEs-durの主和音ですが、アルペジオの中にC音が含まれており、ペダルで響きが重なることで六の和音の色合いが生まれる、洒落た締めくくりになっています。

 

‣ Vinogradoff, Paul(1888-1974) ポール・ヴィノグラドフ

 

ポール・ヴィノグラドフ(1888年、現ポーランド領ヘウム生まれ、1974年没)はロシア帝国出身のピアニスト・作曲家・教育者です。8歳でパリ音楽院に入学後、スクリャービンの推薦でモスクワ音楽院に進み、イグームノフにピアノを、タネーエフに作曲を師事しました。1918年に来日、ジャワやオーストラリアでの活動を経て再来日後は日本に永住し、後進を育てました。イグームノフを通じたロシアピアニズムの伝統を日本に伝えた先駆的な存在として知られています。

 

· Kōjō no Tsuki (Moon over the Ruined Castle)(arr. Vinogradoff, for left hand)

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:荒城の月(左手のための)

 

原曲作曲者:瀧廉太郎(1879–1903)
収録:ピアノ名曲集 [1](共同音楽出版社、1969年)
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)

 

原曲の旋律や伴奏を忠実に再現するタイプの編曲ではなく、創作的な意図が前面に出た一作です。冒頭から相当の長さにわたって幻想的な分散和音が続き、旋律はその後に姿を現します。この部分は、ジチーが左手用編曲したリスト「愛の夢 第3番」の創作的序奏を思い出すことでしょう。原曲の伴奏音型への意識は薄く、ヴィノグラドフ独自の音楽的世界が展開されます。

 

► 終わりに

 

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