【ピアノ】「Left Hand Alone」と書いてあっても左手独奏とは限らない:輸入楽譜購入で気づいた注意点
► はじめに
左手独奏用の輸入楽譜は国内では情報が少なく、タイトルや目次だけを頼りに購入するケースも少なくありません。
左手独奏のピアノ曲を探していると、海外の楽譜に「for the left hand alone」や「left hand alone」という表記を見かけることがあります。これを見て「右手を使わない左手だけの作品なのだろう」と考える方は多いはずです。実際、筆者自身もそう思い込んで一冊の楽譜を購入しました。ところが、届いた楽譜を開いてみると、想像していた内容とは違っていました。
本記事では、この体験をきっかけに気づいた注意点を、これから左手作品を探す方に向けてまとめます。
►「Left Hand Alone」と書いてあっても左手独奏とは限らない
「left hand alone」「for the left hand alone」という表記は、多くの場合は左手独奏作品を意味します。しかし、すべての楽譜がその意味で使っているとは限らず、例外も存在します。
‣ 購入した楽譜について
該当する楽譜は、Kalmus社から出ている「Tchaikovsky – Four Arrangements」という楽譜集です。収録されている作品の一つに、ウェーバー作曲「Perpetuum mobile」の編曲があり、目次には「Transcription for piano, left hand alone, of Perpetuum mobile」と記載されていました。この一文だけを読めば、左手のみで演奏する独奏版だと考えるのが自然な流れでしょう。
‣ 開いてみると、左手独奏ではなかった
ところが実際に譜面を確認すると、右手も用いないと演奏できない編曲でした。左手が中心となって技巧的なパッセージの大半を受け持っている点は間違いありません。ただし、右手も音を鳴らす、両手による演奏を前提とした作品だったのです。つまりこの楽譜は「左手独奏作品」ではなく、「左手を中心に書かれた編曲作品」という位置づけが正しいことになります。
実は、この編曲作品が両手演奏する作品だということは、以前から把握していました。一方、今回の版にはわざわざ「left hand alone」と書かれていたので、チャイコフスキー編「Four Arrangements」の中に、まだ知らない左手独奏版が収録されているのかと勘違いしてネット購入してしまったのです。事前に片手作品の有力な楽曲事典3冊にもあたりましたが、いずれにも載っておらず、「おかしいな」と思いながらも購入しました。
‣ なぜ、こうした表記のずれが起こるのか
今回の一件を通じて感じたのは、「left hand alone」という英語表現だけで左手独奏と断定するのは危ういということでした。現代では「for the left hand alone」という表現は、左手のみで演奏する作品を指すことが一般的です。一方で、今回のような古い版やその復刻譜では、「左手に重点を置いた」「左手が難所を担う」といった程度の現代の感覚とは異なる使われ方が見られる場合もあるようです。タイトルの字面だけを頼りに購入すると、今回のような食い違いが起こる可能性がゼロではありません。
‣ 古い復刻譜ほど気をつけたい
今回購入したKalmus版は、絶版になった多くの楽譜を手軽に入手できる、大変ありがたい出版社の一つです。その一方で、Kalmusを含む復刻系の出版社では、原版に記されていたタイトルや目次、当時の言葉づかいをそのまま採用していることが少なくありません。そのため、現代の感覚でタイトルを読み解いてしまうと、意味を取り違えてしまう恐れがあります。これは出版社側の誤りというよりも、歴史的な資料をそのままの形で復刻していることに起因する現象と捉えるほうが妥当でしょう。
► 左手作品を探すときのチェックリスト
| 確認項目 | 確認しておきたい理由 |
|---|---|
| 「left hand alone」の表記があるか | 目安にはなるが、これだけで判断しないこと |
| 「one hand」「left hand only」「for left hand」など類似表記も見る | 出版社ごとに表記が統一されていないため |
| 片手音楽事典に載っているかを確認する | 左手独奏作品であれば掲載されている可能性が高い(近年の新作を除く) 載っていなければ疑うくらいでいい |
| YouTubeなどで演奏動画を探す | 左手のみの演奏か両手による演奏か確認できる ただし、マイナー分野なので出ていない作品も多い |
| 可能であれば、実際の譜例を見る | 右手パートの有無がひと目で分かる ネット購入のほうが楽なので参考程度に |
| 本メディアの検索ボックスでサーチする | 今回のような表記の解釈で迷いやすいケースを発見したときは共有していく予定 |
有力な片手音楽事典のうち、手に入りやすい2冊
・【ピアノ】「Piano Music for One Hand」(テオドール・エーデル 著)レビュー
・【ピアノ】「One Handed」(ドナルド・L・パターソン 編)レビュー
► 今回の経験は無駄ではなかった
左手独奏作品として期待していた内容とは異なっていましたが、今回の購入で「表紙や目次の文字だけでは判断しきれない楽譜が存在する」という事実を身をもって確認できたことは、むしろ収穫だったと感じています。左手のための作品は情報自体が少なく、出版されている点数にも限りがあります。だからこそ、こうした実体験を共有しておくことにも一定の意味があるでしょう。
► 終わりに
「Left Hand Alone」と書かれていても、それが必ずしも左手独奏作品を意味するとは限りません。とりわけ、古い版を復刻した海外出版社の楽譜では、当時のままのタイトルや表記が残されていることがあります。左手独奏用の輸入楽譜をお探しの方は、タイトルの文字面だけを頼りにせず、上記チェックリストの内容もあわせて確認してみてください。ひと手間はかかりますが、その確認作業が「思っていたものと違った」という残念な結果を防いでくれるはずです。
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