- 左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 W-Z
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左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 W-Z
► はじめに
本ページでは、W-Zで始まる作曲家の左手ピアノ作品をまとめています。作曲作品・編曲作品・教本・室内楽・協奏曲などを、作曲家ごとに整理しています。
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► 作曲家別 W-Z
‣ Wilcher, Phillip(1915-2010) フィリップ・ウィルチャー
フィリップ・ウィルチャーはオーストラリアの作曲家・ピアニストです。作曲家ミリアム・ハイドから高く評価されたことをきっかけに、ドクター・フランツ・ホルフォードに師事する機会を得て、以後7年間にわたる薫陶を通じて音楽のみならず美術や文学にも視野を広げました。
かつてはJ. Albert & Sons社のクラシック・教育部門でアシスタント・エディターを務め、後にABC(オーストラリア放送協会)でも仕事をしました。
その作風は幅広い様式性を持ち、様々な文化圏の和声を取り入れていると評されています。教育用の易しい作品から高度な技巧を要する作品まで手掛け、1991年に発売された《The Wiggles》のデビューアルバムへの教育的貢献によりオーストラリア・レコード産業賞を2度受賞しました。
APRAの終身会員に選出されており、Australian Music Teacher誌の理事も務め、ショパンやブラームス、ラヴェルに関する寄稿も行っています。
· Andante Teneramente and Etude for Left Hand
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:左手のための《アンダンテ・テネラメンテとエチュード》
出版: 2011年4月初版(作曲者自身による校訂)
演奏時間:第1曲 約1分30秒、第2曲 約1分
難易度:第1曲 ツェルニー30番修了程度、第2曲 ツェルニー40番中盤程度
献呈:ゲルハルト・エックレに献呈
分類:オリジナル作品(独奏)
構成(全2曲)
I. Andante Teneramente
II. Etude(Allegro vivace)
各曲の特徴
「第1曲 Andante Teneramente」は、2ページの小品です。第2曲のエチュードとはテンポのうえで対照的な性格を持ちますが、6度音程の連続が不意に現れる箇所があるなど、両曲に通じる音の運びも見られます。伴奏部分が不意に消え、旋律が無伴奏状態になる箇所がいくつも現れるのが印象的で、静けさと親密さを感じさせる曲想を持っています。作曲者自身による運指・ペダル指示はありません。
「第2曲 Etude」は、Allegro vivaceの速度指示を持つ、2ページの練習曲です。同じく運指・ペダル指示はありません。6度・5度音程の連続が課題の中心となっており、「Meno suono(より音を抑えて、ひそやかに)」という指示が曲中に2度現れます。速度標語こそAllegro vivaceとされていますが、実際の曲の印象はこの標語が与える快活さとはやや異なる落ち着きを感じさせるところがあります。
‣ Wild, Earl(1915-2010) アール・ワイルド
アール・ワイルド(1915年11月26日ピッツバーグ生まれ、2010年1月23日パームスプリングス没)はアメリカのピアニスト・作曲家です。マルグリット・ロン、エゴン・ペトリらに師事しており、師の系譜をたどるとシャルヴェンカ、ダルベール、ブゾーニへと連なります。
1937年からNBC交響楽団のピアニストを務め、1939年にはアメリカで初めてテレビのピアノ・リサイタルを行った人物としても知られています。1942年のトスカニーニ指揮によるNBCラジオ放送でガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏し、その名が広く知られるようになりました。以降は特にガーシュウィンの演奏と編曲において第一人者として評価され、リスト、ショパン、ラフマニノフのディスコグラフィーでも高い評価を受けました。
1977年からジュリアード音楽院ピアノ科の教員を務め、94歳で亡くなる直前まで指導を続けました。
· Etude No.3 for the Left Hand Alone(Based on Gershwin’s “The Man I Love”)
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:左手独奏のためのエチュード 第3番(ガーシュウィン「ザ・マン・アイ・ラヴ」に基づく)
作曲年:1954年(左手版の初稿)、1975年改訂
演奏時間:約2分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品(独奏)
収録:Virtuoso Etudes after Gershwin(G. Schirmer)、Ruby Morgan 編「An Anthology of Piano Music for the Left Hand Alone」(2021年)
Virtuoso Etudes after Gershwin 全体について
ガーシュウィンの有名な曲を素材とした7曲の編曲集で、ワイルドが長年演奏会のアンコールなどで磨き上げてきた作品群です。1954年に作られた初期の6曲セットでは、「The Man I Love」のみが左手独奏用として書かれ、他は両手用でした。その後1975年に、「The Man I Love」の両手版への書き直しと他曲の改訂、さらに「Fascinatin’ Rhythm」の追加が行われ、現在広く演奏されている全7曲(すべて両手用)の構成となりました。
第3番(左手独奏)について
現在、曲集の第3番として広く知られているのは1975年の両手版ですが、本項目で取り上げるのは1954年に書かれたオリジナルの左手独奏版です。
ガーシュウィンの「私の彼氏(ザ・マン・アイ・ラヴ)」(1924年)を素材とした左手独奏のためのパラフレーズです。原曲はもともと複数のミュージカルに組み込まれる予定でしたが最終的に外され、1931年に出版されたピアノ曲集「George Gershwin’s Songbook」に収録されました。
シンプルなメロディをアルペジオや随所に半音階を織り交ぜた伴奏で装飾した作りで、ゴドフスキー「ショパンのエチュードによる練習曲 より No.16 Op.10-6」のアレンジを思い起こさせます。ガーシュウィンの旋律の魅力を保ちつつ、ロマン派的なパラフレーズの手法で彩った仕上がりです。
‣ Wittgenstein, Paul(1887-1961) ヴィトゲンシュタイン
パウル・ヴィトゲンシュタイン(1887-1961)は第一次世界大戦での負傷により右腕を失ったウィーンのピアニストです。その後も国際的な演奏活動を続け、ラヴェル、プロコフィエフ、リヒャルト・シュトラウス、ブリテンら多くの作曲家に左手独奏のための新作を委嘱したことでも知られています。晩年はニューヨークへ移り、後進の指導にもあたりました。
· Chaconne by J.S. Bach for the left hand alone
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1–5小節)

邦題:J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ(左手独奏編曲版)
出版年:1957年(「School for the Left Hand 左手のための教則本」第3巻に収録)
演奏時間:約17分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)
「School for the Left Hand」は全3巻からなる大規模な集成で1957年に出版されました。第1巻が指の独立性を養う練習曲群、第2巻が名曲から編まれた応用練習、第3巻が演奏会用の編曲集という構成です。シャコンヌはこの第3巻に収められています。
ブラームス版を出発点としながらも、オクターブの重ねや技巧的なパッセージが大胆に書き加えられており、踏み込んだ書き換えが随所に施された版です。ヴィトゲンシュタイン自身は「音楽の内容そのものではなく、ピアノでの表現方法に手を加えた」と述べており、ブラームスもそれを意に介さないだろう、という趣旨の言葉も残しています。華やかで聴かせどころの多い、演奏会映えする編曲と言えるでしょう。
J.S.バッハ「シャコンヌ」の他の左手編曲と比較する
【ピアノ】左手のみで演奏するJ.S.バッハ「シャコンヌ」編曲版の種類と背景
‣ Wylie, Ruth Shaw(1916-1989) ルース・ショー・ワイリー
ルース・ショー・ワイリー(1916年シンシナティ生まれ、1989年没)はアメリカの作曲家・教育者です。イーストマン音楽学校で1943年に作曲の博士号を取得しており、同校で作曲の博士号を取得した最初の女性とされています。指導を受けたバーナード・ロジャースとは生涯にわたって交流が続きました。その後ウェイン州立大学で作曲の教授として長く後進を育成し、即興的な室内楽アンサンブルへの取り組みでも知られています。
· Soliloquy for Piano, Left Hand, Op.23
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:左手のためのソリロクイ(独白) Op.23
作曲年:1966年
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
委嘱:George Osius
初演:George Osius、ローレンス大学(アップルトン、ウィスコンシン州)、1966年
収録:Ruby Morgan 編「An Anthology of Piano Music for the Left Hand Alone」(2021年)
右手を負傷した元教え子のジョージ・オシウスへの献呈作品です。
ワイリー自身は「freely recitative; with bitter introspection(自由なレチタティーヴォ風;苦みを帯びた内省とともに)」と説明しています。それもあり、テンポの揺れのニュアンスが比較的多く指示されているのが特徴と言えるでしょう。
深い低音は度々用いられていますが、高音域の使用が少なく、全体的に中低域を中心とした響きを重視した仕上がりになっています。
Ruby Morgan(2021年のアンソロジー解説)によれば、作曲家としてのワイリーは新古典主義的な出発点から、動機の継続的な発展へと書法を進化させており、このソリロクイはその転換期に位置する作品とされています。
‣ Zichy, Géza(1849-1924) ゲザ・ジチー
ゲザ・ジチー(1849-1924)はハンガリーの伯爵で、若年期の狩猟事故により右腕を失ったピアニストです。その後も演奏活動を続け、左手のみによる演奏技巧を高度な水準まで磨き上げました。リストとも親交があり、左手独奏のためのレパートリーを自ら開拓した先駆的な存在の一人として知られています。
ジチーについてさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くジチー:片腕だけで演奏会を切り開いた伯爵
· Original Works
– Six Etudes
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第3曲 アデルのワルツ 1-8小節)

邦題:6つの練習曲
出版:1885年頃
演奏時間:全曲合計 約24分(3分、1分、4分10秒、5分、6分、4分40秒)
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
構成
1. Sérénade(セレナード)
2. Allegro vivace
3. Valse d’Adèle(アデルのワルツ)
4. Étude(練習曲)
5. Rhapsodie hongroise(ハンガリー狂詩曲)
6. Le Roi des Aulnes(シューベルト「魔王」編曲)
リストに捧げられ、リスト自身が序文を書いた曲集。ジチーとリストの交流が本格化した時期に生まれた作品群で、第3曲「アデルのワルツ」はリストが後に両手版に編曲したことでも知られています。第1曲「セレナード」は両手用の楽曲と見まがう書き方で、高音域と低音域をほぼ同時に扱う箇所が続きます。
– Four Etudes
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1曲 1-4小節)

邦題:4つの練習曲
作曲:1885年頃
演奏時間:全曲合計 約9分30秒(2分30秒、1分50秒、1分30秒、3分)
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
構成
1. Etude de Concert
2. Capriccio
3. Allegretto grazioso
4. Wiener Spässe(ウィーンの冗談)
ジチーが自身の演奏会で実際に取り上げていた作品群。第4曲「ウィーンの冗談」はレヴェンタール編のアンソロジーに収録されており、4曲の中では最も広く知られています。第4曲にはカデンツァ風のパッセージが含まれており、演奏会映えする書き方になっています。
– Sonata
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1楽章 1-2小節)

邦題:左手のためのピアノソナタ
出版:1887年
演奏時間:約14分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
構成
第1楽章 Allegro
第2楽章 Andante serioso
第3楽章 Allegro con brio
ライネッケのソナタと並ぶ、19世紀における左手独奏ピアノソナタの最初期の一つ。3楽章構成で、第2楽章の書き出しにはシューベルトのピアノ曲を思わせる温かみがあります。第3楽章にはカデンツァ風のパッセージも現れ、演奏会を意識した側面も持っています。
後の左手作品に見られるような「片手の運動原理を前提とした書法」とは異なり、両手用の書法を左手用に転換したような印象が残る部分があるのは否めません。左手音楽がまだ発展途上にあった時代の記念碑的な作品と言えるでしょう。
– Deux Morceaux de Piano pour la main gauche seule
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、ディヴェルティメント 1小節目)

邦題:2つの小品
出版:出版年不詳
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
構成
1. Sérénade(セレナード)
2. Divertimento(ディヴェルティメント)
2曲のうち演奏効果が高いのはディヴェルティメントですが、全編にわたって同型の分散和音が続くため、エチュード的な性格も強い作品です。鍵盤の広い音域を活かした華やかな作品です。
– Konzert in E-flat major
邦題:ピアノ協奏曲 変ホ長調
出版:1895年
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(協奏曲)
献呈:イザベラ大公妃殿下
構成
第1楽章 Energico
第2楽章 Andante al Ongarese
第3楽章 Allegro con brio
左手のピアニスト自身が作曲した最初の左手協奏曲とされています。厚みのある和音、オクターブ、全音域にわたる跳躍が続く、技術的要求の高い作品です。第2楽章はハンガリー風の書き方で、ロマのヴァイオリンやツィンバロンを思わせる音色が現れます。ソロとオーケストラが対話的に進む構成をとっており、全3楽章にわたってソロの見せ場が随所に設けられています。
· Arrangements
– Chaconne by J.S. Bach for the left hand alone
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1–5小節)

邦題:J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ(左手独奏編曲版)
出版年:1883年
演奏時間:約17分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)
1883年出版。ジチーがJ.S.バッハの原曲から直接編んだのではなく、ヨアヒム・ラフによる両手版ピアノ編曲を下敷きとして左手用に書き直したものとされています。さらにそのラフ版自体、フランツ・リストが着手しながら未完に終わらせたものの影響下にある可能性も指摘されており、複数の編曲の流れが交わって成立した一作と位置づけられます。
J.S.バッハ「シャコンヌ」の他の左手編曲と比較する
【ピアノ】左手のみで演奏するJ.S.バッハ「シャコンヌ」編曲版の種類と背景
– Polonaise für die linke Hand, Op.40 No.1 by Frédéric Chopin
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1–3小節)

邦題:ショパン:ポロネーズ イ長調 Op.40 No.1(左手独奏版)
出版:1883年頃
演奏時間:約3分50秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)
ショパンの「軍隊ポロネーズ」の左手独奏版です。編曲の方針上、全体的にリズムの間延びが目立つ箇所もありますが、41-48小節付近は左手の運動特性をよく活かした自然な書き方になっており、演奏しやすくなっています。
– Le Roi des Aulnes (Erlkönig). Arrangement of a Schubert lied
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

邦題:シューベルト:魔王(左手独奏版)
出版:1885年頃
演奏時間:約4分40秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)
シューベルトの歌曲「魔王」の左手独奏編曲版で、ジチーとリストの交流が始まるきっかけとなった作品です。後に6つの練習曲集の第6曲としても収録されています。
– Fantasie über Motive aus R. Wagners Tannhäuser
邦題:ワーグナー:タンホイザーによる幻想曲(左手独奏版)
出版:1883年頃
演奏時間:約15分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)
ワーグナーのオペラ「タンホイザー」の主題を用いた左手独奏のための幻想曲です。演奏時間は約15分に及び、アルカンのOp.76-1と並んで左手独奏作品の中では大規模な部類に入ります。
– Liszt: Liebesträume No.3
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1–2小節)

邦題:リスト:愛の夢 第3番(左手独奏版)
出版:未出版(IMSLPに手稿譜より採譜した校訂版として公開)
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)
主要な左手作品事典には掲載されていない、未出版の編曲。冒頭に原曲にはない幻想的な分散和音による4小節の序奏が付け加えられており、その後に有名な主題が現れます。
手稿譜が現存しており、ジチー自身の手によるものであることは確認されています。IMSLPでは「ジチーの手稿譜を原典とした採譜版」として公開されました。
‣ Ziegler, Hans(1896-?) ハンス・ツィーグラー
ハンス・ツィーグラー(1896年11月11日ゲッティンゲン生まれ、没年不詳)はドイツの作曲家・音楽教育者です。ミュンヘン大学とテュービンゲン大学で哲学と音楽学を修め、1920年以降はテュービンゲンを拠点に音楽教師として活動しました。
· Klage
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:嘆き
作曲年:不明
演奏時間:約1分(16小節)
難易度:ツェルニー30番入門程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
ラルゲットへの序奏的な役割も果たしており、2曲セットで演奏されることを前提とした作品。わずか16小節の小品ですが、その中で複数の拍子変化が要求されます。d-mollを感じさせる音遣いながら最後まで主和音を聴かせないモーダルな書法で、調性感をあえて宙吊りにしたまま曲が閉じます。
· Larghetto
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:ラルゲット
作曲年:不明
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
6/8拍子によるモーダルな作品です。機能和声の枠からはみ出した半音階的な和声が続くため、近現代の音楽に馴染みがないと最初はとっつきにくさを感じるかもしれません。ただ、d-mollの主題が繰り返し戻ってくることで曲全体にメリハリが生まれており、聴き手の拠り所となっています。
ゲオルギイ編の楽譜集では、このラルゲットのペダリングについて詳しい文章解説が添えられており、学習上の参考になります。
‣ Zilcher, Hermann(1881-1948) ヘルマン・ツィルヒャー
ヘルマン・ツィルヒャー(1881年フランクフルト生まれ、1948年ヴュルツブルク没)はドイツの作曲家・ピアニスト・指揮者です。フランクフルトで音楽を学んでピアニストとしてデビューし、1920年からヴュルツブルク音楽学校で教授と指揮者の両方を務め、同地の音楽界を長年にわたって支えました。作風は後期ロマン派の流れに属しており、100曲以上の作品を世に出しています。
· Präludium
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-6小節)

邦題:前奏曲
作曲年:不明
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
備考:左右どちらの手でも演奏可能
ブラームスを思わせる叙情性を持つ作品。約4分の中に多彩な書法とテンポ変化による場面転換がバランスよく盛り込まれており、また演奏時の身体の動きが考慮された書き方になっています。
どちらの手でも演奏できる作品ですが、音域が中低域に重心を置いているため、左手での演奏のほうが難易度は低く感じられるでしょう。
► 終わりに
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