- 左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 D-F
- ► はじめに
- ► 作曲家別 D-F
- ‣ Dreyschock, Alexander(1818-1869) ドライショク
- ‣ Dubugnon, Richard(1968- ) デュビュニョン
- ‣ Eckartz, Hubert(1903-1962) フーベルト・エカールツ
- ‣ Escande, Pablo(1971- ) エスカンデ
- ‣ Foote, Arthur(1853-1937) アーサー・フット
- ‣ Fumagalli, Adolfo(1828-1856) フマガッリ
- · Notturno-Studio Op.2
- · Studio da Concerto: nell’opera Lucia di Lammermoor Op.18 No.1
- · Studio da Concerto: coro nell’opera I Lombardi di Verdi “o Signore! del tetto natio” Op.18 No.2
- · “Casta diva che inargenti” nell’opera Norma di Bellini Op.61
- · Andante nel Mosé (Mi manca la voce) Op.102
- · Grande Fantaisie sur Robert le Diable de Meyerbeer Op.106
- ► 終わりに
左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 D-F
► はじめに
本ページでは、D-Fで始まる作曲家の左手ピアノ作品をまとめています。作曲作品・編曲作品・教本・室内楽・協奏曲などを、作曲家ごとに整理しています。
作品を探す際は、以下のアルファベット別ページもご利用ください。
► 作曲家別 D-F
‣ Dreyschock, Alexander(1818-1869) ドライショク
· Variations pour la Main gauche seul Op.22
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:左手のための変奏曲 Op.22
作曲年:1843年頃
演奏時間:約7分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
導入部は朗唱風のパッセージから始まり、アンダンテ・コン・エスプレッシオーネの主題が提示され、アルベルティ・バスの伴奏に乗った叙情的なメロディーに続いて、3つの変奏とフィナーレが展開されます。
全曲を通して音域は幅広く取られていますが、すべて一段の楽譜で書かれているのが特徴と言えるでしょう。
この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くドライショク:片手で二人分を弾いた男
· God save the Queen, variation Op.129
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」による大変奏曲 Op.129(左手のための)
作曲年:1854年以前
演奏時間:約8分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
タイトルのとおり英国国歌を素材にとった変奏曲です。
音楽的な構成や主題変容を味わう作品というよりは、超絶技巧そのものを楽しむパフォーマンスピースとしての性格が強いように感じます。
この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くドライショク:片手で二人分を弾いた男
‣ Dubugnon, Richard(1968- ) デュビュニョン
リシャール・デュビュニョンは1968年スイス・ローザンヌ生まれのフランス系スイス人作曲家です。モンペリエ大学で歴史学を学んだのち、20歳から本格的に音楽の道に進み、コントラバスと作曲を学び始めました。1990年から95年までパリ国立高等音楽院(CNSM)に学び、コントラバス、対位法、フーガの各分野で賞を得ています。1997年にロンドンへ移り、王立音楽アカデミーで作曲の研鑽を積んだのち、同校で7年間にわたり作曲を教えました。
芸術アカデミーのピエール・カルダン賞をはじめ数々の賞を受けており、作品は各国で演奏されているほか、Naxosレーベルへの録音は英仏スイス各国のメディアで高く評価されています。コントラバス奏者としても現代音楽のアンサンブルで活動し、フランス放送(Radio France)などからの委嘱も受けています。
· Fugue pour la Main Gauche, Op.46
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:左手のためのフーガ Op.46
作曲年:2009年頃
演奏時間:約6分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
委嘱:ピアノ・キャンパス・コンクール(Concours Piano Campus)2009年度大会の委嘱作品
作品の背景
フランスのピアノ・キャンパス・コンクール2009年度大会のために委嘱された作品です。
楽譜中には「L’usage de la pédale est à l’appréciation de l’interprète, sauf aux endroits où elle est exigée.(ペダルの使用は、明確に指示されている箇所を除き、演奏者の判断に委ねられる)」旨の注記など、言葉による指示が比較的多く書き込まれているのが特徴です。
音楽的な特徴
無調の語法によるフーガですが、主題や応答の出現箇所が楽譜上に明示されており、学習者にとって構造をたどりやすい書き方になっているのが特徴と言えるでしょう。
古典的なフーガの伝統にならい、シンプルな主題の提示から曲を始めますが、後半にかけて音響が徐々に充実し、ホモフォニックな書法も増えながら fff に至るクライマックスを築きます。全体を通して不意に現れるスタッカートや同音連打の音型も、本作の味わいの一つになっています。
‣ Eckartz, Hubert(1903-1962) フーベルト・エカールツ
フーベルト・エカールツ(1903年7月28日ヴッパータール生まれ、1962年没)はドイツの作曲家・指揮者・音楽教育者です。ミュンヘン音楽院でヨーゼフ・ハースに作曲を学んだのち、ベルリンの劇場で合唱指揮者を務め、その後ドルトムントで音楽学校での指導を中心に活動しました。
· Capriccio from Acht Klavierstücke
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:カプリッチョ(8つのピアノ小品 より)
作曲年:不明
演奏時間:約1分20秒
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
備考:左右どちらの手でも演奏可能
Vivo moltoの急速なスケルツォ的小品で、5/8・4/8・3/8・2/8と拍子が頻繁に切り替わる変拍子が特徴です。急速なテンポながら、極端な跳躍は多くありません。
サウンド面での際立った特徴として、メロディが増2度進行する箇所が随所に現れ、エキゾチックな色合いをもたらしています。また突然4度和声のパッセージが挟み込まれるなど、予想を外す場面転換も盛り込まれており、急速な曲想をより面白いものにしています。
‣ Escande, Pablo(1971- ) エスカンデ
パブロ・エスカンデは1971年アルゼンチン生まれの作曲家です。ブエノスアイレスの音楽院で音楽教師・ピアニストとしての課程を修めたのちオランダに渡り、ジャック・オッホのもとで古楽奏法(フォルテピアノ、チェンバロ、通奏低音)を、続いてラファエル・レイナのもとで作曲とオーケストレーションを学び、アムステルダム音楽院(旧スウェーリンク音楽院)作曲科を修了しました。以後、オランダをはじめオーストラリア、アメリカ、スペイン、日本など各国から委嘱を受け、独奏曲から室内楽、オラトリオ、オペラ、バレエ音楽まで幅広く手がけています。
ピアニストの舘野泉氏との出会いをきっかけに、《ディヴェルティメント》をはじめとする左手のための作品を相次いで委嘱・作曲しており、これらは高い評価を得ています。
· Divertimento for Piano Left Hand
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:ディヴェルティメント ピアノ(左手)のために
作曲年:2009年頃
演奏時間:全曲合計 約18分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
委嘱:舘野泉「左手の文庫」助成作品
構成(全4楽章)
I. Prelude(プレリュード) 約3分30秒
II. Variations upon “La rosa enflorece”(ヴァリエーション「セファルディム」) 約7分
III. Adagio(アダージョ) 約5分20秒
IV. Dance(ダンス) 約2分30秒
作品の背景
エスカンデ自身の言葉によれば、この作品は全楽章が4度音程で関連づけられ、8つの調を経て曲を締めくくるように設計されており、様式的には新バロック的な性格を持ちながらギリシャ旋法を取り入れているといいます。第2楽章の主題には、ユダヤ・スペイン系(セファルディム)に古くから伝わる歌「La rosa enflorece(薔薇は花咲く)」が用いられています。
音楽的な特徴
第1楽章は緩やかな導入部から次第に緊張を高めてアレグロへと至る、対位法的な二部形式の音楽です。第2楽章は主題と4つの変奏からなり、4番目の変奏でクライマックスを迎えたのちカデンツァを経て主題が回帰します。第3楽章のアダージョは、作曲者自身が静寂の中での自己の経験や日本の庭園から得たイメージを込めたという、穏やかで平和な曲想を持っています。終曲のダンスはアダージョと対照的に、推進力に満ちたABA形式の音楽で、作品全体を活気とともに締めくくります。
‣ Foote, Arthur(1853-1937) アーサー・フット
アーサー・フット(1853年セイラム生まれ、1937年ボストン没)はアメリカの作曲家・ピアニストで、ニューイングランドを代表する音楽家の一人です。1875年にハーバード大学で音楽の修士号を取得しており、これはアメリカで同大学から授与された最初の音楽修士号でした。アメリカで音楽教育を完結させたほぼ唯一の世代の作曲家でしたが、30歳でヨーロッパに渡りスティーヴン・ヘラーに師事した経験もあります。Op.37の3曲はヘラーへの献呈作品です。
· Petite valse pour la main gauche, Op.6, No.4
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:左手のための小さなワルツ Op.6 より 第4番
出版:1885年
演奏時間:約2分40秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
備考:Op.6 全4曲のうち第4番のみが左手のための作品
全曲が1段譜で書かれた、メランコリックでシンプルなワルツです。メロディがワルツの伴奏音型より低い音域に来たり、高い音域へ移ったりと、声部の位置が何度も入れ替わることで変化が生まれています。子どもにも取り組みやすい親しみやすい作品と言えるでしょう。
· Drei Clavierstücke für die linke Hand allein, Op.37
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1曲 1-3小節)

邦題:左手のための3つのピアノ小品 Op.37
出版:1897年
演奏時間:全曲合計 約8分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
構成
I. Prelude-étude(プレリュード・エチュード) II. Polka(ポルカ) III. Romanze(ロマンス)
3曲を通じて音楽的なバランスが良く、極端に難しい箇所がないため、左手演奏に少し慣れてきた段階の方に適した作品です。演奏会でも使いやすい規模で、ダイナミクスの幅も広く取られています。
I. Prelude-étude
・バロック的な語法を基調としながら、自由なレチタティーヴォ風の場面などが組み合わさっている
・締めくくり方がやや唐突な印象がある
・右手用に簡略化された版も存在する
II. Polka
・半音階的な書法による三部形式の小品
・軽さを伴い、前後2曲と対照的
・メロディ以外の伴奏部分は特別凝っておらず、スケールかアルペジオが大半を占める
III. Romanze
・半音階的な和声を多用した一曲
・3曲の中では、規模・内容ともに最も充実している
・単曲を取り出して演奏する場合は、このロマンスがおすすめ
‣ Fumagalli, Adolfo(1828-1856) フマガッリ
· Notturno-Studio Op.2
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、Andante部分より)

邦題:ノットゥルノ=スタジオ Op.2
作曲年:不明
演奏時間:約8分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
学生時代に書かれた習作とみられる作品です。リコルディから出版されていますが、詳細な資料が少ない作品となっています。
フマガッリをさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· Studio da Concerto: nell’opera Lucia di Lammermoor Op.18 No.1
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:スタジオ・ダ・コンチェルト(ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》より) Op.18 No.1
編曲年:不明
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)
ドニゼッティのオペラ《ルチア》の終幕、テノールが歌うアリアを題材にしています。金管楽器の導入部を忠実に受け継ぎつつ、主旋律のあいだに2つのカデンツァを織り込んだ構成です。旋律そのものの美しさが作品を支えていますが、アルペジオの扱いがやや単調になる場面も見受けられます。
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【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· Studio da Concerto: coro nell’opera I Lombardi di Verdi “o Signore! del tetto natio” Op.18 No.2
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:スタジオ・ダ・コンチェルト(ヴェルディ《十字軍のロンバルディア人》より「おお、故郷の屋根よ」) Op.18 No.2
編曲年:不明
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)
ヴェルディのオペラから合唱曲を素材にとっています。終盤にオクターブのグリッサンドが現れる点が特徴的です。また、トリルと和音を左手だけで同時にこなす書法も含まれており、片手演奏の可能性を引き出そうとする工夫が随所に見られます。音楽的な魅力という点ではやや控えめな作品と言えるでしょう。
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【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· “Casta diva che inargenti” nell’opera Norma di Bellini Op.61
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-5小節)

邦題:「清らかな女神(カスタ・ディーヴァ)」(ベッリーニ《ノルマ》より) Op.61
編曲年:不明(1851年出版)
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品(独奏)
トマジーニ夫人に献呈。フマガッリの左手作品のなかで最も広く知られる一曲で、演奏会用トランスクリプションとして時折耳にします。
オクターブを多用した重厚な書法、随所に挿入されるカデンツァ、幅広い音域を縦横に駆け巡るアルペジオが、豊かな音響を生み出します。
ただし、抒情的な箇所の伴奏処理では原曲の管弦楽パターンをほぼそのまま踏襲しており、左手に適した音型へ置き換える創意に欠けるという批評もあります。その結果、第1セクションだけで16か所もの大きな跳躍が生じており、これは練習で解決できる種類の問題ではありません。不滅の旋律が作品を成立させているとはいえ、こうした構造上の課題も無視できないでしょう。
フマガッリをさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· Andante nel Mosé (Mi manca la voce) Op.102
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:アンダンテ「声がない(Mi manca la voce)」(ロッシーニ《モーゼ》より) Op.102(遺作)
編曲年:不明
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品(独奏)
ロッシーニのオペラ《モーゼ》のアリアに基づく作品で、全曲にわたって3段譜が用いられています。左手作品において3段譜が通篇に使われることは非常に珍しく、フマガッリの表現に対する意欲がうかがえます。音響的には充実していますが、原曲の管弦楽伴奏に必要以上に縛られているために極端な跳躍が頻出し、音楽の流れにぎこちなさが生じています。
なお、「One Handed」(ドナルド・L・パターソン 編)では “Op.100 No.19” と記載されていますが、実際の楽譜で Op.102(遺作)と確認されているため、パターソンの記載は誤りと考えられます。
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【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
· Grande Fantaisie sur Robert le Diable de Meyerbeer Op.106
譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-8小節)

邦題:《ロベール・ル・ディアーブル》による大幻想曲(マイアベーア) Op.106
編曲年:不明
演奏時間:約15分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)
6曲のなかで規模・難度ともに最大の作品で、リストへの献呈という選択が、フマガッリ自身のこの曲への自信を物語っています。
鍵盤全体を席巻する高速のオクターブ、和音、跳躍が連続し、終盤にはオクターブのグリッサンドも登場します。随所に力強い書き方が光る一方、各セクションをつなぐ転換部は唐突で工夫に乏しく、形式的な仕上がりとしては物足りないという評価も残されてきました。
左手一本の限界に挑んだ記念碑的な作品と言えますが、音楽的な完成度という観点では評価が割れるところです。
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【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」
► 終わりに
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