- 左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 J-L
- ► はじめに
- ► 作曲家別 J-L
- ‣ Jacob, Gordon(1895–1984) ゴードン・ジェイコブ
- ‣ Janáček, Leoš(1854-1928) ヤナーチェク
- ‣ Joseffy, Rafael(1852-1915) ヨゼフィ
- ‣ Kalkbrenner, Frédéric(1785-1849) カルクブレンナー
- ‣ Kaprál, Václav(1889-1947) ヴァーツラフ・カプラール
- ‣ Kapustin, Nikolai(1937-2020) カプースチン
- ‣ Karkoff, Maurice(1927-2013) モーリス・カルコフ
- ‣ Kessler, Minuetta(1914-2002) ミヌエッタ・ケスラー
- ‣ Kirchner, Leon(1919-2009 ) レオン・カーシュナー
- ‣ Klauwell, Otto(1851-1917) オットー・クラウヴェル
- ‣ Knorr, Ernst-Lothar von(1896-1973) エルンスト=ロタール・フォン・クノル
- ‣ Köhler, Louis Heinrich(1820-1886) ケーラー
- ‣ Korngold, Erich Wolfgang(1897-1957) コルンゴルト
- ‣ Kortchmariov, Klimenty(1899–1958) クリメンティ・コルチマリョフ
- ‣ Krentzlin, Richard(1864-1956) リヒャルト・クレンツリン
- ‣ Krogmann, Carrie Williams(1860-1943) キャリー・ウィリアムズ・クロークマン
- ‣ Kulla, Hans(1910-1956) ハンス・クッラ
- ‣ Kunkel, Charles(1840-1923) チャールズ・クンケル
- ‣ Langlois, Théo テオ・ランロワ
- ‣ Lang, Walter(1896-1966) ヴァルター・ラング
- ‣ Lauer, Elizabeth(1932- ) エリザベス・ラウアー
- ‣ Le Beau, Luise Adolpha(1850-1927) ル・ボー
- ‣ Leimer, Kurt(1920-1974) クルト・ライマー
- ‣ Leschetizky, Theodor(1830-1915) レシェティツキー
- ‣ Levine, Jeffrey(1942– ) ジェフリー・レヴィン
- ‣ Levin, Miron ミロン・レヴィン
- ‣ Lilien, Ignace(1897-1964) イグナーツ・リリエン
- ‣ Lipatti, Dinu(1917-1950) リパッティ
- ‣ Liszt, Franz(1811-1886) リスト
- ‣ Louvier, Alain(1945- ) アラン・ルヴィエ
- ‣ Lovell, Joan Isabel ジョーン・イザベル・ロヴェル
- ‣ Luening, Otto(1900-1996) オットー・ルーニング
- ‣ Lysberg, Charles-Samuel Bovy(1821-1873) シャルル=サミュエル・ボヴィ=リスベルク
- ► 終わりに
左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 J-L
► はじめに
本ページでは、J-Lで始まる作曲家の左手ピアノ作品をまとめています。作曲作品・編曲作品・教本・室内楽・協奏曲などを、作曲家ごとに整理しています。
作品を探す際は、以下のアルファベット別ページもご利用ください。
► 作曲家別 J-L
‣ Jacob, Gordon(1895–1984) ゴードン・ジェイコブ
1895年にロンドンで誕生し、1984年没したゴードン・ジェイコブ(ゴードン・ヤコブ)は、イギリスの作曲家であると同時に、王立音楽カレッジで長年教壇に立ち、マルコム・アーノルドら多くの優秀な門下生を育て上げた教育者です。純粋な音楽素材をいかに論理的かつ技術的に構築するかに強い関心を抱いていました。とりわけ管楽器の特性を活かした協奏曲や室内楽曲を数多く残しています。
また、その卓越した楽器法の知識は著述活動にも結実しており、日本でも「管弦楽技法(音楽之友社)」の著者として管弦楽法を学ぶ人々に広く親しまれています。
· Concerto for Three Hands on One Piano [RH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:1台のピアノのための3手の協奏曲
出版年:1969年
演奏時間:約20分
分類:オリジナル作品(協奏曲)
シリル・スミスとフィリス・セリックの二人のために書かれた作品で、あくまで「1台のピアノを3本の手で分け合って演奏する」という編成をとっている点が特徴です。
協奏曲ではありますが、オーケストラパートの主張もあり、聴きごたえのある大作になっています。全体的に諧謔的な雰囲気があるのも特徴と言えるでしょう。
シリル・スミスについて詳しく知る
【ピアノ】片手音楽から読み解くシリル・スミス:左腕の自由を失ったピアニストが拓いた「3手」の音楽
‣ Janáček, Leoš(1854-1928) ヤナーチェク
レオシュ・ヤナーチェク(1854年フクヴァルディ生まれ、1928年モラフスカー・オストラヴァ没)はチェコを代表する作曲家の一人で、スメタナやドヴォルザークと並ぶ存在として評価されています。オペラの分野で特に重要な業績を残しており、「カーチャ・カバノヴァー」「利口な女狐の物語」「マクロプロス事件」「死者の家から」などの後期オペラ群は、1917年以降の創作の充実期に書かれたものです。カプリッチョもこの晩年の創作期に属する作品で、ヤナーチェクが生前に立ち会った「最後の」自作初演となりました。
· Capriccio pro klavír (levou rukou) a dechový soubor [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1曲 1-4小節)

邦題:左手ピアノと管楽アンサンブルのためのカプリッチョ
作曲年:1926年
演奏時間:約17分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(室内楽)
献呈:なし(ホルマン向けに書かれたが献呈表記なし)
構成(全4楽章)
I. Allegro
II. Adagio
III. Allegretto
IV. Andante
作品の背景
第一次世界大戦での戦傷により右手に障がいを負ったチェコのピアニスト、オタカール・ホルマン(1894-1967)が作曲のきっかけを作った作品です。ホルマンはヴィトゲンシュタインと同様に左手のためのレパートリーを求め、ヤナーチェクをはじめマルティヌー、シュールホフ、フェルスターらに作品を依頼しました。
ヤナーチェクは当初、作曲に乗り気ではありませんでした。「片足で踊るようなものだ」と述べて断った、という話が伝わっています。しかし結局1926年秋に完成させ、翌1927年5月にスコアをホルマンに送っています。なお、ヤナーチェクはホルマンへの初演権を明示的には与えておらず、献呈表記も付しませんでした。それでもホルマンが学習を進め、1928年3月2日の初演を実現させています(プラハ、スメタナ・ホール ヤロスラフ・ジードキー指揮、チェコ・フィルハーモニーのメンバー、ホルマンのピアノ)。ヤナーチェク自身も列席したこの演奏会は、同年7月の死去前に本人が立ち会った「最後の」自作初演となりました。
なお、ホルマンの負傷については「右腕を失った」と記述している資料もありますが、より詳細な資料によれば、右手の中手骨損傷であり、腕を完全に切断したわけではないとされています。
音楽的な特徴
非常に個性的な編成で、軍楽を連想させる性格を持っています。ピアノパートは、難所にはossiaが示されています。
左手ピアノを含む室内楽作品は近現代作品が大部分を占めるので、とっつきにくい印象を持っている方もいることでしょう。一方、この作品は非常に耳馴染みがよく、左手ピアノ室内楽の「聴く」入門にも適した作品です。特に「II. Adagio」は、メランコリックな美しさとユーモアを兼ね備えた、最も親しみやすい楽章となっています。
作曲のきっかけを作ったオタカール・ホルマンについて、さらに詳しく知る
‣ Joseffy, Rafael(1852-1915) ヨゼフィ
· J.S. Bach: Partita No.3, BWV1006 Gavotte [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

邦題:J.S.バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006 より ガヴォット」:ヨゼフィによる左手独奏用編曲版
作曲年:1720年(ヨゼフィ編曲版:1880年出版)
演奏時間:約3分30秒
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)
ラファエル・ヨゼフィ(1852-1915年)は、ヴァイマルでリストに師事したハンガリー出身のピアニストです。1879年にアメリカでデビューを果たし、そのまま同地に拠点を移しました。
原曲への忠実度は比較的高く、旋律は主に単音で書かれています。ヨゼフィはいくつかの箇所で和音に音を追加したり、独自の低音声部を付け加えたりしていますが、装飾音の処理にはやや不自然な部分もあることが指摘されてきました。
Ruby Morgan 編曲版について
2021年、Ruby Morgan編の左手独奏曲アンソロジー「An Anthology of Piano Music for the Left Hand Alone」が出版されました。このアンソロジーには、ヨゼフィ版をもとにMorganがさらに手を加えた楽譜が収録されています。
主な改訂点は以下のとおりです:
・演奏上の難点となっていた装飾音を整理・削除
・ヴァイオリン原典譜のアーティキュレーションを積極的に反映
・リュート版と考えられる「BWV1006a」の要素を部分的に取り入れた
‣ Kalkbrenner, Frédéric(1785-1849) カルクブレンナー
1785年、カッセルからベルリンへの旅の途上で生まれたカルクブレンナーは、独仏にルーツを持つピアニスト・教師・作曲家です。パリ音楽院でピアノと和声法を学び、ウィーンでハイドンにも師事しました。
1814年末の渡英を機に人気を確立し、1825〜35年にはパリ楽壇の第一人者と目されるまでになります。プレイエルが同時代のクラーマーと並べて称賛した書簡も残るほどでした。教師としても屈指の存在でしたが、名声欲や金銭への執着を批判する声も同時代からありました。プレイエル社のピアノ製造にも出資し、実業家的な一面も持っています。
1831年のメソッド Op.108では、前腕をレールに固定して指の独立性を鍛える自作の練習器具「ハンドガイド」を紹介。腕を固定し指を独立させるという発想が、彼の奏法の核心でした。
1830年代半ば以降、ショパンやリストら新世代の台頭で人気は陰り、痛風と神経の病もあって1839年頃には表舞台をほぼ退きます。それでも教育・作曲は晩年まで続け、1849年6月10日、ショパンと同じ年にアンギャン=レ=バンで没しました。
カルクブレンナーについてさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くカルクブレンナー:左手のための最初のフーガを遺した名ピアニスト
· Fugue à quatre parties pour la main gauche seule [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-8小節)

邦題:左手のための4声のフーガ
作曲年:1831年頃(1831年出版)
演奏時間:約1分30秒
難易度:ツェルニー30番修了〜40番入門程度
分類:オリジナル作品(独奏)
全12曲からなる「メソッド Op.108」の第8曲が、「左手のための4声のフーガ」で、左手のみのための最初のフーガという説が有力になっています。1831年に出版されました。正確な作曲年は定かではありませんが、1831年、またはその直前に書かれたものと考えられます。
テンポが速い4声のフーガでありながらも、シンプルな対位法で書かれているので、取り組みやすい作品として左手作品の中でも知られている一曲です。
この作品の演奏法をさらに詳しく知る
‣ Kaprál, Václav(1889-1947) ヴァーツラフ・カプラール
ヴァーツラフ・カプラールは、チェコのピアニスト・作曲家です。ブルノでヤナーチェクに作曲を師事したのち、プラハでヴィーチェスラフ・ノヴァークに、パリではアルフレッド・コルトーにピアノの解釈法を学びました。1935年にはブルノ音楽院の作曲科教授に就任しました。
1942年にはゲシュタポに逮捕され強制収容所に送られるという苦難も経験しています。
· Con duolo [LH]
邦題:コン・ドゥオーロ(左手のための6つの小品)
作曲年:1926年
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:オタカール・ホルマン
第一次世界大戦で右手を負傷し、左手のピアニストとして活動したオタカール・ホルマンのために書かれた作品です。楽曲の詳細については不明です。
オタカール・ホルマンについてさらに詳しく知る
‣ Kapustin, Nikolai(1937-2020) カプースチン
ニコライ・カプースチン(1937年ウクライナ・ゴルロフカ生まれ、2020年モスクワ没)はウクライナ出身のロシアの作曲家・ピアニストです。14歳でモスクワに移り、アウレリアン・ルバフとアレクサンドル・ゴルデンヴァイゼルにピアノを師事しました。モスクワ音楽院在学中に最初の協奏曲を作曲・初演するなど、早くから頭角を現しています。卒業後はオレグ・ルンドストレム・ビッグバンドのメンバーとして活動し、1980年代からは作曲に専念しました。ジャズの語法を古典的な形式の中に組み込んだ独自のスタイルで知られており、ピアノ音楽を中心に管弦楽・室内楽も手がけています。
· Seven Polyphonic Pieces for the Left Hand, Op.87 [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:左手のための7つの対位法的小品 Op.87
作曲年:1997年
演奏時間:全曲合計 約11分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
カプースチンには「10のインヴェンション Op.73」や「24の前奏曲とフーガ Op.82」など対位法的な作品が複数ありますが、Op.87も全曲ポリフォニックな書法で統一されています。フーガ、フゲッタ、カノンという形式を組み合わせた構成で、ジャズの和声語法と対位法的書法が共存しています。
| 番号 | 形式 | テンポ |
|---|---|---|
| 1 | Fuga (a 3 voci) 3声のフーガ | Allegretto(二分音符=92) |
| 2 | Fuga (a 3 voci) 3声のフーガ | Moderato(♩=104) |
| 3 | Canone alla Quarta 4度のカノン | Moderato(♩=96) |
| 4 | Fughetta (a 3 voci) 3声のフゲッタ | Andantino(♩=116) |
| 5 | Canone alla Terza 3度のカノン | Allegro(二分音符=88) |
| 6 | Fuga (a 3 voci) 3声のフーガ | Sostenuto(二分音符=76) |
| 7 | Fuga (a 2 voci) 2声のフーガ | Allegro(二分音符=120) |
第7曲は最も親しみやすいうえ、カプースチン独特の「再現部前の準備」など、この作曲家の作風を自然に体験できます。まず1曲だけ弾いてみたい方は、ここから始めてみるのがいいでしょう。
‣ Karkoff, Maurice(1927-2013) モーリス・カルコフ
モーリス・カルコフは、ストックホルム生まれ、同地没のスウェーデンの作曲家。ストックホルム音楽大学で学び、ブロムダール、ラーション、エルランド・フォン・コック、ホルンボー、ジョリヴェ、フォーゲルらに師事しました。1962年から1966年まで新聞ストックホルムス・ティドニンゲン紙の音楽評を担当し、1965年からはストックホルム市立音楽教員養成学校で理論と作曲を教えました。1977年にはスウェーデン王立音楽アカデミーの会員に選出されています。
· Drei Klavierstücke für die linke Hand(Tre pianostycken för vänstra hand), Op.46 [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:左手のための3つの小品
作曲年:1959年
演奏時間:約6分
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:コル・デ・フロート
構成(全3曲)
第1曲 Impromptu
第2曲 Intermezzo capriccioso
第3曲 Elegie(för vänsterhand)
音楽的な特徴
オランダのピアニスト、コル・デ・フロートのために書かれた作品です。無調語法による、シンプルで点描的な書法による3曲です。静寂や音と音の隙間における空気感などが魅力と言えるでしょう。強弱・アーティキュレーションが工夫されており、立体的な音楽となっています。
· Fantasia for the Left Hand, Op.193 [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:左手のための幻想曲
作曲年:1992年
演奏時間:約6分
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:トーマス・トランストロンメル(スウェーデンの詩人)
作品の背景
献呈先のトーマス・トランストロンメルは、1990年に脳卒中で右半身麻痺と失語の後遺症を負ったスウェーデンの詩人です。発症後も左手でピアノを弾き続けたことで知られ、彼のために複数の作曲家が左手のための作品を書いており、このカルコフの作品もその一つにあたります。
音楽的な特徴
冒頭は重々しい低音の不協和音から始まり、曲を通して非常にゆっくりとしたテンポが保たれており、一音一音の表情がはっきりと聴き取れるように書かれています。幻想的な雰囲気を持ちながら、大きなドラマが展開するような曲ではありません。
‣ Kessler, Minuetta(1914-2002) ミヌエッタ・ケスラー
ミヌエッタ・ケスラーは、ロシア・ゴメリ生まれのピアニスト・作曲家です。ジュリアード音楽院でアーネスト・ハッチソンやアニア・ドルフマンにピアノを、アイヴァン・ラングストロスに作曲を学び、卒業後も同校で教鞭を執っています。ニューヨーク・タイムズ紙からは「今日の若手ピアニストの中でも稀有な存在であり、単なるピアニストというよりむしろ音楽家というべき人物」と評されました。後年はマサチューセッツ州べルモントを拠点に、数百曲にのぼるピアノ曲・器楽曲・室内楽を残す一方、教育者としても精力的に活動しました。
· Evocation, Op.158 No.3 [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:エヴォケイション(喚起) Op.158-3
出版:1987年頃
演奏時間:約6分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
全米ペンウーマン協会(National League of American Pen Women)が主催した左手ピアノ作品コンクールで第1位を獲得した作品で、1988年の同協会総会で受賞が発表されました。
全体を通して沈鬱な雰囲気を帯びた作品で、中盤からはリズミカルな動きが加わるものの、メランコリックな性格は終盤まで色濃く残ります。曲の終わりは長三和音の強打によって締めくくられます。曲の数箇所で全音音階的な響きが顔をのぞかせ、音楽に独特のスパイスを添えている点が特徴の一つでしょう。
‣ Kirchner, Leon(1919-2009 ) レオン・カーシュナー
レオン・カーシュナー(1919年1月24日ニューヨーク州ブルックリン生まれ、2009年ニューヨーク州マンハッタン没)はアメリカの作曲家、ピアニスト、指揮者です。少年期にカリフォルニアへ移り、ロサンゼルス市立カレッジ在学中に作曲を志し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ではシェーンベルクに師事しました。
ヒンデミットやバルトーク、ストラヴィンスキーの影響から出発し、やがてシェーンベルクやベルクの美学へ傾倒します。「弦楽四重奏曲 第1番・第2番」でニューヨーク批評家賞を、「ピアノ協奏曲 第1番」でナウムバーグ賞を、「弦楽四重奏曲 第3番」でピュリッツァー賞を受賞しています。
· For the Left Hand(L.H.) [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
出版年:1995年
演奏時間:約7分20秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:レオン・フライシャー
初演:1995年12月6日、カーネギー・ホールにて、リオン・フライシャーの独奏により初演
本作は、右手に障がいを負い長らく左手のためのレパートリーに取り組んできたピアニスト、レオン・フライシャーのために書かれ、1995年にカーネギー・ホールで初演されました。ニューヨーク・タイムズ紙の批評では、この作品が持つ緻密な構成と、そこから生まれる自由な息づかい、そして情熱をたたえながらも洗練を失わない性格が評されています。
無調語法による作品ですが、カンタービレな旋律線を基調としており、同型の音型やモチーフの反復が随所に見られるため、聴感上のとっつきやすさがあります。要所にシンプルな和声の響きが差し込まれる瞬間もあり、無調作品としては耳に馴染みやすい部類に入ると言えるでしょう。
フライシャーのアルバム「All the Things You Are」に収録されています。
‣ Klauwell, Otto(1851-1917) オットー・クラウヴェル
オットー・クラウヴェルは、ドイツのランゲンザルツァ生まれ、ケルン没の作曲家・音楽学者です。ライプツィヒで学んだのちケルンに拠点を移し、ケルン音楽院で作曲を教えるかたわら、音楽著述家としても活動しました。「Geschichte der Sonate(ソナタの歴史)」(1899年)、「Geschichte der Programmusik(標題音楽の歴史)」(1910年)といった音楽史研究書を著したことでも知られています。カール・ライネッケに師事しました。
· Drei Stücke für die linke Hand allein, Op.34 [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

邦題:左手のための3つの小品 Op.34
作曲年:不明
出版年:1896年頃(プレート番号による推定)
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
構成(全3曲)
第1曲 Impromptu 演奏時間:約3分
第2曲 Mélodie 演奏時間:約3分30秒
第3曲 Scherzino 演奏時間:約1分10秒
第1曲 Impromptu
メロディに現れる付点リズムが、楽曲全体を通して特徴的な要素となっています。最後の9小節間は主音によるオルゲルプンクト(持続低音)となっており、曲の終わりへ向けて次第に落ち着いていきます。締めくくりは8分音符から4分音符へと音価が変化することで、書かれたリズムそのものが ritardando のような効果を生み出しているのが特徴的と言えるでしょう。
第2曲 Mélodie
シンプルな旋律の合間を、16分音符による細かなパッセージが縫うように続いていく、あやとりを思わせる作りの曲です。16分音符による伴奏形は、上行する箇所、下行する箇所、それらを組み合わせて山型の音型をつくる箇所など、場面ごとの表情に応じて使い分けられています。
第3曲 Scherzino
スタッカートが多用された、軽やかさのあるスケルツィーノ。3度音程の連続がサウンドとしても耳に残ります。どこか狩猟の音楽を思わせる性格を持った曲です。
‣ Knorr, Ernst-Lothar von(1896-1973) エルンスト=ロタール・フォン・クノル
エルンスト=ロタール・フォン・クノル(1896年1月2日アイトルフ生まれ、1973年10月30日ハイデルベルク没)はドイツの作曲家・音楽理論家・指揮者です。ケルン音楽院でヴァイオリン、音楽理論、指揮法を学び、ドイツ各地の音楽学校で教鞭を取りました。
· Serenade [LH/RH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:セレナーデ
作曲年:不明
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
備考:左右どちらの手でも演奏可能
内省的な性格を持つ作品で、ドリアやミクソリディアなどのスケールが随所に顔を見せ、独特の古風な色合いをもたらしています。全体を通じてルバートとテンポ変化に関する指示が豊富に書き込まれており、セレナーデという題名とも相まって、心の揺れ動きを音楽で表現しようとした意図が伝わってきます。
· Etude [LH/RH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:練習曲
作曲年:不明
演奏時間:約50秒
難易度:ツェルニー30番入門程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
備考:左右どちらの手でも演奏可能。1段譜で記されている
6/8拍子による無窮動的練習曲。基本的には単音のパッセージワークで成り立っていますが、わずかに多声となる部分もあり、曲の終盤では属音上と主音上のオルゲルプンクトが交互に登場する形が現れます。
冒頭にlegatoの指示がありますが、非和声音が多く登場するため、ペダルに頼らずに指でレガートを表現することが求められます。それが練習上の目的の一つと言えるでしょう。
‣ Köhler, Louis Heinrich(1820-1886) ケーラー
· Schule der linken Hand, Op. 302(School of the Left Hand) [LH]
邦題: 左手のための教本 Op.302
作曲年:幅広い年代の作品が収録されたアンソロジー
難易度:ツェルニー30番入門程度の作品から上級作品まで
分類:オリジナル作品+編曲作品(独奏)
この曲集には、ケーラーが作曲・編曲した左手作品が複数収録されています。
| 曲名・内容(日本語) | 原題(独/英/仏) |
|---|---|
| 3つの小品 | Drei Vortragsstücke (l. H. allein) / Three Pieces (l. h. alone) |
| メロディの練習曲 | Melodie-Etüde |
| 練習曲 | Etüde |
| 2つの民謡 | Zwei Volkslieder (l. H. allein) / Two Popular Songs (l. h. alone) |
| 「オベロン」のメロディ | Melodie aus Oberon (l. H. allein) |
| 2つの小品 | Zwei Stücke (l. H. allein) / Two Pieces (l. h. alone) |
| 「魔弾の射手」のメロディ | Melodie aus dem Freischütz (l. H. allein) |
| ガボット | Gavotte (l. H. allein) |
| 「ジョセフ」のメロディ | Melodie aus Joseph (l. H. allein) |
| 「魔弾の射手」のメロディ | Melodie aus dem Freischütz (l. H. allein) |
注意:
・この一覧表からは、ケーラーが作曲した左手のためのエクササイズ(ハノンのような音遣いの作品)は除外
・本曲集に収録されている「両手」で演奏するケーラー作品も除外
この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】ケーラー「左手のための教本 Op.302」完全ガイド:収録曲一覧・難易度・おすすめ作品
‣ Korngold, Erich Wolfgang(1897-1957) コルンゴルト
エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897年ブルノ生まれ、1957年ハリウッド没)はオーストリア出身の作曲家です。ウィーンで神童として出発し、20歳でオペラ「死の都」を発表して国際的な名声を確立しました。1930年代にアメリカに渡り、ハリウッドの映画音楽作曲家として新たな成功を収めました。本作はウィーン時代、ヴィトゲンシュタインへの委嘱作品として書かれています。
· Piano Quintet in E major, Op.15 [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:ピアノ五重奏曲 ホ長調 Op.15
出版:1924年
演奏時間:約30分
分類:オリジナル作品(室内楽)
献呈:パウル・ヴィトゲンシュタインのために書かれた作品(両手版はグスティヌス・アンブロージに献呈)
構成(全3楽章)
I. Mässiges Zeitmaß, mit schwungvoll blühendem Ausdruck
II. Adagio
III. Finale
Op.15 は元々パウル・ヴィトゲンシュタインのために書かれた左手用のオリジナルが存在し、現在一般に知られている両手版(彫刻家グスティヌス・アンブロージに捧げられたもの)はその改訂・編曲版です。
第2楽章のAdagioは、コルンゴルト自身の歌曲集「別れの歌 Op.14(Lieder des Abschieds)」の旋律を素材とした自由な変奏曲として書かれました。
書法自体は後期ロマン派的な質感を持ちながらも、和声はより先鋭的な色彩を帯びています。
· Piano Concerto for the Left Hand in C-sharp major, Op.17 [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1小節目)

邦題:左手のためのピアノ協奏曲 嬰ハ長調 Op.17
作曲年:1923年(1922年委嘱)
演奏時間:約27分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(協奏曲)
献呈:パウル・ヴィトゲンシュタイン
構成
全体は切れ目のない単一楽章で、3つの主要セクションが続きます:
・Mässiges Zeitmass(中庸なテンポ)
・Heldisch(英雄的に)
・Mit Feuer und Kraft(火と力をもって)
作品の背景
1922年にヴィトゲンシュタインから委嘱を受け、翌年完成した左手独奏と管弦楽のための協奏曲です。ジチーの協奏曲(1895年)に次いで、左手のための協奏曲としては「史上2番目」にあたるとされています。またヴィトゲンシュタインがラヴェル、プロコフィエフ、ヒンデミット、リヒャルト・シュトラウスらに委嘱する以前の「最初の」大規模な委嘱作品でもある点は注目に値するでしょう。
初演は、1924年9月22日、ウィーン夏の音楽祭にて、コルンゴルトの指揮とヴィトゲンシュタインのピアノで行われました。
作品を気に入ったヴィトゲンシュタインは、その後さらにOp.23(2つのヴァイオリン、チェロと左手ピアノのための組曲)を委嘱しています。
ヴィトゲンシュタインは1961年の死まで独占的な演奏権を保有し続けたため、作品は1930年代以降にレパートリーから姿を消しました。1980年代にゲイリー・グラフマンによって復活するまで、ほとんど演奏されることがありませんでした。
音楽的な特徴
オクターヴを主体とした曲の出だしは、後の左手作品(Op.23)の序奏との共通点を感じさせます。
また、コルンゴルトが多くの楽曲で用いた特徴的なオーケストレーション(チェレスタの和音による強打を他の楽器の音とぶつける など)も顔を見せており、左手ピアノパート以外も魅力的な仕上がりになっています。
· Suite für 2 Violinen, Violoncell und Klavier (linke Hand), Op.23 [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1楽章 1-2小節)

邦題:2つのヴァイオリン、チェロと左手ピアノのための組曲 Op.23
作曲年:1930年
演奏時間:約38分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(室内楽)
献呈:パウル・ヴィトゲンシュタイン
構成(全5楽章)
| 楽章 | 標題 | 性格 |
|---|---|---|
| I | Präludium und Fuge | ・ピアノ独奏だけで幕を開け、荒々しいパッセージワークが続く ・フーガはd-mollの半音階的な素材を軸とし、楽章の終わりにプレリュードの素材が戻ってくる |
| II | Walzer | ・速すぎず遅すぎない柔軟なテンポによるワルツ ・ウィーンの空気を纏いながら、どこか詩的なたたずまいを持つ三部形式 |
| III | Groteske | ・全5楽章の中で最も尖った性格を持つ楽章 ・拍子が次々と変わる中、鋭い主題と高い緊張感が持続する |
| IV | Lied | ・静謐な楽章 ・前後の楽章の強い感情から解き放たれるような、深く落ち着いた音楽 |
| V | Rondo-Finale (Variationen) | ・素朴な歌のような主題が形を変えながら繰り返し現れる ・最終的に全曲を明るく締めくくる、組曲全体の到達点 |
第1楽章はピアノの独奏から開始し、ソロで31小節間もの導入が奏でられます。ここではリズミカルで技巧的かつ不協和の表現が繰り広げられますが、32小節目で他の楽器が一斉に出てきた瞬間、音楽が一気に分かりやすくなります。これは一種のサプライズと言ってもいいかもしれません。
第1-5楽章の全体を通じてピアニストへの技術的要求は高いものの、左手独奏と弦楽器がそれぞれの特性に即した書き方で組み合わされています。コルンゴルトはダイナミクス、アーティキュレーション、音楽的ニュアンスを丁寧に書き込みました。
コルンゴルトの作品に映画音楽から入った聴衆には少し難しく感じられるかもしれませんが、演奏者にとっても気合の入る、精緻に作り込まれた大作と言えるでしょう。
‣ Kortchmariov, Klimenty(1899–1958) クリメンティ・コルチマリョフ
クリメンティ・コルチマリョフ(1899年生まれ、1958年モスクワ没)はロシア(ソヴィエト連邦)の作曲家です。「社会的意義」を掲げた革命的な作品によりスターリン賞を受賞しています。
· Prelude for the Left Hand [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:左手のための前奏曲
作曲年:1922年
出版年:1924年
演奏時間:約3分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
「Moderato con tristezza(悲しみをもって、中くらいの速さで)」という発想標語のとおり、切なさをたたえた覚えやすく美しい旋律を持つ作品です。ロシア・ロマン派の様式で書かれており、演奏面で無理のない書法でありながら、ピアノという楽器がよく鳴るよう工夫されているため、レパートリーとして取り入れやすい一曲と言えます。
‣ Krentzlin, Richard(1864-1956) リヒャルト・クレンツリン
リヒャルト・クレンツリンは、1864年に生まれ1956年に没したドイツのピアノ教育者です。J.S.バッハ作品の編曲者としても知られ、教則本「Der junge Pianist(若きピアニスト)」をはじめ、ピアノ教育用の作品を複数残しています。
· Festival Polonaise, Op.105-3 [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:祝典ポロネーズ Op.105-3
作曲年:不明
出版年:1925年
演奏時間:約2分
難易度:ツェルニー30番修了~40番入門程度
分類:オリジナル作品(独奏)
作品の背景
「Three Pieces Op.105」という3曲からなる左手独奏曲集の3曲目にあたる作品です。同曲集には、この「祝典ポロネーズ」のほか、「第1曲 ロマンス」「第2曲 夕べの声」が収められており、いずれもサロン風の小品と言っていいでしょう。
音楽的な特徴
「ポロネーズ」と題されてはいるものの、その特徴的なリズムが使われている箇所は意外にも限られており、8分音符の刻みが中心となって進んでいきます。バス音が小音符で書かれている箇所が多く、跳躍も大きいため、そこから自然な音楽の揺れが生まれるように作られています。
‣ Krogmann, Carrie Williams(1860-1943) キャリー・ウィリアムズ・クロークマン
「キャリー・ウィリアムズ・クロークマン」の名は、資料によれば「ポール・デュセル」という人物による筆名とされていますが、その素性を含めて詳しい経歴ははっきりしていません。
1860年頃の生まれで、1943年にボストンで没したとされ、ボストンを拠点に活動した音楽教師で、数百曲におよぶピアノ小品を出版したことが知られています。
· La Coquette, Episode de Bal(Two Waltz Episodes for the Left Hand Alone, Op.81 No.2) [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:コケット(舞踏会の一場面) 〜左手のための2つのワルツ・エピソード より Op.81-2
出版年:1910年
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:Mrs. Minnie Little Longley
本作は、左手独奏用に書かれた「2つのワルツ・エピソード Op.81」の第2曲にあたる作品です。組となる第1曲「L’Ingénue」とともにMrs. Minnie Little Longleyに献呈されました。
8小節にわたる自由で短い序奏を経てからワルツが始まる構成になっています。書法自体はシンプルにまとめられていますが、それでいて演奏効果は感じられる一曲です。
‣ Kulla, Hans(1910-1956) ハンス・クッラ
ハンス・クッラ(1910年エッセン生まれ、1956年バンベルク没)はドイツの作曲家・音楽教育者・教会音楽家です。ケルン音楽大学でテオ・クライテンとヴァルター・ゲオルギイに師事しました。1945年以降はアルテンブルクの高等学校で音楽教師を務め、教育者として地域の音楽活動に尽力しました。青少年運動の歌や童謡、聖歌合唱曲を中心に作品を残しています。
· Variations über “Verstohlen geht der Mond auf” [LH/RH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:ドイツ民謡《月が出た》による変奏曲
作曲年:不明
演奏時間:約2分30秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
この変奏曲の主題は、ブラームスが「ピアノソナタ 第1番 Op.1」の第2楽章で変奏曲の素材として用いたものと同じドイツ民謡「Verstohlen geht der Mond auf」です。
変奏の大部分は対位法的な書法で書かれており、「Sehr langsam und düster(非常にゆっくりと、陰鬱に)」と指示された変奏のみ、オルゲルプンクト(保続音)を伴う和声的な書法になっています。この対比が作品の中で際立った変化をもたらしています。
随所に10度以上の音程が現れるため、ある程度の手の大きさが必要でしょう。手が届かない場合はアルペッジョで対応することになります。
楽譜には作曲者自身による左手独奏用と右手独奏用の運指がともに記されており、どちらの手でも演奏できる作りになっている点が特徴的です。
‣ Kunkel, Charles(1840-1923) チャールズ・クンケル
チャールズ・クンケルは1840年、プファルツ地方のジッパーフェルトに生まれ、1923年にセントルイスで没したドイツ系アメリカ人の音楽家です。1848年からアメリカで暮らし、セントルイス音楽院の創設者として、ドイツ系アメリカ人の音楽コミュニティにおいて重要な役割を果たしました。セントルイスで楽譜出版業も手がけたほか、自身のピアノ教則本はリストからも賞賛を受けたと伝えられています。
· The Banjo: Caprice Ethiopian(from Grand Concert Pieces) [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

邦題:バンジョー(黒人風奇想曲)
編曲年:不明
出版年:不明
曲集《Grand Concert Pieces》としては1901年頃
単独楽譜としては1911年
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
編曲か、オリジナル作品か
本作が収められている曲集「Grand Concert Pieces」は、クンケル自身の演奏活動および教育目的のために編まれた全7曲からなる左手独奏用の曲集で、〈ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》より六重唱〉や〈ヴェルディ《リゴレット》より四重唱〉など、そのほとんどが既存の声楽作品からの編曲(トランスクリプション)によって構成されています。しかし、この〈The Banjo〉だけは例外で、資料上も「第5曲を除いて、すべて編曲である」と明記されており、既存曲の書き写しではなく、クンケル自身によるオリジナル作品として位置づけられます。
もっとも、曲の性格としてはゴッドシャルクが同じ楽器を題材に書いた有名な〈バンジョー〉と共通するモティーフや雰囲気を持っており、資料でも「ゴッドシャルクの精神性に則った、この楽器の巧みな模倣」と評されています。素材やスタイルの面でゴッドシャルクへのオマージュ的な性格を持ちながらも、作品そのものは編曲ではなくクンケルの創作によるものと捉えるのが妥当でしょう。
音楽的な特徴
「Bold — with dash(力強く、勢いよく)」「Like a Banjo(バンジョーのように)」「Joyfully — merrily(楽しげに、陽気に)」「With fire and dash(火のように熱く、活発に)」といった、聴いていて楽しくなるような演奏指示が随所に見られるのも本作の魅力と言えるでしょう。中でも「Con tutta la forza.(With full power) 全力を尽くして フルパワーで」という指示には、思わず笑みがこぼれるようなユニークさがあります。
楽器そのものと戯れているかのような雰囲気の中で、主旋律が様々な装飾を伴いながら次々と姿を変えて現れる書法が特徴的な作品です。
‣ Langlois, Théo テオ・ランロワ
テオ・ランロワは、1909年生まれのベルギーの作曲家です。没年については明らかになっていません。
· À une main…(Pièce pour la main gauche) [LH]
※作曲者の生没年が不詳であり、著作権保護期間(PD)の確定が困難なため、安全を考慮して譜例の掲載は控えております。
邦題:ある手のために…(左手のための小品)
作曲年:不明
出版年:1936年頃
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:作曲者の妻
構成
・Andante
・Scherzo
AndanteのあとにScherzoが続く構成になっています。
音楽的な特徴
Andanteの冒頭から、歌謡性と華やかさをあわせもっている作品。楽譜にはフェルマータや小音符の配置、rubatoやテンポの変化を示す用語が随所に書き込まれており、譜面からもその自由な音楽づくりが伝わってきます。
‣ Lang, Walter(1896-1966) ヴァルター・ラング
スイス出身のピアニスト・作曲家ヴァルター・ラングは、幼少期にエミール・ジャック=ダルクローズの薫陶を受けたのち、ドイツのミュンヘンへ渡ってフリードリヒ・クローゼに作曲を学びました。帰国後はチューリヒでさらに研鑽を積み、1922年から約20年にわたりチューリヒ音楽院で後進の指導にあたる一方、のちにモンテ・チェネリ放送のオーケストラで指揮台にも立っています。作品も幅広く残しました。
· Sonatine e-Moll, Op.4, für die linke Hand allein [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:ソナチネ ホ短調 Op.4(左手のための)
作曲年:1918年
出版年:1950年
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
構成(全4楽章)
I. Allegro moderato
II. Andante con moto
III. Allegretto grazioso
IV. Allegro ma non troppo e con molto precisione
ラングが22歳のときにチューリヒで書き上げた、演奏会用の本格的な左手作品です。
付点リズムが印象的な第1楽章のユーモアを感じさせる洒落た結び方や、コラール風に静かに始まる第2楽章、3度・6度音程の連続が特徴的な、あっさりとした第3楽章など、各楽章それぞれに個性を持たせながら、伝統的な楽章形式を踏襲しています。
‣ Lauer, Elizabeth(1932- ) エリザベス・ラウアー
エリザベス・ラウアーはアメリカの作曲家で、ライオネル・ノヴァクの教え子にあたります。本作は師であるノヴァクのために書かれました。
· Dextravaganza [RH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:デクストラヴァガンザ
作曲:1991年(1999年2月改訂)
演奏時間:約10〜20分
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ライオネル・ノヴァクのために
作曲者自身の解説によれば、右手のための作品を書くという構想自体は長年にわたって温めていたものの、なかなか実作には至らなかったといいます。師への敬意を音楽的な内容そのものを通じて直接表現しようとするのではなく、右手のみという制約が持つ独自の性質——音域の選択、音色、ペダリング、タッチ、ニュアンス、強弱といった鍵盤上の響きに関わる要素——にじっくりと向き合う過程を楽しみながら生み出された作品だと語られています。
‣ Le Beau, Luise Adolpha(1850-1927) ル・ボー
ルイーゼ・アドルファ・ル・ボー(1850年ラシュタット生まれ、1927年バーデン=バーデン没)はドイツの女流作曲家・ピアニストです。クララ・シューマンに師事し、批評家ハンスリックからも高く評価されました。自作の演奏を各地で行い、演奏家・作曲家の両面で活動した人物です。
· Improvisata: Klavierstudie für die linke Hand allein, Op.30 [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:インプロヴィザータ(即興曲):左手のための練習曲 Op.30
作曲年:1883年頃
演奏時間:約4分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
特定の音型を繰り返すエチュード的な書法が骨格をなしています。分散和音を中心とした音型が続く中、跳躍の直後に音程幅の広い和音を掴む場面が多く、演奏上の難所と言えるでしょう。
構成はAndanteとAgitatoが交互に現れる形で、Andante → Agitato → Andante → Agitatoと場面が転換します。後半に向かうにつれ、冒頭からにじんでいた下降音型の素材がより前面に押し出され、音楽に濃密さが加わっていきます。
‣ Leimer, Kurt(1920-1974) クルト・ライマー
クルト・ライマーは、ヴィースバーデン生まれ、リヒテンシュタイン・ファドゥーツ没のピアニスト・作曲家。大伯父にあたる名手ヴァルター・ギーゼキングの手ほどきを受けたのち、ベルリンでピアノと作曲を修めました。戦後はピアニストとして活動を続けるかたわら作曲も行い、自作の管弦楽化にはクルト・オーヴァーホフの協力を得ています。
· Piano Concerto Nr.2(in one movement)for Piano(Left Hand)and Orchestra [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:ピアノ協奏曲 第2番(左手のための)
作曲年:1944~1948年(手稿の年代を1940年とする資料もあり)
演奏時間:約25分
分類:オリジナル作品(協奏曲)
初演:1953年、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
編曲:クルト・オーヴァーホフによる管弦楽化(1951年 / 1955年には室内楽編成版も作成)
構成(単一楽章)
テンポ標語の交替により複数の区分が生じますが、切れ目なく演奏される一続きの作品です。
・Allegro moderato
・Andante
・Doppio movimento
・Alla Marcia
・Allegro moderato
・Andante
・Giocoso
・Doppio movimento
音楽的な特徴
この左手協奏曲は、ライマーの構想をもとに、クルト・オーヴァーホフが管弦楽化を手がける形で作られました。
往年のハリウッド映画音楽を思わせるサウンドが特徴的な一曲で、作曲者自身がピアニストだったからこその自由闊達な左手パートに加え、噛みつくように鋭く鳴る金管楽器も印象に残ります。また、静かな場面では木管楽器のソロと左手ピアノが絡み合う場面もあり、味わい深い聴きどころとなっています。
‣ Leschetizky, Theodor(1830-1915) レシェティツキー
テオドール・レシェティツキー(1830-1915)はガリツィア(現ポーランド)のランツート生まれ、ドレスデン没のピアニスト・教育者です。ツェルニーに師事し、その指導法を受け継ぎながら独自の奏法論を発展させました。アントン・ルービンシュタインとも親しく、ペテルブルク音楽院ではピアノ科の主任を務め、後にウィーンで教育者として絶大な名声を築きました。
· Andante finale from “Lucia di Lammermoor,” Op.13 [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:「ランメルモールのルチア」のアンダンテ・フィナーレ Op.13
編曲年:遅くともドライショクの生前である1869年以前(19世紀半ば頃)と考えられる
演奏時間:約6分00秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)
ドニゼッティのオペラ「ランメルモールのルチア」の名場面、六重唱「Chi me frena in tal momento」をもとにした編曲です。両手版を書いたリストが有機的な序奏を設けているのに対し、このレシェティツキー版には独自の長い前置きが付されていますが、その必然性については疑問が呈されることもあります。
ドニゼッティの美しい旋律と、ピアニストであるレシェティツキーならではのピアニスティックな装飾が結びついた編曲で、上級者用のコンサートピースに適した仕上がりと言えるでしょう。
「The Boston Music Company Digest Of Piano Pieces: For The Left Hand Alone(1917)」をはじめ、多くのアンソロジーに収録されている、左手編曲の中では比較的知られている一曲です。ヴァクフゼン「Für die linke Hand allein」など、輸入盤の録音音源には度々収録されています。
‣ Levine, Jeffrey(1942– ) ジェフリー・レヴィン
· Soliloquy for Right Hand [RH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:ソリロキー(右手のための独白)
作曲年:1982年
演奏時間:約5分
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ライオネル・ノヴァクのために
作曲者自身の言葉によれば、本作はある変奏曲集から抜き出された一曲で、簡潔な動機をめぐって展開される、抒情的かつ自由な性格を持つ幻想曲と呼べる音楽です。ノヴァクという存在と彼の音楽家としての力量が本作着想の出発点となり、彼自身の演奏を通して、独立した一曲としての説得力を獲得したとも述べられています。
‣ Levin, Miron ミロン・レヴィン
· Nocturne(2 Pieces for the Left Hand, Op.18: No.1) [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:ノクターン(左手のための2つの小品 Op.18 より 第1曲)
出版年:不明
演奏時間:約3分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
音域の広いアルペジオ伴奏の中にメロディが織り込まれる書法で書かれた作品です。伴奏にあたるアルペジオ部分は小音符で記譜されており、メロディ線が視覚的にも区別しやすくなっています。アルペジオが続く中で3/4・4/4・5/4拍子が頻繁に入れ替わり、この拍子の変化が音楽の伸び縮みを表現する手段としても機能しているのが特徴の一つと言えるでしょう。終盤ではこの曖昧な拍節感が、小節線を排したカデンツァ風のパッセージへと姿を変え、消え入るように曲を閉じます。
用いられる分散和音は概ね和声音を中心に構成されており、演奏面では比較的取り組みやすい書法になっています。
‣ Lilien, Ignace(1897-1964) イグナーツ・リリエン
イグナーツ・リリエンは、当時オーストリア領だったレンベルク(現ウクライナ・リヴィウ)に生まれ、オランダで活動した作曲家・ピアニストです。ポーランド語圏のユダヤ系の家庭に育ち、1914年にオランダに渡ってそのまま定住しました。デルフト工科大学で化学工学を修め、1922年から1962年まで化学工場の技師として働きながら、オペラ、交響曲、歌曲などを作曲しました。第二次世界大戦中はユダヤ系であるために公的活動から排除されましたが、偽造書類で生き延び、占領下でも作曲を続けました。
· 5 Préludes [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第4曲 1-2小節)

邦題:5つの前奏曲
作曲年:1959年
演奏時間:全曲合計 約8分20秒
分類:オリジナル作品(独奏)
楽譜:5 Preludes pour piano : pour la main gauche / Ignace Lilien
構成(全5曲)
第1曲 Tempo di Mazurka(motif: C-D-G) 演奏時間:約1分50秒
第2曲 Presto leggiero 演奏時間:約1分
第3曲 Andante 演奏時間:約2分
第4曲 Andante cantabile 演奏時間:約1分30秒
第5曲 Allegro scherzando. Tempo di Polka 演奏時間:約2分
作品の背景
もともとリリエンは、C-D-Gの動機を用いたショパン風のマズルカを1曲書きました。これに、性格の異なる4曲の前奏曲が加えられ、この5曲からなる曲集に発展しました。
第1曲 Tempo di Mazurka(motif: C-D-G)
C-D-Gの動機を用いて、ショパン風のマズルカ風に仕立てられた作品。一方、ロマン派の作品ではあまり耳にしない和声がところどころに顔を見せます。
第2曲 Presto leggiero
ごく短い序奏のあと、無窮動のパッセージが動き回る曲。序奏部で提示される完全4度の響きが、曲の途中やエンディングにおいても活用されています。
第3曲 Andante
レチタティーヴォ風の一曲。持続する低音の上で、静かな旋律が語りかけるような箇所が取り入れられており、曲の最後もこの書法で締めくくられます。
第4曲 Andante cantabile
アルペッジョの中から、口数の少ないメランコリックな旋律が浮かび上がってくる曲。終結部の反復が印象に残ります。
第5曲 Allegro scherzando. Tempo di Polka
前曲との対照をなす、諧謔的な作品。跳躍を多く含みますが、演奏効果は比較的高く、曲集の終曲にふさわしい性格を持っています。終わり方がユニークで、遊び心が効いています。
‣ Lipatti, Dinu(1917-1950) リパッティ
· Sonatine pour piano(Main gauche seule) [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1楽章 1-4小節)

邦題:左手のためのソナチネ
作曲年:1941年(1947年完成)
演奏時間:全曲合計 約7分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
教師ミハイル・ジョラと名付け親エネスクへの誕生日祝いとして構想された作品です。五線紙が不足していたため「1段で書ける=片手のための曲」を思いついたという逸話が残っています。また、ジョラが片脚の人物だったことから、一種のブラックユーモアも込められていたと伝わっています。
3楽章構成。和音・オクターブ主体の部分と対位法的な部分が混在しています。声部ごとに異なるダイナミクスが指定される箇所も見られ、左手作品の中では比較的珍しい書法と言えるでしょう。他声部が休止してメロディが単独で浮かび上がる「無伴奏表現」が全楽章を通じて印象的な作品です。
リパッティ自身によるモノラル録音が現存しており、「”Mit links” — Der Pianist Paul Wittgenstein」などに収録されています。
この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くリパッティ:逸話に彩られた左手のソナチネ
‣ Liszt, Franz(1811-1886) リスト
· A magyarok Istene (Ungarns Gott) S.543 R.214 [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:ハンガリーの神 S.543 R.214
作曲年:1881年(原曲)
演奏時間:約3分20秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:作曲家自身による編曲作品(独奏)
ハンガリーの国民的詩人ペテーフィ(Sándor Petőfi)の詩をもとにリスト自身が作曲した歌曲のトランスクリプションで、ジチー伯爵への献呈作品として書かれました。元となった歌曲はリストの後期、1881年の作品であり、リストの歌曲集において末尾から2作目に収められています。
ペテーフィは1848年のハンガリー革命を詩によって鼓舞した愛国詩人として名高く、この詩もハンガリーの神へ捧げる祈りと民族の誇りを主題としています。晩年のリストがこの詩を取り上げたことは、生涯にわたって抱き続けた故郷ハンガリーへの深い愛着を物語るものでしょう。
音楽的には、晩年のリストのピアノ作品に見られる素朴な書法と、独特の和声の動きが印象的な一曲です。構成は即興的かつ自由で、朗唱を思わせる旋律線とカデンツァ的なパッセージが織り交ぜられています。
この作品をさらに詳しく知る
【ピアノ】左手作品から読み解くリスト:二つの作品に見る作曲家の素顔
‣ Louvier, Alain(1945- ) アラン・ルヴィエ
アラン・ルヴィエは、パリ生まれのフランスの作曲家・指揮者・音楽教育者です。数学に軸足を置いた教育を受けながらパリ音楽院で9つの一等賞を獲得し、メシアンやマニュエル・ロザンタールに師事、1968年にはフランス学士院主催の「ローマ大賞」最後の受賞者となりました。1972年から1986年までブローニュ=ビヤンクール市立音楽院の院長を務めた際には、初心者向けを含む幅広いレベルの学生のために、約50人もの多様な作曲家へ短い小品の作曲を委嘱するという、教育面での改革に取り組んでいます。続く1986年から1991年にはパリ国立高等音楽院の院長として、音楽院のシテ・ド・ラ・ミュジックへの移転や、新学科の設立を主導しました。
指揮者としては1971年以降、同時代作曲家の新作初演に力を注いでいます。作曲家としては、幾何学曲線や数列を音楽に置き換える試みや、4分音の微分音世界に旋法性を取り入れる試みなど、独自の探求を重ねてきました。
· Etude pour agresseurs No.37, Op.29(pour piano, main gauche) [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:8人の侵略者のためのエチュード 第37番 Op.29(左手のための)
作曲年:1972年
出版:1973年頃
演奏時間:約11分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:レリア・グソー
ルヴィエが1964年以降取り組んできた「Etudes pour agresseurs(侵略者たちのためのエチュード)」と総称される、鍵盤楽器のための独自の身体言語・エクリチュールを追求する連作エチュード群のうち、左手独奏のために書かれた1曲です。フランスのピアニスト、レリア・グソーに献呈されました。
掌や拳、手首、前腕までも動員する特殊奏法が要求されます。
‣ Lovell, Joan Isabel ジョーン・イザベル・ロヴェル
ジョーン・イザベル・ロヴェルは、イギリスの作曲家です。生没年や経歴についての詳細は確認できませんが、教育用のピアノ小品を手がけた記録は残っています。
· The Circus: Six Pieces for the Left Hand Alone [LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:サーカス 左手のための6つの小品
出版年:1957年
演奏時間:全曲合計 約5分
難易度:ブルグミュラー25の練習曲修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:母へ
構成(全6曲)
I. Trapeze Artists(約45秒)
II. Bare-Back Rider(約40秒)
III. Tight-Rope Walker(約45秒)
IV. The Elephant’s Waltz(約1分)
V. Dancing Bear(約35秒)
VI. The Clown and the Bicycle(約1分20秒)
音楽的な特徴
サーカスにまつわる情景を題材にした、性格の異なる6つの小品を集めた曲集。多くの曲には練習曲的な性格も感じられますが、そのなかで「The Elephant’s Waltz」だけは趣が異なり、性格小品を思わせる穏やかなバラード風の1曲です。6曲全体を通して中〜低音域を中心に書かれているため、左手演奏を始めたばかりの学習者にとっても身体的な負担が少なく、初級から初中級の教材として扱いやすい曲集と言えます。
‣ Luening, Otto(1900-1996) オットー・ルーニング
· The Right Hand Path [RH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
邦題:ライト・ハンド・パス
作曲年:1984年
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:ライオネル・ノヴァクのために
作曲者自身の解説によれば、倍音列から取り出した断片を素材とし、音同士の間隔や強弱、時にはリズムの操作によって多様な響きの表情を生み出す構成になっています。
譜面は3段譜で記され、弦楽器の奏法を思わせる書法で進行します。技術的な難度自体は高くありませんが、3段にまたがる音を重層的にどう響かせるかがポイントとなる作品であり、演奏にはペダリングに対する繊細な感覚が求められるでしょう。
‣ Lysberg, Charles-Samuel Bovy(1821-1873) シャルル=サミュエル・ボヴィ=リスベルク
シャルル=サミュエル・ボヴィ=リスベルク(1821-1873、ジュネーヴ生まれ・没)は、スイスのピアニスト・作曲家です。1835年にパリへ渡ってショパンに師事し、リストとも交流。リストの後押しでワルツ集「Les Suissesses Op.1」を出版しました。1848年革命を機に帰郷し、同年結婚してダルダニーに定住。ジュネーヴ音楽院で1848〜49年、1870〜73年にピアノを教え、リサイタルや自作出版にも力を注ぎました。150曲を超えるピアノ小品を残し、当時のジュネーヴのサロンで広く愛好されました。現在ジュネーヴには、彼の名を冠した通り「rue Bovy-Lysberg」があります。
· Etude de la main gauche seule pour piano, Op.20 [LH]
譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

邦題:左手のためのエチュード Op.20
出版年:1848年頃
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:à Mr. Prosper Plougoulm
音楽的な特徴
特定の単一テクニックに特化した練習曲ではなく、和音、オクターヴ、アルペジオ、跳躍などの幅広いテクニックが求められます。終盤にはカデンツァも置かれており、総合的な演奏会用エチュードと言えるでしょう。
左手音楽史における位置づけ
19世紀半ば、ドライショクやフマガッリといった演奏家たちが、左手のみでの演奏によって聴衆を驚かせる演奏会活動を各地で展開し、左手のためのピアノ音楽という分野の先駆けとなりました。ドライショクの演奏会での成功が呼び水となり、その後数年のうちに、本作リスベルクのエチュード(1848年)や他の作曲家による左手のエチュードが相次いで生み出されました。
► 終わりに
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