左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 D-F

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別 D-F

► はじめに

 

本ページでは、D-Fで始まる作曲家の左手ピアノ作品をまとめています。作曲作品・編曲作品・教本・室内楽・協奏曲などを、作曲家ごとに整理しています。

作品を探す際は、以下のアルファベット別ページもご利用ください。

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別

 

► 作曲家別 D-F

‣ Dichler, Josef(1912-1993) ヨーゼフ・ディヒラー

 

ヨーゼフ・ディヒラーは、1912年ウィーン生まれのオーストリアのピアニストで、1993年に亡くなっています。作曲も手がけた他、ウィーン国立音楽アカデミーで教鞭を執り、ピアノ演奏法に関する著書も残しています。

 

ディヒラーの書籍を知る

【ピアノ】ヨーゼフ・ディッヒラー「ピアノ演奏法の芸術的完成」レビュー(姉妹サイトへリンク)
【ピアノ】ヨーゼフ・ディッヒラー「ピアノの解釈と限界」レビュー(姉妹サイトへリンク)

 

※ディヒラーは、「ディッヒラー」という表記が用いられることもあります。

 

· Intermezzo und Capriccio für die linke Hand allein

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のための間奏曲とカプリッチョ

 

出版:1980年頃
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

構成(全2曲)

1. Intermezzo
2. Capriccio

 

作品の背景

クラスターや不協和音を伴う箇所もありますが、全体を通じて聴き取りやすい和声進行も随所に織り込まれています。ジャズのエッセンスが色濃く感じられる作風で、また、断片的な素材が積み重ねられていくように構成されています。

用いられる音数自体は比較的シンプルながら、部分的に3段譜や4段譜が用いられており、音響の多層的な構造を視覚的にも把握しやすくする工夫と考えられるでしょう。

 

‣ Dickinson, Edward B.(1853-1946) エドワード・B・ディキンソン

 

編曲者エドワード・B・ディキンソンについて、詳しい経歴を伝える資料は多くありませんが、1853年生まれ、1946年没のアメリカの音楽家であったことが分かっています。左手独奏用の編曲作品を手がけており、本作はその代表的な一曲です。

 

· Kathleen Mavourneen: Transcription for the Left Hand Alone, Op.15 [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

ディキンソン編曲「ケスリーン・マヴォーニーン(左手のための) Op.15」1-5小節

邦題:ケスリーン・マヴォーニーン(左手のための) Op.15

 

原曲:Crouch, Frederick William Nicholls / 歌曲「Kathleen Mavourneen」(1837年)
編曲:Dickinson, Edward B.(左手用編曲)、Op.15
出版年:1881年
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品(独奏)
献呈:J. J. Quinn Esq.

 

本作は、19世紀に広く親しまれたアイルランド系の歌曲「Kathleen Mavourneen」を素材に、左手独奏用に書かれた演奏会用トランスクリプションです。原曲の主題が変奏を重ねながら発展していく構成になっています。

低い音域に音を密集させた分散和音で書かれている箇所が多く、曲全体が持つ雰囲気に対して、やや重たく感じられる響きになっているのは否めません。

冒頭には10小節ほどの、カデンツァを思わせる自由で短い序奏が置かれています。譜面上「Cadenza.」と記された箇所以降は一気に技巧的な性格を帯び、アルペジオやスケール、6度音程の連続、オクターヴの連続、トリルなどが次々と現れて、装飾的な盛り上がりをみせながら曲を締めくくります。

 

‣ Döhler, Theodor(1814-1856) テオドール・デーラー

 

テオドール・デーラーは、1814年ナポリ生まれ、1856年フィレンツェに没した、オーストリア系ユダヤ人のピアニスト・作曲家です。1825年以降ナポリでベネディクトに学んだのち、1829年頃ウィーンに移り、ピアノをツェルニーに、作曲をゼヒターに師事しました。

1836年から本格的な演奏旅行を開始しましたが、1846年にロシアの皇女と結婚したのちは公の場での演奏から退き、1848年以降はフィレンツェに定住しました。

ツェルニー門下という経歴を持ち、師と同様に左手のための作品を残した点は、19世紀前半のウィーン周辺で左手ピアノ音楽が特殊な例外ではなく、ある程度広がりを持つ主題として意識されていたことをうかがわせます。

 

デーラーについてさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くテオドール・デーラー:ツェルニーの弟子が遺した2つの片手作品

 

· 12 Études de Concert, Op.30 No.7 [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

デーラー「12の演奏会用練習曲 Op.30 より 第7番」1-4小節

邦題:12の演奏会用練習曲 Op.30-7(前半部分が左手独奏)

 

出版:1839年
演奏時間:左手独奏部分のみで約2分、両手部分を含めた全体では約2分50秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

「12の演奏会用練習曲」のうち、第7番は冒頭から23小節目までが左手だけで演奏されるように書かれた曲です。楽譜の最初には「Mano destra tacet.(右手は休止)」との指示があり、片手のみで演奏が始まることがあらかじめ示されているのが特徴的と言えるでしょう。

自由なカデンツァ風の序奏が11小節にわたって置かれたのち、オクターヴを中心とした本体部分に入り、24小節目からは両手による演奏に移ります。両手になった箇所では、左手パートのみでも音楽的に成立している書き方で、そこに右手が32分音符による華やかな走句を添えるため、あたかも3本目の手が加わったかのような響きが生まれます。

 

· Étude de Concert pour la Main Gauche, Op.42 No.33 [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-3小節)

デーラー「演奏会用練習曲 変ホ長調 Op.42 No.33」1-3小節

邦題:左手のための演奏会用練習曲 変ホ長調 Op.42-33

 

出版:Mainz: Schott(出版年不詳)
演奏時間:約3分40秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

全曲が左手のみのために書かれた演奏会用エチュードで、大きく前半と後半の2部に分かれる構成をとっています。

前半は、3連符による揺らめくような2声の伴奏を土台に、親指が旋律を担う書き方がされています。20小節目以降の後半に入ると一転して、幅広い音域を上下する16分音符の単音アルペジオが旋律を包み込むような書法に変わります。

後半の始まりでは、低音に pp のトリルが現れ、ペダルを踏み込んだまま持続させる指示が付されていますが、そこから生まれる地鳴りのような不穏な響きが、この作品で最も印象的な瞬間と言ってもいいかもしれません。このトリルは終盤でも現れ、その後、アルペジオが遠くへ消えていくように曲を閉じます。

 

‣ Dohnányi, Ernő(Ernst von)(1877-1960) ドホナーニ

 

エルネー・ドホナーニは1877年ポジョニ(現ブラチスラヴァ)生まれ、1960年ニューヨーク没のハンガリーの作曲家・ピアニスト・指揮者です。王立音楽院でトマーンにピアノを、ケスラーに作曲を師事し、1898年のロンドン公演(ベートーヴェン「ピアノ協奏曲 第4番 Op.58」)で国際的な名声を確立しました。

1905年からベルリン高等音楽学校教授、のちブダペストの王立音楽院(リスト音楽院)院長やブダペスト・フィル首席指揮者を歴任し、バルトークやコダーイら次世代の音楽家を支える存在にもなりました。1948年に渡米し、フロリダ州立大学教授として生涯を終えています。

 

· Fugue for Left Hand or Two Hands [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

ドホナーニ「左手、または両手のためのフーガ」1-5小節

邦題:左手、または両手のためのフーガ

 

作曲年:1913年(自筆譜にはグムンデンにて1913年7月31日と記載)
出版:1962年(没後出版)
演奏時間:約4分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:オリヴァーソン夫人に献呈

 

作品の背景

原題には「進んだ技量を持つ左手一本のため、あるいは未熟な両手のため(für eine vorgeschrittene linke Hand oder für zwei zurückgeschrittene Hände)」というやや諧謔味のある副題が付されており、片手で弾きこなせるだけの技量があるなら、両手で弾く場合はむしろ易しく感じられるはずだ、というニュアンスが込められています。

 

音楽的な特徴

やや半音階的な進行を持つ4声フーガ。提示部で4つの声部が明確に示されたのち、次第に書法は自由さを増し、転回・ストレッタ(重なり合う主題の追いかけ)・拡大といった対位法的な技法が導入されていき、後半ではホモフォニック的な書法が楽曲を取り巻きます。

 

· For the Left Hand Alone(Twelve Short Studies for the Advanced Pianist No.7) [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1小節目)

ドホナーニ「左手のために(「上級ピアニストのための12の小練習曲集 第7番」より)」第1小節目

邦題:左手のために(「上級ピアニストのための12の小練習曲集 第7番」より)

 

作曲・出版年:1950年頃(資料によっては1952年の表記もあり)
演奏時間:約2分40秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

作品の背景

本作は、ドホナーニが上級ピアニスト向けに書いた12の小品からなる練習曲集「Twelve Short Studies for the Advanced Pianist」の第7番です。本作は曲集の中で唯一「左手のみ」をテーマとして作曲されました。

 

音楽的な特徴

曲頭に「la melodia sempre molto espressiva e distinta(メロディは常に非常に表情豊かに、かつ明確に)」の指示があり、アルペジオ伴奏のバランスコントロールが求められます。

書法としては、スクリャービンの「左手のためのノクターン Op.9-2」と共通点を感じますが、6/8、9/8、12/8、15/8などの拍子が使い分けられており、より近現代的です。また、メロディやそれ以外の要素にも半音階が多く用いられており、この作品のサウンド的な特徴の一つと言えるでしょう。

 

‣ Dreyschock, Alexander(1818-1869) ドライショク

· Variations pour la Main gauche seul Op.22 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ドライショク「左手のための変奏曲 Op.22」譜例(1〜4小節)

邦題:左手のための変奏曲 Op.22

 

作曲年:1843年頃
演奏時間:約7分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

導入部は朗唱風のパッセージから始まり、アンダンテ・コン・エスプレッシオーネの主題が提示され、アルベルティ・バスの伴奏に乗った叙情的なメロディーに続いて、3つの変奏とフィナーレが展開されます。

全曲を通して音域は幅広く取られていますが、すべて一段の楽譜で書かれているのが特徴と言えるでしょう。

 

この作品をさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くドライショク:片手で二人分を弾いた男

 

· God save the Queen, variation Op.129 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

ドライショク「『ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン』による大変奏曲 Op.129(左手のための)」譜例(1〜4小節)

邦題:「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」による大変奏曲 Op.129(左手のための)

 

作曲年:1854年以前
演奏時間:約8分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

タイトルのとおり英国国歌を素材にとった変奏曲です。

音楽的な構成や主題変容を味わう作品というよりは、超絶技巧そのものを楽しむパフォーマンスピースとしての性格が強いように感じます。

 

この作品をさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くドライショク:片手で二人分を弾いた男

 

‣ Dubugnon, Richard(1968- ) デュビュニョン

 

リシャール・デュビュニョンは1968年スイス・ローザンヌ生まれのフランス系スイス人作曲家です。モンペリエ大学で歴史学を学んだのち、20歳から本格的に音楽の道に進み、コントラバスと作曲を学び始めました。1990年から95年までパリ国立高等音楽院(CNSM)に学び、コントラバス、対位法、フーガの各分野で賞を得ています。1997年にロンドンへ移り、王立音楽アカデミーで作曲の研鑽を積んだのち、同校で7年間にわたり作曲を教えました。

芸術アカデミーのピエール・カルダン賞をはじめ数々の賞を受けており、作品は各国で演奏されているほか、Naxosレーベルへの録音は英仏スイス各国のメディアで高く評価されています。コントラバス奏者としても現代音楽のアンサンブルで活動し、フランス放送(Radio France)などからの委嘱も受けています。

 

· Fugue pour la Main Gauche, Op.46 [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:左手のためのフーガ Op.46

 

作曲年:2009年頃
演奏時間:約6分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
委嘱:ピアノ・キャンパス・コンクール(Concours Piano Campus)2009年度大会の委嘱作品

 

作品の背景

フランスのピアノ・キャンパス・コンクール2009年度大会のために委嘱された作品です。

楽譜中には「L’usage de la pédale est à l’appréciation de l’interprète, sauf aux endroits où elle est exigée.(ペダルの使用は、明確に指示されている箇所を除き、演奏者の判断に委ねられる)」旨の注記など、言葉による指示が比較的多く書き込まれているのが特徴です。

 

音楽的な特徴

無調の語法によるフーガですが、主題や応答の出現箇所が楽譜上に明示されており、学習者にとって構造をたどりやすい書き方になっているのが特徴と言えるでしょう。

古典的なフーガの伝統にならい、シンプルな主題の提示から曲を始めますが、後半にかけて音響が徐々に充実し、ホモフォニックな書法も増えながら fff に至るクライマックスを築きます。全体を通して不意に現れるスタッカートや同音連打の音型も、本作の味わいの一つになっています。

 

‣ Eckartz, Hubert(1903-1962) フーベルト・エカールツ

 

フーベルト・エカールツ(1903年7月28日ヴッパータール生まれ、1962年没)はドイツの作曲家・指揮者・音楽教育者です。ミュンヘン音楽院でヨーゼフ・ハースに作曲を学んだのち、ベルリンの劇場で合唱指揮者を務め、その後ドルトムントで音楽学校での指導を中心に活動しました。

 

· Capriccio from Acht Klavierstücke [LH/RH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:カプリッチョ(8つのピアノ小品 より)

 

作曲年:不明
演奏時間:約1分20秒
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
収録:「片手で弾くピアノ曲集」(編:ヴァルター・ゲオルギイ/音楽之友社)ほか
備考:左右どちらの手でも演奏可能

 

Vivo moltoの急速なスケルツォ的小品で、5/8・4/8・3/8・2/8と拍子が頻繁に切り替わる変拍子が特徴です。急速なテンポながら、極端な跳躍は多くありません。

サウンド面での際立った特徴として、メロディが増2度進行する箇所が随所に現れ、エキゾチックな色合いをもたらしています。また突然4度和声のパッセージが挟み込まれるなど、予想を外す場面転換も盛り込まれており、急速な曲想をより面白いものにしています。

 

‣ Eckhardt-Gramatté, Sophie-Carmen(1899-1974) エックハルト=グラマッテ

 

モスクワに生まれ、パリ音楽院で学んだのち、ピアニスト・ヴァイオリニストとして若くしてヨーロッパ各地で活躍したオーストリア系カナダの作曲家です。最初の結婚後はスペインでカザルスの薫陶を受け、フィラデルフィア管弦楽団やシカゴ交響楽団と共演するなど演奏家として高く評価されました。1930年に演奏活動から作曲へと軸足を移し、マックス・トラップに師事。1934年に美術史家フェルディナント・エックハルトと再婚し、以後「エックハルト=グラマッテ」の名で活動しました。

 

· Piano Sonata No.6, E.130 [LH][RH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:ピアノソナタ 第6番 E.130

 

作曲年:1928〜1952年
演奏時間:全曲合計 約14分30秒
分類:オリジナル作品(独奏)

 

作品の背景

第1楽章は、「ピアノソナタ 第4番 第3楽章」(1928年)を土台としながら、結尾を新たに書き直して独立させた音楽です。1951年に新たに書かれた右手独奏のための第2楽章と組み合わされ、1952年に両手用の第3楽章が加えられたことで、現在の「ピアノソナタ 第6番 E.130」として完成しました。両手のための第3楽章は、本ライブラリーの性質上ここでは扱いません。

 

I. Prestissimo, e molto preciso(左手のための)

作曲年:1928年
演奏時間:約3分30秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度

絶え間なく細かい音符が続く無窮動音楽ですが、トリルの出現やスラーのかかり方の変化などでグルーピングが変化することで、変化が生まれています。1/4ペダルの指示など、細かな演奏指示が見られるのも特徴の一つと言えるでしょう。

 

II. Lustig und mit Witz(右手のための)

作曲年:1951年
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度

全体を通してユーモアにあふれ、軽さや重厚さなども使い分けられ、第1楽章に比べて曲想の変化が多く見られる楽章。終盤は、音像が遠ざかっていくようにミステリアスに終止し、第3楽章との対照を用意します。

 

‣ Edwards, Ross(1943- ) ロス・エドワーズ

 

ロス・エドワーズはオーストラリアを代表する作曲家の一人。ディープ・エコロジーの理念に通じる独自の音響世界を築き、音楽を自然の力と結びつけ、儀式や舞踊との伝統的なつながりを回復しようとする姿勢で知られています。鳥の声や昆虫の音といったオーストラリアの自然環境から着想を得た作風が特徴です。

 

· Three Little Pieces for the Right Hand Alone [RH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:右手のための3つの小品

 

作曲年:1983年
出版年:1984年頃
委嘱:シャーリー・ハリスの依頼により作曲
演奏時間:全曲合計 約5分40秒
分類:オリジナル作品(独奏)

 

構成(全3曲)

第1曲 Allegro
第2曲 Andante
第3曲 Molto Vivace

 

作品の背景

本作は、学習・協調運動の困難や身体障害を持つ生徒へのピアノ指導研究に10年にわたり携わってきたシャーリー・ハリスが、Allans Music Australia社のために編んだアンソロジーへの寄稿を依頼されたことをきっかけに書かれました。エドワーズは右手のための作品を書くことを選び、本作が生まれました。

録音を手がけたジャネル・キャリガンの解説によれば、3曲のテンポは急・緩・急という配置で、両端の2曲は舞曲的な性格を持ち、同時期のエドワーズの他作品に見られる「マニーニャ」的な性格を思わせるとされています。中間の第2曲は緩やかなテンポで、印象的な旋律を特徴としています。

 

作曲家による公式情報

作曲家の公式HP(THREE LITTLE PIECES FOR THE RIGHT HAND ALONE (1983))では、この作品についての簡潔な解説と、デモ音源も公開されています。

 

‣ Escande, Pablo(1971- ) エスカンデ

 

パブロ・エスカンデは1971年アルゼンチン生まれの作曲家です。ブエノスアイレスの音楽院で音楽教師・ピアニストとしての課程を修めたのちオランダに渡り、ジャック・オッホのもとで古楽奏法(フォルテピアノ、チェンバロ、通奏低音)を、続いてラファエル・レイナのもとで作曲とオーケストレーションを学び、アムステルダム音楽院(旧スウェーリンク音楽院)作曲科を修了しました。以後、オランダをはじめオーストラリア、アメリカ、スペイン、日本など各国から委嘱を受け、独奏曲から室内楽、オラトリオ、オペラ、バレエ音楽まで幅広く手がけています。

ピアニストの舘野泉との出会いをきっかけに、《ディヴェルティメント》をはじめとする左手のための作品を相次いで委嘱・作曲しており、これらは高い評価を得ています。

 

· Divertimento for Piano Left Hand [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:ディヴェルティメント ピアノ(左手)のために

 

作曲年:2009年頃
演奏時間:全曲合計 約18分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
委嘱:舘野泉「左手の文庫」助成作品

 

構成(全4楽章)

I. Prelude(プレリュード) 約3分30秒
II. Variations upon “La rosa enflorece”(ヴァリエーション「セファルディム」) 約7分
III. Adagio(アダージョ) 約5分20秒
IV. Dance(ダンス) 約2分30秒

 

作品の背景

エスカンデ自身の言葉によれば、この作品は全楽章が4度音程で関連づけられ、8つの調を経て曲を締めくくるように設計されており、様式的には新バロック的な性格を持ちながらギリシャ旋法を取り入れているといいます。第2楽章の主題には、ユダヤ・スペイン系(セファルディム)に古くから伝わる歌「La rosa enflorece(薔薇は花咲く)」が用いられています。

 

音楽的な特徴

第1楽章は緩やかな導入部から次第に緊張を高めてアレグロへと至る、対位法的な二部形式の音楽です。第2楽章は主題と4つの変奏からなり、4番目の変奏でクライマックスを迎えたのちカデンツァを経て主題が回帰します。第3楽章のアダージョは、作曲者自身が静寂の中での自己の経験や日本の庭園から得たイメージを込めたという、穏やかで平和な曲想を持っています。終曲のダンスはアダージョと対照的に、推進力に満ちたABA形式の音楽で、作品全体を活気とともに締めくくります。

 

· Three Haiku of Matsuo Basho, declamation “ad libitum” [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:松尾芭蕉による3つの俳句

 

作曲年:2020年頃
演奏時間:
  第1曲 約1分10秒
  第2曲 約30秒
  第3曲 約2分
 全曲合計 約3分40秒
難易度:ツェルニー30番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏 または 朗読+ピアノ)

 

松尾芭蕉の3つの俳句を題材に書かれた作品集。全曲ともに1ページのみの短い作品で、各曲の楽譜冒頭にはそれぞれの俳句が英訳とともに記されています。作曲者自身は、俳句という短い言葉によって簡潔に表現された情緒を音楽と組み合わせることで、単独の芸術形態以上に深いメッセージを伝えられると考えており、演奏に際しては、「独奏」または「朗読+ピアノ」など、複数の提示方法が想定されています。

第1曲 姨捨山 Mt. Obasute(1688年の句に基づく) Dark(♩=63)
第2曲 馬ほくほく In a Painting(1683年の句に基づく) Ritmico(♪=245)
第3曲 古池や The Old Pond(1686年の句に基づく) Static(♩=59)

このように、各曲にユニークな発想記号が付されている点も、本作の面白さの一つと言えるでしょう。

 

‣ Felderhof, Jan(1907-2006) ヤン・フェルダーホフ

 

ヤン・フェルダーホフ(1907年9月25日ブッサム生まれ、2006年3月4日ラーレン没)は、ヴァイオリンと作曲を学んだのちアムステルダム音楽院やユトレヒト音楽院で長年教鞭をとったオランダの作曲家・教育者です。教育活動に加え、合唱・管弦楽の指揮、音楽評論、ラジオ番組出演なども手がけました。幅広い編成の作品を残しています。

 

· Impression [LH]

 

※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可

邦題:インプレッション

 

作曲年:1959年
出版年:1963年頃
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:コル・デ・フロート
収録:Mano sinistra I:Six pieces by Netherlands composers for piano left hand

 

構成

・Andante rubato
・Più mosso
・Tempo I(Andante rubato)

 

音楽的な特徴

「Quasi improvisando(即興風に)」という指示が添えられ、曲全体にわたって寄せては返すような自由な呼吸感を生み出しています。随所に無調的な色彩がにじみ、どこか切なさを帯びた表情を見せます。

 

‣ Fibich, Zdeněk(1850-1900) ズデニェク・フィビフ

 

ズデニェク・フィビフは、スメタナ、ドヴォルザークと並び称される、チェコを代表する作曲家です。チェコ人の父とウィーン出身のドイツ人の母のもとに生まれ、幼少期からドイツ語・チェコ語の両方に親しむ環境で育ちました。ライプツィヒでイグナーツ・モシェレスにピアノを、ザロモン・ヤーダスゾーンらに作曲を学び、パリでの研鑽を経てプラハに定住しています。オペラや交響詩、ピアノ曲など幅広いジャンルの作品を残しました。

 

· Andante(from Nálady, dojmy a upomínky, Op.47, No.104) [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-5小節)

フィビフ『アンダンテ(「気分、印象、思い出」Op.47 より 第104番)』1-5小節

邦題:アンダンテ(「気分、印象、思い出」Op.47 より 第104番)

 

作曲年:1895年
演奏時間:約1分40秒
難易度:ツェルニー30番修了〜40番入門程度
分類:オリジナル作品(独奏)
備考:「気分、印象、思い出」Op.47の第104番であり、同シリーズOp.41・44・47の3巻を通した番号では第308番にあたる

 

両手用の小品が大半を占めるフィビフ晩年の大曲集「気分、印象、思い出」の中にあって、この曲は冒頭に「Sinistra sola(左手のみで)」と記された左手独奏用の作品として書かれました。

3度音程の連続がサウンド上の特徴となっており、ハープを思わせるアルペッジョも随所に用いられています。全体としては穏やかな曲想を保ちながらも、中盤では減七の和音が力強く鳴らされ、音楽が揺れ動く場面が置かれています。

 

‣ Foerster, Josef Bohuslav(1859-1951) ヨゼフ・ボフスラフ・フェルステル

 

ヨゼフ・ボフスラフ・フェルステルは、チェコを代表する作曲家の一人です。プラハで学んだのち、聖ヴォイチェヒ教会でアントニン・ドヴォルザークの後任としてオルガニストを務め、あわせて音楽批評家としても精力的に活動しました。ハンブルク滞在中にはグスタフ・マーラーと深い親交を結び、後にウィーンの音楽院で作曲科の教授を務めました。チェコスロヴァキア建国に伴いプラハに戻ると、プラハ音楽院教授・院長やチェコ科学芸術アカデミー総裁などの要職を歴任しました。

小編成を中心に、数多くの作品を手がけたことで知られています。

 

· Notturno a Fantastico, Op.142 [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

フェルスター「ノットゥルノ」1-4小節

邦題:夜想曲と幻想曲 Op.142(左手のための2つの小品)

 

作曲年:1930年
出版年:1945年
演奏時間:全曲合計 約9分
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:オタカール・ホルマン

 

構成(全2曲)

第1曲 Notturno 約4分30秒
第2曲 Fantastico 約4分30秒

 

作品の背景

右手の負傷から左手のピアニストへの道を切り拓いたオタカール・ホルマンのために書かれた作品で、楽譜には「Otakaru Hollmannovi(オタカール・ホルマンへ)」という献辞が刻まれています。作曲から15年を経た1945年、プラハの出版社から「左手のための2つの小品」という副題を添えて出版されました。性格の異なる2曲を組み合わせた構成になっています。

ゲオルギイが著書「Klaviermusik」の中で高く評価している作品です。

 

オタカール・ホルマンについてさらに詳しく知る

【ピアノ】左手音楽から読み解くオタカール・ホルマン

 

‣ Foote, Arthur(1853-1937) アーサー・フット

 

アーサー・フット(1853年セイラム生まれ、1937年ボストン没)はアメリカの作曲家・ピアニストで、ニューイングランドを代表する音楽家の一人です。1875年にハーバード大学で音楽の修士号を取得しており、これはアメリカで同大学から授与された最初の音楽修士号でした。アメリカで音楽教育を完結させたほぼ唯一の世代の作曲家でしたが、30歳でヨーロッパに渡りスティーヴン・ヘラーに師事した経験もあります。Op.37の3曲はヘラーへの献呈作品です。

 

· Petite valse pour la main gauche, Op.6, No.4 [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、1-4小節)

フット「左手のための小さなワルツ Op.6 より 第4番」1-4小節

邦題:左手のための小さなワルツ Op.6 より 第4番

 

出版:1885年
演奏時間:約2分40秒
難易度:ツェルニー30番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)
備考:Op.6 全4曲のうち第4番のみが左手のための作品

 

全曲が1段譜で書かれた、メランコリックでシンプルなワルツです。メロディがワルツの伴奏音型より低い音域に来たり、高い音域へ移ったりと、声部の位置が何度も入れ替わることで変化が生まれています。子どもにも取り組みやすい親しみやすい作品と言えるでしょう。

 

· Drei Clavierstücke für die linke Hand allein, Op.37 [LH]

 

譜例(PD作品、浄書ソフトで作成、第1曲 1-3小節)

フット「左手のための3つのピアノ小品 Op.37 より 第1曲」1-3小節

邦題:左手のための3つのピアノ小品 Op.37

 

出版:1897年
演奏時間:全曲合計 約8分30秒
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:オリジナル作品(独奏)
献呈:スティーヴン・ヘラー

 

構成

I. Prelude-étude(プレリュード・エチュード) II. Polka(ポルカ) III. Romanze(ロマンス)

 

3曲を通じて音楽的なバランスが良く、極端に難しい箇所がないため、左手演奏に少し慣れてきた段階の方に適した作品です。演奏会でも使いやすい規模で、ダイナミクスの幅も広く取られています。

 

I. Prelude-étude
・バロック的な語法を基調としながら、自由なレチタティーヴォ風の場面などが組み合わさっている
・締めくくり方がやや唐突な印象がある
・右手用に簡略化された版も存在する

II. Polka
・半音階的な書法による三部形式の小品
・軽さを伴い、前後2曲と対照的
・メロディ以外の伴奏部分は特別凝っておらず、スケールかアルペジオが大半を占める

III. Romanze
・半音階的な和声を多用した一曲
・3曲の中では、規模・内容ともに最も充実している
・単曲を取り出して演奏する場合は、このロマンスがおすすめ

 

‣ Friedman, Ignaz(1882-1948) イグナツ・フリードマン

 

イグナツ・フリードマンは1882年、クラクフ近郊生まれのポーランド出身のピアニストです。レシェティツキーにピアノを、アードラーに作曲を、ライプツィヒでリーマンに音楽理論を学び、ウィーンでデビューしました。1905年以降はヨーロッパ・南米・オーストラリアを演奏旅行し、ベルリンを拠点に国際的なキャリアを築いています。フーベルマンとしばしば共演し、1927年のベートーヴェン没後100年記念行事ではカザルスとも共演しました。1940年にオーストラリアへ移住し、1948年にシドニーで没しています。

ニューグローブ音楽大事典は、その卓越した技巧と音色のコントロールを高く評価する一方、ときにそれに頼りすぎる傾向も指摘しています。作曲家・校訂者としても90曲以上(大半がピアノ曲)を残し、ショパンやリストなどの校訂も手がけました。

 

· Isoldes Liebestod [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、33-36小節)

「イゾルデの愛の死」左手独奏編曲の譜例(33〜36小節)

邦題:イゾルデの愛の死 左手独奏版

 

編曲年:不明
原曲:Wagner, Richard(リスト編曲による演奏会用パラフレーズを経由)
編曲者:資料により表記が分かれる(下記参照)
演奏時間:約10分30秒
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)

 

編曲者をめぐる問題

本作は、ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」の終曲をリストが編曲した演奏会用パラフレーズをさらに左手独奏用に編んだものですが、この左手版の編曲者については、参照する資料によって記載が一致しません。

初出版譜であるUniversal Edition(パウル・ヴィトゲンシュタイン編《School for the Left Hand》所収)には、左手版の編曲者名は印刷されておらず、「WAGNER–LISZT」とのみ表記されています。ヴィトゲンシュタインはこの曲集全体の「編者(Editor)」として名を連ねているに過ぎず、個々の収録作品の編曲者が誰であるかは、原典からは判別できません。

この空白を埋める形で、IMSLPでは本作の編曲者としてイグナツ・フリードマンの名が登録されています。一方、ドナルド・L・パターソン編「One Handed」や、2021年刊行のルビー・モーガン編「An Anthology of Piano Music for the Left Hand Alone」では、ヴィトゲンシュタイン自身による編曲として紹介されており、両説が併存する状況です。いずれの資料も、その帰属の根拠となる一次資料までは示していません。

現時点では、フリードマン説・ヴィトゲンシュタイン説のどちらかを確定させる決め手は見当たらず、「資料によって編曲者の見解が分かれている作品」として扱うのが最も慎重な立場と言えます。

 

さらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くイグナツ・フリードマン:名ピアニストと帰属の定まらない左手編曲

 

‣ Fumagalli, Adolfo(1828-1856) フマガッリ

· Notturno-Studio Op.2 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、Andante部分より)

フマガッリ ノットゥルノ=スタジオ Op.2 Andante部分からの楽譜。

邦題:ノットゥルノ=スタジオ Op.2

 

作曲年:不明
演奏時間:約8分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:オリジナル作品(独奏)

 

学生時代に書かれた習作とみられる作品です。リコルディから出版されていますが、詳細な資料が少ない作品となっています。

 

フマガッリをさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」

 

· Studio da Concerto: nell’opera Lucia di Lammermoor Op.18 No.1 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

フマガッリ スタジオ・ダ・コンチェルト(ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》より)Op.18 No.1 冒頭1〜4小節の楽譜。

邦題:スタジオ・ダ・コンチェルト(ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》より) Op.18 No.1

 

編曲年:不明
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)

 

ドニゼッティのオペラ《ルチア》の終幕、テノールが歌うアリアを題材にしています。金管楽器の導入部を忠実に受け継ぎつつ、主旋律のあいだに2つのカデンツァを織り込んだ構成です。旋律そのものの美しさが作品を支えていますが、アルペジオの扱いがやや単調になる場面も見受けられます。

 

フマガッリをさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」

 

· Studio da Concerto: coro nell’opera I Lombardi di Verdi “o Signore! del tetto natio” Op.18 No.2 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

フマガッリ スタジオ・ダ・コンチェルト(ヴェルディ《十字軍のロンバルディア人》より「おお、故郷の屋根よ」)Op.18 No.2 冒頭1〜4小節の楽譜。

邦題:スタジオ・ダ・コンチェルト(ヴェルディ《十字軍のロンバルディア人》より「おお、故郷の屋根よ」) Op.18 No.2

 

編曲年:不明
演奏時間:約5分
難易度:ツェルニー40番中盤程度
分類:編曲作品(独奏)

 

ヴェルディのオペラから合唱曲を素材にとっています。終盤にオクターブのグリッサンドが現れる点が特徴的です。また、トリルと和音を左手だけで同時にこなす書法も含まれており、片手演奏の可能性を引き出そうとする工夫が随所に見られます。音楽的な魅力という点ではやや控えめな作品と言えるでしょう。

 

フマガッリをさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」

 

· “Casta diva che inargenti” nell’opera Norma di Bellini Op.61 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-5小節)

フマガッリ 「清らかな女神(カスタ・ディーヴァ)」(ベッリーニ《ノルマ》より)Op.61 冒頭1〜5小節の楽譜。

邦題:「清らかな女神(カスタ・ディーヴァ)」(ベッリーニ《ノルマ》より) Op.61

 

編曲年:不明(1851年出版)
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品(独奏)

 

トマジーニ夫人に献呈。フマガッリの左手作品のなかで最も広く知られる一曲で、演奏会用トランスクリプションとして時折耳にします。

オクターブを多用した重厚な書法、随所に挿入されるカデンツァ、幅広い音域を縦横に駆け巡るアルペジオが、豊かな音響を生み出します。

ただし、抒情的な箇所の伴奏処理では原曲の管弦楽パターンをほぼそのまま踏襲しており、左手に適した音型へ置き換える創意に欠けるという批評もあります。その結果、第1セクションだけで16か所もの大きな跳躍が生じており、これは練習で解決できる種類の問題ではありません。不滅の旋律が作品を成立させているとはいえ、こうした構造上の課題も無視できないでしょう。

 

フマガッリをさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」

 

· Andante nel Mosé (Mi manca la voce) Op.102 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-4小節)

フマガッリ アンダンテ「声がない(Mi manca la voce)」(ロッシーニ《モーゼ》より)Op.102 冒頭1〜4小節の楽譜。

邦題:アンダンテ「声がない(Mi manca la voce)」(ロッシーニ《モーゼ》より) Op.102(遺作)

 

編曲年:不明
演奏時間:約4分
難易度:ツェルニー40番修了程度
分類:編曲作品(独奏)

 

ロッシーニのオペラ《モーゼ》のアリアに基づく作品で、全曲にわたって3段譜が用いられています。左手作品において3段譜が通篇に使われることは非常に珍しく、フマガッリの表現に対する意欲がうかがえます。音響的には充実していますが、原曲の管弦楽伴奏に必要以上に縛られているために極端な跳躍が頻出し、音楽の流れにぎこちなさが生じています。

なお、「One Handed」(ドナルド・L・パターソン 編)では “Op.100 No.19” と記載されていますが、実際の楽譜で Op.102(遺作)と確認されているため、パターソンの記載は誤りと考えられます。

 

フマガッリをさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」

 

· Grande Fantaisie sur Robert le Diable de Meyerbeer Op.106 [LH]

 

譜例(PD楽曲、浄書ソフトで作成、1-8小節)

フマガッリ 《ロベール・ル・ディアーブル》による大幻想曲(マイアベーア)Op.106 冒頭1〜8小節の楽譜。

邦題:《ロベール・ル・ディアーブル》による大幻想曲(マイアベーア) Op.106

 

編曲年:不明
演奏時間:約15分
難易度:ツェルニー50番入門以降程度
分類:編曲作品(独奏)

 

6曲のなかで規模・難度ともに最大の作品で、リストへの献呈という選択が、フマガッリ自身のこの曲への自信を物語っています。

鍵盤全体を席巻する高速のオクターブ、和音、跳躍が連続し、終盤にはオクターブのグリッサンドも登場します。随所に力強い書き方が光る一方、各セクションをつなぐ転換部は唐突で工夫に乏しく、形式的な仕上がりとしては物足りないという評価も残されてきました。

左手一本の限界に挑んだ記念碑的な作品と言えますが、音楽的な完成度という観点では評価が割れるところです。

 

フマガッリをさらに詳しく知る

【ピアノ】左手作品から読み解くフマガッリ:28歳で逝った「ピアノのパガニーニ」

 

► 終わりに

 

作品を探す際は、以下のアルファベット別ページもご利用ください。

左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別

 

併読推奨記事

本Webメディアの全記事への入り口となる総合ガイドです。入門・基礎知識、作品ライブラリー、楽曲別ガイド、技術・知識、作曲家シリーズ、参考文献・資料・レビューまで、目的別に記事をまとめています。

左手ピアノ総合ガイド:すべての記事への入り口

 


 

► 関連コンテンツ

YouTubeチャンネル
・Piano Poetry
チャンネルはこちら

SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら

 

タイトルとURLをコピーしました