- 【ピアノ】片手のためのブルース作品ガイド:年代順にたどる
- ► はじめに
- ► 演奏形態について
- ► 年代順にたどる作品紹介
- ‣ ヴァンドール「Left’s Turn Only(左手のための)」(1981年出版)[LH]
- ‣ イェーガー「A Bit of Bop」(1989年出版)[LH]
- ‣ ゴールドストン「Blue Mood(右手または左手のための)」(1999年出版)[LH/RH]
- ‣ マッツ「Midnight Blues(左手のための)」(2003年出版)[LH]
- ‣ ボバー「Grand One-Hand Solos for Piano Book3 より Blues Beat」(2012年出版)[LH]
- ‣ ボバー「Grand One-Hand Solos for Piano Book4 より Boogie Blues Riff」(2012年出版)[LH]
- ► 作品一覧表
- ► どの作品に取り組むか
- ► 終わりに
【ピアノ】片手のためのブルース作品ガイド:年代順にたどる
► はじめに
ブルース(Blues)は、19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカ南部で生まれた音楽ジャンルで、憂いを帯びた旋律とブルーノートの響きを特徴とします。片手のためのピアノ作品にも、こうしたブルース的な要素を取り入れた作品がいくつか作られてきました。
本記事では、ブルースの要素を感じさせる片手作品を、成立年の古い順に紹介します。選曲や、作品の歴史をたどる際の手がかりとしてお役立てください。
なお、記事内で示す成立年は、原則として作品の作曲年を記載し、それが確認できない場合や編曲作品については、出版年など確認できる年代を示しています。なお、本記事で扱う作品はいずれも作曲年が確認できないため、出版年を示しています。
► 演奏形態について
本ガイドでは、作品名の末尾に以下の記号を付しています:
[LH]:左手のみで演奏
[RH]:右手のみで演奏
[LH/RH]:左手または右手で演奏
[LH][RH]:左手作品と右手作品が両方入っている項目など
作品を実際にどちらの手で演奏できるかではなく、作曲者・編曲者が指定した演奏形態を基準として、[LH][RH][LH/RH]を付しています。
► 年代順にたどる作品紹介
‣ ヴァンドール「Left’s Turn Only(左手のための)」(1981年出版)[LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
ロバート・D・ヴァンドール(1944-2017)は、ボールドウィン=ウォーレス大学で音楽を学び、ピアノ指導者として活動する一方、数多くの教育用ピアノ作品を残したアメリカの作曲家です。
ブルーノートを用いた響きが随所に効いており、ブルースらしさがしっかりと伝わる一曲です。アクセントやスタッカートの指示も比較的細かく書き込まれており、その一つひとつのニュアンスを意識して弾くことで、よりブルースらしい雰囲気に近づけることができるでしょう。
演奏時間は約1分30秒、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度。
楽譜:Left’s Turn Only(for left hand alone)- Piano Solo(alfred.com)
‣ イェーガー「A Bit of Bop」(1989年出版)[LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
ジャニーン・イェーガー(1938-)は、1本指や親指のみ、ナックルなど、通常とは異なる奏法を用いた片手作品を数多く残しているアメリカの作曲家です。
楽譜上に片手演奏の指定はありませんが、左手だけでも弾き切れる構成になっており、ドナルド・L・パターソンによる片手ピアノ作品の文献目録「One-Handed: A Guide to Piano Music for One Hand」(1999年)でも左手独奏の一曲として分類されているため、本記事では便宜的に[LH]と記載しました。
曲集「Just for Fun」に収録されています。曲名は「Bop」となっていますが、ブルーノートを効果的に使った響きがブルースの空気を強く感じさせるため、本記事でもあわせて取り上げました。下段に上段より高い音域の音を置く箇所が多く、譜読みの面白さも魅力の一つと言えるでしょう。
演奏時間は約1分、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度。
楽譜:ちょっとしたバップ ~「ジャスト・フォー・ファン」より(Musse.jp)
‣ ゴールドストン「Blue Mood(右手または左手のための)」(1999年出版)[LH/RH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
マーガレット・ゴールドストン(1932-2003)は、キューバ・ハバナに生まれ、7歳でニューオーリンズに移り住んだアメリカの作曲家・ピアノ教育者です。
4分音符を中心に、物思いに沈むような歩みで進むメランコリックでブルース風な一曲。右手用・左手用それぞれの運指が併記されており、どちらの手だけでも演奏が成立するよう作られています。アーティキュレーションやペダリングの指示が細やかで、片手だけでも豊かな表情を描き出せるよう工夫されています。
演奏時間は約2分、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度。
楽譜:Blue Mood (for right hand or left hand alone)(Amazon.co.jp)
‣ マッツ「Midnight Blues(左手のための)」(2003年出版)[LH]
※作曲者の生没年が不詳であり、著作権保護期間の確定が困難なため、譜例の掲載は控えております。
キャロル・マッツはアメリカ・フロリダ州を拠点とする作曲家・編曲家・ピアノ教育者です。
4小節ほどの序奏から始まる、けだるさを帯びたブルース風の小品です。強弱の指示が細部まで書き込まれ、単純な伴奏形の繰り返しに終わらず、ときに多声的な書法も交えた工夫が感じられます。
演奏時間は約1分10秒、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度。
楽譜:Midnight Blues (for left hand alone)(alfred.com)
‣ ボバー「Grand One-Hand Solos for Piano Book3 より Blues Beat」(2012年出版)[LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
メロディ・ボバー(1955-)は、ジャズを学んだ経験を持つアメリカの作曲家・ピアノ教育者で、初級から中級向けの教育用作品を数百曲にわたり発表しています。全6巻からなる片手のための教材シリーズ「Grand One-Hand Solos for Piano」には、ラグタイムやタンゴなど多彩なジャンルとともに、ブルースの要素を持つ作品も収められています。
同シリーズ第3巻に置かれた一曲で、終始パワーコードで奏される骨太な響きが特徴と言えるでしょう。ダイナミクスの対比が明確に設計されており、装飾音を伴ったドローン的な音型の反復も印象的です。曲の最後にはグリッサンドが置かれ、運指まで細かく指示されています。
演奏時間は約1分30秒、難易度はバイエル後半程度。
楽譜:【ピアノ】Melody Bober「Grand One-Hand Solos for Piano」シリーズ 完全ガイド
‣ ボバー「Grand One-Hand Solos for Piano Book4 より Boogie Blues Riff」(2012年出版)[LH]
※著作権保護期間中につき、譜例は掲載不可
同シリーズ第4巻に収められた一曲で、3連符の小節と4分音符の小節が交替する構成が特徴です。19-20小節にかけての半音階によるつなぎが印象的な効果を生み、21小節目からの再現部へとつながります。前曲と同様、曲の終わりにグリッサンドが置かれ、運指まで示されています。
演奏時間は約1分20秒、難易度はブルグミュラー25の練習曲中盤程度。
楽譜:【ピアノ】Melody Bober「Grand One-Hand Solos for Piano」シリーズ 完全ガイド
► 作品一覧表
| 作曲家 | 作品 | 演奏形態 | 成立年 | 演奏時間 | 難易度目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| ヴァンドール | Left’s Turn Only | LH | 1981年出版 | 約1分30秒 | ブルグミュラー25の練習曲中盤 |
| イェーガー | A Bit of Bop | LH | 1989年出版 | 約1分 | ブルグミュラー25の練習曲中盤 |
| ゴールドストン | Blue Mood | LH/RH | 1999年出版 | 約2分 | ブルグミュラー25の練習曲中盤 |
| マッツ | Midnight Blues | LH | 2003年出版 | 約1分10秒 | ブルグミュラー25の練習曲中盤 |
| ボバー | Grand One-Hand Solos より Blues Beat | LH | 2012年出版 | 約1分30秒 | バイエル後半 |
| ボバー | Grand One-Hand Solos より Boogie Blues Riff | LH | 2012年出版 | 約1分20秒 | ブルグミュラー25の練習曲中盤 |
※難易度表記はあくまで目安です。片手演奏への慣れや手の大きさなどによって実際の難しさは変わります。
► どの作品に取り組むか
これから片手のブルース作品に触れてみたい方には、ボバーの「Blues Beat」が候補の一つです。バイエル後半程度の難易度で、パワーコードを中心とした明快な書法のため、ブルースらしい響きを比較的シンプルな形で体験できます。
それ以外の作品に関しては難易度に大きな差はないため、興味を持った作品から取り組んでみるのもいいでしょう。ヴァンドール、イェーガー、ゴールドストン、マッツの各作品や、ボバーの「Boogie Blues Riff」を弾き比べながら、それぞれの作品に込められた工夫を味わってみてください。
► 終わりに
片手のためのピアノ作品というと、クラシックの小品を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし実際には、ブルースなどの音楽語法を取り入れた作品も残されています。本記事で紹介した作品を聴き比べると、ブルーノートや特徴的なリズムが、片手という限られた演奏形態の中でどのように活かされているかも見えてきます。
当サイトでは、作曲家・作品ごとに片手作品を整理した「左手ピアノ作品ライブラリー:作曲家別」を公開しています。ブルース以外の作品についても知りたい場合は、あわせてご覧いただければと思います。
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